1. 診断が難しい慢性自己免疫疾患「ループス」とは

海外医療トピックス

2016.02.09

診断が難しい
慢性自己免疫疾患「ループス」とは

難病や珍しい病気は、有名人がかかったというニュースが流れると、しばしば知名度が急上昇します。それらを診断しなくてはならない医師にとっても、その病名を初めて知った一般の方にとっても、このような報道は、病に対する理解を深めるよい機会であると言えるかもしれません。

2015年の秋には、アメリカの若い人気女優が「ループス」で闘病中であることを明かし、話題となりました。今回は、イギリスの医療系情報サイト「メディカル・ニュース・トゥデイ」より、慢性自己免疫疾患「ループス」についてご紹介します。

女優セレーナ・ゴメスさんが闘病中として話題に

一般には、「ループス」という言葉を聞いて、それがどのような病気か説明できる人は少ないことでしょう。しかし、2015年10月のビルボード誌で発表されたとおり、女優のセレーナ・ゴメスさん(23)が難病で化学療法を受けていた話なら、耳にしたことのある人は多いかもしれません。

ループスにはたくさんの種類があり、ゴメスさんが治療を受けている「全身性エリテマトーデス(SLE)」もそのひとつです。ループスの症例のうち約70%がこのSLEで、代表的な症状としては皮膚に現れる紅斑(特に鼻梁と両頬にかけて広がる蝶型のものがよく見られる)があげられます。

何らかのループスにかかっている患者さんの数は、アメリカ国内で推定150万人。毎年16,000人の患者さんが新たにループスと診断されているそうです。また、患者さんの約90%は女性で(特に出産可能な年代の女性に多い)、黒人女性の罹患率は白人女性の3倍となっています。

ループスの診断「66%の患者さんが誤診された経験あり」

ループスは、いわゆる慢性自己免疫疾患と呼ばれるもので、免疫システムが健康な細胞や組織を攻撃する「自己抗体」を作ってしまう病気です。したがって、ループスの症状は多岐に渡り、さまざまな合併症も引き起こされます。皮膚に関連する症状を含むケースが最も多く約80%を占めるものの、関節や心臓、肺、腎臓、脳などに何らかの症状が出る可能性もあります。

SLEだけを例にとってみても、紅斑以外に、胸の痛みや息切れ、筋肉痛、疲労、脱毛、口内炎、日光過敏など、症状をあげだしたらきりがありません。このため、ループスは似通った症状が出るほかの疾病と間違われやすい病気としても知られています。2014年に米ループス財団と製薬会社が行った調査によると、66%もの患者さんが実際に誤診を受けた経験があるとのことです。

ループスを見分けるためには血液検査、尿検査、身体検査、そして生体組織検査等を組み合わせて行う必要があり、診断は容易ではありません。

ループスの治療「症状の緩和と合併症の軽減が目的」

残念ながら、ループスを根本的に治すことができる治療法は、現在のところ発見されていません。このため、治療は、患者ごとに異なる症状を見極めたうえで行われます。根本的な解決にならずとも、患者さんの命を脅かす臓器障害やその他の合併症を防いだり、症状の悪化を防いだりするために治療は重要です。

さらに、治療を続けるうえでは患者さんの心のケアも大切です。アンケート調査によると、ループス患者の約90%が不安を感じていると答えています。また、約85%は病気のせいで気分が落ち込んでいると答えているそうです。頭痛や貧血に悩まされる若い女性が、顔に現れた紅斑を鏡で見ては溜息をつく姿が想像されます。

セレーナ・ゴメスさんに関する報道でループス(全身性エリテマトーデスを含む)の知名度が上がったことにより、今後、正しく診断される患者さんは果たして増えるのでしょうか?
1人でも多くの患者さんが適切な治療を受けられるよう祈るばかりです。

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