1. 自閉症とバイリンガル:言語の切り替えが子供に与える影響とは?

海外医療トピックス

2018.04.27

自閉症とバイリンガル:
言語の切り替えが子供に与える影響とは?

発症原因や症状のコントロール方法など、まだ謎に包まれた部分の多い「自閉症」。WHO(世界保健機関)のWEBサイトに掲載されたデータ(2017年4月に更新)によると、160人に1人の子供がAutism Spectrum Disorder (ASD=自閉症スペクトラム障害)であるそうです。自閉症に関してはさまざまな視野による研究が進められていますが、今回は「バイリンガル」であることが自閉症児に与える影響についての研究結果をご紹介します。

バイリンガルであることはアドバンテージなのか?

バイリンガルであることは自閉症の子供たちにとって、アドバンテージになるのか……過去15年にわたり人々はこのテーマについて論争を重ねてきました。これまでさまざまな研究が行われてきたにもかかわらずその結果はまちまちで、全ての研究で「バイリンガルは実行機能を高める」という結果が出たわけではありません。

今回カナダのマギル大学准教授であるAparna Nadig氏らが行った研究は、バイリンガルであることは自閉症の子供たちにとってアドバンテージになるのかということに焦点を当てたものでした。バイリンガルであることが 認識能力の向上につながると考えられている理由は、2つの言語を使用するには思考モードの切り替えを速やか且つスムーズに行う必要があるからです。長期間にわたり言語の切り替えを積み重ねて行っていくことで、認識能力の柔軟性が高まるのではないかと考えられているのです。

自閉症の子供たちは認識の柔軟性に欠けるため、1つの課題に取り組んでいる最中に別の課題を出されると、「スイッチの切り替え」をスムーズに行うことがなかなかできません。今回の研究は、この「スイッチの切り替え」に慣れているバイリンガルの子供たちは、バイリンガルでない子供と比較してどのような違いがあるのかという観点で実施されました。

シンプルな研究内容から得られた興味深い結果

研究の対象になったのは6歳から9歳の子供たち。自閉症児20人と非自閉症児20人です。どちらのグループも、10人がバイリンガル、残りの10人はモノリンガルでした。子供たちは、コンピューターで作成されたテスト(DCCS:Dimensional Change Card Sort)を受けました。

このテストでは、色のついた複数の形がモニターに表示され、それらをまず色ごと(例:青か赤か)に分類するように指示されます。色ごとの分類がある程度進んだところで、子供たちにはタスクの変更が伝えられ、次は色ごとではなく形ごと(例:ウサギかボートか)に分類を行うように指示が出されました。その結果、バイリンガルの子供のほうが作業の切り替えをうまく行うことができたのです。

バイリンガル環境で生まれた着眼点

過去には、自閉症の子供を2か国語以上に触れさせるのは、その子供たちの言語障害を悪化させる結果になるだけだという説もありました。今回の研究が行われたモントリオールは、英語とフランス語の2か国語を話すバイリンガルが多く住んでいる都市です。こういった特別な環境だからこそ、「バイリンガルであることは自閉症の子供に影響を及ぼすのか?」という着眼点を持つことができたのかもしれません。研究者たちは、今回のテストを受けた対象者たちの発達について、3年から5年にわたって調査していく予定です。

まとめ

自閉症のように、その仕組みがはっきりとは解明されておらず、治療法が確立していない病気は、まだたくさんあります。世界ではどのような着眼点において、どういった調査が行われているのかといった最新情報をキャッチし、今後の研究や治療への手がかりとしていきましょう。

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