1. 患者さんが飲むと自動的に連絡が入るデジタル薬!センサー入り投薬追跡薬をFDAが初めて承認

海外医療トピックス

2018.02.27

患者さんが飲むと自動的に連絡が入るデジタル薬!
センサー入り投薬追跡薬をFDAが初めて承認

患者さんが、指示通りに薬を飲んでくれない。しばしば医師が直面するその問題は、治療が上手くいかない原因のひとつであり、医療費の無駄遣いにも繋がっています。そんななか、患者さんが服用するとセンサーでその情報が記録されるデジタル薬が、米国で初めて承認されました。

FDAが初めて承認した投薬追跡薬とそのメカニズム

今回話題となっている大塚製薬のデジタル薬(エビリファイ・マイサイト)は、プロテウスデジタルヘルス社(Proteus Digital Health)の開発したセンサーが錠剤に埋め込まれたものです。しかし、もちろん追跡薬が患者さんの体内から遠隔地で受信できるほど強力な電波を発信するわけではありません。

薬に組み込まれた小さな摂取可能なセンサーは、患者さんが服用すると胃液に反応して信号を発します。その信号を受信するのは、患者さんが胴に着けるパッチの役目です。そして、今度はパッチがその情報をモバイルアプリに送信します。さらに、クラウドに送信されるデータについては、ポータルサイトを介して介護者や医師と共有することが可能です。

デジタル薬は、長期に渡って薬を飲み続けなくてはいけない患者さんの服薬アドヒアランスに影響を及ぼす可能性があるだけでなく、薬剤投与による容体の変化を記録分析するのに役立つと期待されています。今回のニュースを報じた海外のウェブメディア「ビジネスインサイダー」は、このFDA承認が皮切りとなり、デジタル薬の技術が発展し類似製品が今後さらに登場する可能性もあると報じました。

デジタル薬が直面するであろう壁とは?

プロテウスデジタルヘルス社のセンサーは、まず偽薬への利用が2012年に承認されており、5年の歳月を経てついに今回の薬剤承認にこぎつけました。それでも障壁がすべて無くなったというわけではなく、プライバシー的な観点による情報操作の権限やセンサーの精度など、承認後もデジタル薬の抱える問題が指摘されています。

なによりもまず、センサーによる薬の追跡が患者さんの服薬アドヒアランスの向上に繋がるかどうかは、まだ証明されていません。データ送受信の精度についても、薬剤のラベルに「リアルタイム受信の遅れや不備が生じる可能性があるため緊急時には使用しないこと」という注意書きがあります。

また、デジタル薬から得られるデータは有用ではありますが、患者さんはいつでもデータの開示を拒否することができます。その一方で、米国では強制的に追跡薬の投与を求める医療保険会社が出てきた場合、それがプライバシーの問題となることが予想されています。

米国では今後、医療の合理化が進むのか?

今回承認されたデジタル薬は、抗精神病薬です。しかし、こうして「前例」ができたことで、ジェネリックの降圧剤や糖尿病治療薬など他の薬剤でも追跡薬の需要が高まり、今後さらなる技術発展を遂げるかもしれません。最終的には、術後の患者さんがオピオイドを適性量服用しているか追跡したり、臨床試験中の患者さんが試験薬を正しく服用したことを確認したりできるほど信頼性の高い有用な技術に進化を遂げる可能性もあると考えられています。

日本の医師がしばしば実感しているように、米国でも患者さんが薬の用法用量をきちんと守らないことが問題となっています。それによって患者さんの容体が悪化すれば、治療が長引いたり余分な処置が必要となったりします。その結果、毎年米国では推定1,000億から3,000億ドル(11兆から33兆円)もの莫大な医療費がかかるとのことです。

入院中を例外として、投薬はあくまで患者さんの治療意欲や管理能力に任せるのがこれまでの常識でした。しかし、治療の確実性を高めるのに役立つデータを得られる追跡薬が、米国に歓迎される可能性は大いにあります。

今回、FDAが追跡薬の第一号を承認したことで、デジタル薬の新時代の幕開けにつながる可能性が出てきました。少なくとも、患者さん自身が飲み忘れや重複を防ぐためにトラッキングしたいというケースについては、今後の精度改善次第ですぐに需要がありそうです。

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