1. アメリカの医療マリファナ事情:効能とその危険性をどう考える?

海外医療トピックス

2015.11.16

アメリカの医療マリファナ事情:効能とその危険性をどう考える?

2015年7月の時点で、アメリカ国内で医療マリファナが「合法」とされている州数は23に上っています。これまでは違法とされていた医療マリファナですが、昨今あえてこれの合法化に向けて多くの州が動き出した裏側には、一体どのようなストーリーがあるのでしょうか。今回は、医療マリファナの歴史とともに、その効能や危険性などをみながら、その真相に迫ってみましょう。

医療マリファナの歴史

医療マリファナの起源には諸説ありますが、ここではニューヨーク州立大学のミッチ・アーリーワイン心理学部教授の著書「Understanding Marijuana: A New Look at the Scientific Evidence」を参照します。
この中でアーリーワイン教授は、医療マリファナの起源は紀元前2737年であると述べています。中国古代の伝説上の帝王「三皇五帝」の一人である「神農」が、大麻のお茶の薬効をうたっていたそうです。効能としては、痛風、リウマチ、マラリヤや記憶力の老化に対する治療効果が挙げられていました。そしてその後、マリファナの医療利用は、アジアや中東へ、さらにアフリカ、インドへと広がっていきます。

後に、ヨーロッパやアメリカにも広がった医療マリファナですが、1800年代になるとアメリカ国内で変化が起きます。国内のモルヒネ中毒者の蔓延にともない、マリファナを含む「ドラッグ」に対する国民の意識がネガティブなものへとシフトしたのです。

そして、その監視の必要性が生じたことから、1906年にはFDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)が設立されます。FDAの当初のガイドラインでは特にマリファナのことにはっきりと触れられていたわけではなかったのですが、化学物質の使用をコントロールしようという動きのなかで、マリファナの医療利用も少なくなっていきます。その後、1937年に設けられたマリファナ税法によって、マリファナの処方や販売などに高額な税金がかかるようになったのをきっかけに、医療目的でのマリファナの使用は支持が減ることになったのです。

医療マリファナの効能と危険性

一度は支持率の下がったマリファナが、近年になってその存在を復活させた理由は、いったいどこにあるのでしょうか?その背景には、マリファナは医療的効能があると考える人が多くなってきたということがあります。
DFA(The US Drug Enforcement Administration:米国麻薬取締局 )の分類によると、マリファナは「依存性が高く、医療用として使用することは認められない」とされる、「スケジュール1」のカテゴリーに属しています。このカテゴリーに含まれるドラッグには、危険度が高いドラッグとして知られる、ヘロイン、LSD、エクスタシーなどがあります。
しかし「マリファナを病気の治療に用いると、さまざまな効能が得られる」と考える人も多くいます。
The mindful worldの「The pros and cons of medical marijuana」によると、こういった人々は、マリファナを使用することで次のような効能を得られる可能性があると考えています。

  • てんかんの発作をコントロールする
  • アルツハイマー病の進行を遅らせる
  • パーキンソン病の震えの症状を軽減する

しかし同時に、マリファナの医療利用には

  • 記憶力の低下
  • 運動能力の低下
  • 心臓発作のリスク
  • 引きこもりの原因となる

といった、危険性もあるとされています。

さまざまな効能と危険性の両面をもつ医療マリファナですが、いったいどういった人が「使う」という選択をするのでしょう。「CNNの「7 uses for medical marijuana」によると、医療マリファナを使用する患者さんのなかには、以下のような目的を持った人がいるそうです。

  • 痛みの症状がある人(アメリカでの医療マリファナの使用理由として最も一般的)
  • MS(多発性硬化症)患者(痛みを伴う筋痙攣の治療法として、25カ国で合法)
  • エイズ罹患者や放射線治療を受けている患者さんなどの、吐き気を止め食欲を向上させる
  • てんかんを持った子供の発作回数を減らす

このように、日常生活に支障をもたらす痛みや発作、食欲不振への対策として、医療マリファナ使用という選択を取るケースが多いようです。

今後の動きにもぜひ注目を

日本では法律で規制されているため、医療目的であってもマリファナを使用することは違法となります。
しかし、アメリカを含む世界の国々がその使用の合法化への動きを見せる今、日本でも医療マリファナへの関心は高まるかもしれません。医師として、常に最新の正しい知識を得る努力を行っておきたいものです。

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