1. 食物アレルギーへの挑戦!腸内菌を変えるプロバイオティクス

海外医療トピックス

2016.01.19

食物アレルギーへの挑戦!腸内菌を変えるプロバイオティクス

最近では決して珍しくない、さまざまな食物アレルギーを持つ子どもたち。そんな子どもたちを持つご両親や、彼らを指導する医師たちにとって、食物アレルギーの克服は大きな課題です。そこで今回は、シカゴ大学が運営する科学系情報サイト「サイエンス・ライフ」より、食物アレルギーの治療法の研究に関するニュースをご紹介します。

食物アレルギーを持つ子どもたちが増えている現状

小さな患者さんが救急外来にやってきた原因は、祖母が与えたアイスクリーム。今日では、そのようなケースに携わったことがある小児科医も珍しくないのではないでしょうか?
食物アレルギーを持つ人の数は、先進国において過去10年で約20%も増加しているとのことです。アレルギーが増加している原因は断定できていませんが、抗生物質の多用や高脂肪かつ低繊維の食生活、清潔すぎる生活環境、帝王切開による出産、粉ミルクでの育児など、さまざまな要因があると考えられています。それらが原因となり腸内菌の共生バランスが失調することによって、もともと遺伝的にアレルギーを起こしやすい体質である人がアレルギー反応を起こしている可能性があるようです。

日本でも、菓子袋の裏の細かなアレルギー表示にお気付きの方も多いことでしょう。「アレルギーなんて昔はソバやカニくらいしかなかった」「ただの好き嫌いだ」などと言われがちであった食物アレルギーですが、徐々に理解が深まってきているようです。アレルギー表示のような国の対策を目にする機会が増えただけでなく、食物アレルギーを持つ人が増えたことによってその存在が身近になっていることも、認知度が高まっている理由のひとつかもしれません。 

LGG菌人工乳で牛乳に対する耐性を強化

食物アレルギーの原因が研究される一方で、体質改善に関する研究も進められています。今回ご紹介するのは、そのなかのひとつである、特定の食品に対する耐性と腸内菌の関係に着目した、プロバイオティクス(善玉菌)を用いた研究です。

■2012年のナポリ大学による研究
2012年、イタリアのナポリ大学が、牛乳アレルギーを持つ乳幼児にプロバイオティクスの人工乳を与えるという研究を行いました。プロバイオティクスとしてLGG乳酸菌(ラクトバチルス・ラムノーサス・GG株)を補った、カゼイン(牛乳に含まれるたんぱく質のひとつ)を含む人工乳を与えた結果、乳幼児の牛乳に対する耐性が高まったと発表しています。

■2015年のシカゴ大学とナポリ大学による研究
シカゴ大学が管理運営しているアルゴンヌ国立研究所とナポリ大学による共同研究チームは、プロバイオティクスの人工乳を与えたことで牛乳への耐性が高まった幼児の腸内菌が、牛乳アレルギーを持つほかの乳幼児のものとは大きく異なっていることを発表しました。牛乳への耐性が高まった幼児の腸内では、恒常性を維持する働きがあるとされている短鎖脂肪酸(酢酸塩など)を生成するいくつかの菌株が増加していたとのことです。

プロバイオティクスは、食物アレルギー治療に改革をもたらす?

果たして、すべての食物アレルギーをプロバイオティクスによって治療できる日はくるのでしょうか?
2015年の一連の実験で用いられたマウスの腸内では、血中へ流出する食餌性アレルゲンの量を調整するのに重要な役割を果たす腸内菌が確認されたといいます。マウスの腸内にいた共生細菌が、食品に対するアレルギー反応を抑えたというのです。研究者の1人であるシカゴ大学のナグラー教授は、これは食物アレルギーに関する新たなメカニズムを示唆しているのではないかと話しています。

仮に、さまざまな食品それぞれに対するアレルギー反応を抑える特定の微生物が存在するとすれば、それらを探し当てることはとても有益に違いありません。特定の食品に対する耐性を高める微生物を患者さんの腸内で働かせることで、食物アレルギーを改善できる可能性があるからです。
食物アレルギーを持つ子どもたちにとって救世主となりうるこの研究の今後に、期待が高まります。

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