1. 世界初!3D印刷で作った胸郭をがん患者に埋め込む手術に成功 -スペイン-

海外医療トピックス

2015.12.01

世界初!3D印刷で作った胸郭をがん患者に埋め込む手術に成功
-スペイン-

臓器から義肢の作製にいたるまで、3D印刷はいまや医療の最先端にも用いられる技術となりました。さまざまな分野で頻繁に「3D印刷」「世界初」というニュースが飛び交うなか、2015年8月、3D印刷によって作られた胸郭の埋め込み手術に、スペインの医療チームが成功。これもまた世界初の事例ということで、一般の人々の間でも話題となりました。

3D印刷で作った胸郭の埋め込みに成功

今回の埋め込み成功で注目を浴びたのは、スペインのサラマンカ大学病院です。このニュースを取り上げたメディアのひとつ「テック・インサイダー」は、同病院で54歳男性のがん患者に対し、3D印刷で作られたチタン製の胸骨および肋骨の埋め込み手術がおこなわれたと報じています。
テック・インサイダーによると、この男性は胸壁肉腫の患者さんで、腫瘍摘出のために肋骨および胸骨の一部を取り除く必要があったとのことです。そこで男性には新たな胸郭が埋め込まれることとなり、インプラントの作製に3D印刷が採用されました。
手術から12日後に患者さんは退院し、経過は良好とのことです。

胸郭の作製にはオーストラリアが協力

スペインの医療チームが必要とする胸郭の作製にあたっては、「オーストラリア連邦科学産業研究機構(通称シーサイロ、CSIRO:Commonwealth Scientific and Industrial Organisation)」と同国の医療機器メーカー「アナトミクス(Anatomics)」が協力し合いました。
まず、高解像度のCTスキャンデータをもとに、アナトミクスが患者さんの胸部を復元。そのレプリカを使って医師との相談で切除部位を明確にしながら、インプラントを設計したようです。そして、設備が整っており3D印刷の技術に長けているCSIROが、設計通りのインプラントを作製しました。

世界初の事例を支えた、3D印刷技術

今回の計画に使われたのは、電子ビーム技術で知られるアーカム(Arcam)社が作った130万豪ドル(約1億1,280万円)の3D印刷機です。このプリンターは、電子ビームによって金属を印刷できる3D印刷機で、一層ずつ溶解したチタンを塗り重ねては融合させ立体を作ることができます。

インプラントの作製に3D印刷が選ばれた理由

チタン製のインプラントを人体に埋め込むことは、もちろん今回が初めてではありません。胸部外科医は、必要に応じて扁平なプレート状のインプラントを用いるが一般的です。しかしながら、それは時間とともにゆるんでしまう場合があるため、合併症のリスクが高まる可能性があります。

そこで採用されたのが、3D印刷によるチタン製胸郭です。複雑な形状のインプラントでも、3D印刷を使い患者さんの骨格に合わせて細部までカスタマイズすれば「ゆるみ」の防止につながるため、医療チームはそれがより安全な選択肢であると考えました。

また、CSIROは、しばしば緊急を要する医療分野において、プロトタイプを素早く作製できる3D印刷は有利だろうと話しています。

今回3D印刷で作られた、胸郭インプラントの構造

今回の腫瘍摘出手術で取り除かれることが決定していたのは、胸骨体と、第2肋骨から第5肋骨までの右側前部全体および左側の一部(胸骨体との接触部分)です。そこで、胸骨体を中心に左右4本ずつ伸びた肋骨部分がすべて一体となったインプラントが作製されました。第2肋骨から第5肋骨まで、残存する肋骨をそれぞれのスロットに差し込み、ネジで固定します。

少々ボリュームのあるスロット部分は、骨を前後から挟むような形状です。また、胸骨体に代わる部分は本来の骨と同じく扁平ですが、多くの穴が整然と並んでいます。そして、患者さんの右側の第2肋骨から第5肋骨までは、前の部分がほとんど失われているため、失われていない後ろの部分から人工の胸骨体までを細いワイヤーでつないであります。これらのワイヤーは本来の肋骨に近い曲線を描いています。

どれひとつとして同じものは存在しない人体。個々のカスタマイズに強い3D印刷は、今後ますます医療にとって頼もしい存在となりそうです。

海外医療トピックス バックナンバー

この記事を見た方はこんなコンテンツも見ています