1. 果たしてルーチン化すべきか?前立腺がんを調べるPSA検査のメリットとデメリット

海外医療トピックス

2015.12.15

果たしてルーチン化すべきか?
前立腺がんを調べるPSA検査のメリットとデメリット

男性がかかる一般的ながんとして知られる前立腺がん。その早期発見に役立つPSA(前立腺特異抗原)検査にデメリットがあることについては、長らく論争が続いているようです。今回は、その経緯を医療系ニュース専門メディア「メディカル・ニュース・トゥデイ」からご紹介します。

米国における、PSA検査承認と患者さんの生存率

メディカル・ニュース・トゥデイが報じている情報によると、アメリカ人男性がよくかかるがんの第1位は皮膚がん、それに続く第2位が前立腺がんとのことです。新たに前立腺がんであると診断される患者さんは、2015年だけでも、約220,800人にのぼるだろうと予想されています。その一方で、この病気による死亡率は比較的低く、ほぼ100%の患者さんががんの診断から5年以上生存するそうです。多くの医療専門家は、前立腺がんをスクリーニングするPSA検査がその背景にあると考えています。その根拠は、検査の承認時期と、生存率の変化です。

PSA検査がアメリカ食品医薬品局に承認されたのは、1990年代前半のこと。この検査が承認される以前の10年間においては、患者さんが前立腺がんと診断されてから5年間生存する確率は70~75%にとどまっていました。それが、1998年には98.2%にまで上がったといいます。以上のことから、やはり「この検査が患者さんの生存率に影響を与えた」と考えられるようになったそうです。

死亡率低下の裏にひそむ、過剰診断の危険性

がんの早期発見が叶う反面、スクリーニング検査には、どうしても偽陽性の結果も出てしまうというデメリットが付きまといます。さらに、この検査が過剰診断につながり患者さんに不要な治療を受けさせる原因となりうるほか、検査結果からがんが良性かどうかを判断することもできません。こうしたことから、PSA検査の正確性に疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?

PSA検査をおこなう場合、PSAレベルが4.0ng/ml以上の患者さんに前立腺がんの疑いがある(生検が必要である)と考えるのが通常です。しかしながら、PSAレベルは、身体への影響ががんほど深刻ではない「前立腺炎」や「前立腺肥大」でも上昇するものとして知られています。また、がんの早期発見に役立っている一方で、生涯症状も出ずに終わるようながんが見つかる確率も高く、そのようながんの治療によって多くの患者さんを深刻な副作用の危険に晒しているのです。

PSA検査のルーチン化をめぐる論争と今後の見通し

過去の研究における推定結果によると、たとえPSA検査で陽性が出た男性でも、そのなかで17~50%の人は生涯前立腺がんの症状が出ずに終わると考えられるそうです。「最多で50%の人は症状が一生出ないかもしれない」と聞くと、PSA検査を本当にルーチン化すべきか、よく考える必要が出てきます。それでも、副作用などの危険性にとらわれすぎて検査を避けたのでは、症状が出ていないだけの危険ながんを早期に発見するチャンスを失うことになり、元の木阿弥です。
そういった論争を経て、アメリカの疾病管理予防センターや泌尿器科学会をはじめとした組織の考えを集約すると、「検査の短所を含めた情報を然るべき患者さん(50代男性、またはハイリスクの40代男性)に提供したうえで、彼らに意思決定の機会を与えるべきだ」という見解にまとまります。また、診断の精度を上げるため、PSA検査に代わる新たなバイオマーカーや診断方法が必要だと考えている医療専門家も多いようです。

がんを早く見つけて治療できるというメリットと、過剰診断につながるかもしれないというデメリット。それらをふまえると、PSA検査をルーチン化すべきかどうか、今の時点で白黒はっきりさせることはできません。ただ、いかなる検査を提供する場合でも、医師は患者さんに必要な情報を開示し、本人自身の意思決定を支援する必要があると言えそうです。

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