1. 「第16回世界肺がん学会議」 英医師、生検にかわる血液検査についての研究を発表

海外医療トピックス

2015.12.22

「第16回世界肺がん学会議」
英医師、生検にかわる血液検査についての研究を発表

2015年9月、アメリカのコロラド州で第16回世界肺がん学会議が開かれました。そこで注目された、イギリス、ロイヤルブロンプトン病院の研究をご紹介します。同病院のエリック・リム医師が中心になって進めている、生検に代わる血液検査についての研究です。今回は、その経緯をNHS(英国国民保健サービス)のプレスリリースからお伝えします。

生体組織検査の現状と問題点

生体組織検査は、現在のところ、がん細胞の存在を確かめる最も信頼できる方法と考えられています。スクリーニングでがんの疑いが出たり、なんらかの症状が出ていたりしても、最終的な診断にこぎつけるためには必ず生検を行うという医師がほとんどではないでしょうか?
しかしながら、生検には3つの問題点があります。1つめは、患者さんに高額な医療費を負担してもらう必要がある(同時に国の財政も圧迫する)こと。2つめは、組織サンプルを採取する際に、しばしば危険を伴うこと。そして、3つめは、結果が出るまでに時間がかかることです。

より安価で、安全で、なおかつ、すぐに結果が出るがん検査があれば、医師や患者さんにとっても国にとっても有益に違いありません。そんななか、がんの診断に用いようと研究されているのが、血液検査です。

血液検査により、70%の肺がん患者を検出

ロイヤルブロンプトン病院と、インペリアルカレッジロンドンのNHLI(National Heart and Lung Institute)で行われた研究において、研究者は、まず223名の患者さんの血液を調べました。ここで研究対象となったそれらの被験者は、いずれも「既に肺がんと診断されている」または「肺がんの疑いがある」患者さんです。ただし、これらの患者さんの診断が確定しているかどうかは、研究者には知らされていませんでした。
その結果、研究者は独自の新しい血液検査方法により、被験者7名のDNAの中に「がん特有の遺伝子変異」を確認。実際には、従来の検査方法でがんが確認された被験者は、10名(上記の7名を含む)いたそうです。つまり、このときは70%のがん患者を見つけられた計算になります。

なお、がんであるかどうかを調べられるこの血液検査の要は、DNAの分析です。がん細胞を含め、いかなる細胞も、死亡したときに必ずそのDNAが血流中に放出されるという原理を利用します。血漿からDNAを抽出して調べると、がん細胞を持っている患者さんのサンプルにのみ、がん特有の遺伝子変異が見られるのです。研究者は、この血液検査技術によって肺がん以外のがんも検出できる可能性があるといいます。

生検にかわる血液検査の可能性

残念ながら、血液検査は今のところまだ万能ではありません。特に、陰性が出た場合には、生検をはじめとした従来の検査方法の結果が重要になってきます。そんな現状をふまえつつ、リム医師は世界肺がん学会議において、将来的には血液検査であらゆるがんを検出できるようにしたいという希望を語りました。

CTスキャンを行いながら気管支鏡で確認し針でサンプルを採取したり、外科手術中に組織を取ったりしなくてはいけなかった検査が、採血だけで済むようになると想像してみてください。もしも、すべてのがんが手軽で安価な血液検査でわかるようになれば、医療業界に革命をもたらすかもしれません。
とはいえ、がん検査として信頼できる血液検査が現場で使われるようになるには、まだ時間を要することでしょう。研究者たちは、この血液検査の発展と今後の可能性に歓喜する一方で、臨床利用に向けてより大規模な研究を進める必要があると述べています。

がんを検出できる血液検査技術は、今後どのように進歩してゆくのでしょうか?
いずれ手に届くかもしれないがん検査の未来像として、世界中の期待が高まっています。

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