1. Apple社の最新技術「リサーチキット」が医療リサーチを変える!

海外医療トピックス

2016.01.26

Apple社の最新技術「リサーチキット」が医療リサーチを変える!

スマートフォンやモバイル端末が普及した今、患者さんにアプリを通じて参加してもらう形式の医療リサーチが行われるようになりました。アプリを活用したリサーチでは、患者さんに通院してもらうことも、医療スタッフに大きな負担をかけることもなくデータを回収できます。これは、参加者にとっても医療機関にとっても大きなメリットです。
すでに海外では、アプリを活用したさまざまなリサーチが行われていますが、今回は、喘息患者を対象にApple社のリサーチキットを用いて行われた、アメリカでの調査についてご紹介します。

Apple社のリサーチキットとは?

2015年3月に行われたApple社のイベントで発表された「リサーチキット」は医療研究用のオープンソースのソフトウエアフレームワークで、医療に大きなメリットをあたえてくれると、関係者の間で注目されています。このキットは研究内容に沿ったアプリの制作を容易にしました。制作されたアプリではiPhoneに搭載されている機能を活用して正確なデータを収集できるのです。このアプリを利用してリサーチを行うと、次のようなメリットが得られます。

アプリのメリット
アプリの指示に従って情報を入力するだけで、リサーチに必要となる正確なデータが採取できるので、参加者の負担が少ない
多くのデータをより頻繁に採取できるので、これまで医療関係者の悩みだった「データ不足」を解消できる
リアルタイムでデータの解析が行えるようになる
住んでいる場所にとらわれず、さまざまなエリアからリサーチに参加してもらえる
データの郵送料や入力費用といったコストを削減できる
「参加者はデータを送ったら終わり」という一方通行ではなく、データをもとにアドバイスをもらえたり、自分の症状をより深く知ることができたりする

キットの発表の時点でサンプルプロジェクトとして始動していたリサーチは、「乳がん」「パーキンソン病」「糖尿病」「喘息」「心臓病」の5つでしたが、2015年11月現在でのリサーチ数は、「自閉症」「C型肝炎」などを含む13種類まで増えています。

アプリ紹介とリサーチ内容紹介

ではここでそんなアプリのひとつ、喘息患者を対象としたリサーチアプリの「Asthma Health」の詳細をみてみましょう。
このアプリを使ってリサーチを行っているのは、ニューヨーク州の「Icahn School of Medicine at Mount Sinai」。
リサーチに参加している患者は自分自身の喘息の症状を記録することで発作の傾向を理解し、治療の効果を確認できます。また、処方された薬を適切に使用できるようにサポートするとともに、アプリ上に収集したデータをかかりつけの医師とのシェアすることも可能です。

アプリが発表されてから6か月後の時点で、リサーチに参加している人数は8,600人以上。
吸入器の使用回数のほか、発作のトリガーや、その日の空気の質(PM2.5やPM10の濃度など)といった情報の収集が行われています。また、GPSセンサーでロケーションに関するデータも得られます。

患者さんの反応は?

アプリを介して実際にリサーチに参加している人々は、どのような感想を持っているのでしょうか。
Icahn School of Medicine at Mount Sinaiのサイトによると、参加者はアプリを使用することで、自分の症状をより理解できるようになったと感じているようです。「自分が訪れている場所の空気の状態と喘息の症状との相関関係を知ることで、空気環境が自分にどんな影響を与えるのかの把握ができる。」「過去6か月のデータをまとめてみることで、自分の症状が落ち着き、過去30日においては改善されていることが一目でわかる。」といった感想が出ています。

また患者さんが、自分のデータを医師と共有するための「Doctor Dashboard」と呼ばれる機能も追加されました。Dashboard上には、患者さんの最近のコンディションを一目で把握できるように、集められた個人データがグラフにまとめられており、医師に自分の症状を伝える際に、データで裏付けができる点も評価されています。医師は、このデータをもとに患者さんの発作の傾向を確認し、処方する薬の効き目をチェックできるため、より正確な治療を行えるようになっています。

医療業界に新たな可能性が広がる

病気の原因究明や治療法の開発には、患者さんが参加したリサーチによる情報収集が欠かせません。アプリを利用した研究は、患者さんや医療スタッフにかかる負担軽減につながるとともに、リサーチデータを参加者である患者さんの治療に即時生かせるというメリットも併せ持っています。このような形のリサーチは、医療業界に新たな可能性を広げてくれそうですね。

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