1. 医師求人のDtoDコンシェルジュ
  2. 難聴者との音声コミュニケーション
  3. 【第6回】雑誌「DtoD」23号掲載「医療を支える日本のものづくり」comuoon

難聴者との音声コミュニケーション ~伝える、聴こえるをデザインする~

【第6回】 雑誌「DtoD」23号掲載「医療を支える日本のものづくり」comuoon

>>一覧はこちら

「comuoon」の機能評価が高まるとともに、実際に活用いただくシーンも業種・業態の枠を超え、多くの施設、団体、企業で導入が進められるようになりました。話す側からの「伝えたい、伝える責任」がムーブメントとなっていることを感じています。先日この連載を企画された総合メディカル様から、雑誌「DtoD」23号への掲載依頼があり、取材を通じて「comuoon」の開発から今日までを整理する良い機会となりました。
「医療を支える日本のものづくり」という特集から「comuoon」の記事を原文のまま転載します。
皆さんの理解をさらに深めていただける一助となれば嬉しい限りです。

「軽度」「中等度」難聴者との会話を飛躍的に改善する「comuoon」

これまで「聴こえ」の改善はもっぱら聴く側の努力にかかっていた。
しかし、ユニバーサル・サウンドデザインの中石真一路氏は、まったく逆の発想をした。
話す側にできることがあると考えたのだ。
それが卓上型会話支援システム「comuoon(コミューン)」として結実した。

さまざまな現場・窓口で相次ぐ採用

ろう学校や難聴学級にcomuoonを寄贈する「きこえのあしながさん」プロジェクトをはじめ、「聴こえ」支援のための講演会も各地でおこなっている。
2013年12月に発表された「comuoon」。難聴者に聴こえやすい音を求めて新たに開発された高性能マイクと小型アンプ、スピーカーで構成されている。小型でかわいらしいデザインは卓上に置いても場所を取らず、機械然とした冷たい表情もない。難聴者からも補聴器なしでもよく聴こえると高い評価が寄せられ、発表年のグッドデザイン賞も受賞した。審査委員からは次のような講評が寄せられている。

「この製品は、難聴におけるコミュニケーションの問題に対し、聞く側だけでなく話す側でも支援しようというアイデアである。優しく清潔感のあるフォルムは、必要に迫られて使う補正器具ではなく、むしろ積極的に使ってみたくなるような魅力のあるものとなっている。実際に使用してみると、人の会話がハッとするほどクリアに伝わってくることに驚く。未使用時は繭状に収納され、美しいだけでなく可搬性も考慮されている点も評価できる」(https://www.g-mark.org/award/describe/41284)

さらに今年4月には、障がいのある人に対して合理的配慮をおこなうように努力することを義務付ける「障害者差別解消法」が施行されたこともあり、さまざまな現場・窓口で「comuoon」の採用が増えている。しかし「comuoon」普及の原動力は、たまたま目前となった法律の施行ではない。難聴者の7割を占めるといわれる「軽度」「中等度」の9割の人の聴こえ改善に有効であるという報告(第115回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会における九州大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科分野チームの報告)があるように、第一はその明瞭な効果であり、さらに「話す側から歩み寄る」という機器開発のコンセプトに対する深い共感だ。

それは、ユニバーサル・サウンドデザインのCEOであり「comuoon」開発者である中石真一路氏の、困難な機器開発の歳月を支えた思いでもあった。

話す側から歩み寄る 今までにない発想を力に

もともと中石氏は大手レコード会社に勤務。コンサートなどで使うPA(音響拡声装置)の音を、より遠くまで届けることができるスピーカーの開発プロジェクトを担っていた。そのなかで偶然の発見があった。

「いい音を遠くまで飛ばす、という研究をしていました。しかし、どうしても音が歪んでしまう。そもそも歪みのない音とは何だろう、と考えながらスピーカーの開発を進めていたのですが、その過程で、あるスピーカーについて難聴の方がすごく聴きやすいとおっしゃったんです。なぜ難聴なのに聴きやすいのか、不思議だと思いました。実は私の父も祖母も難聴だったので、その点にはとても関心があったんです」

どういう音をつくれば難聴者が聴き取りやすいものになるのか―中石氏は解明を続け、そしてスピーカーの試作品をつくる。難聴者にその音を聴いてもらい、さらに改良を進めようと考えていた。しかし、すぐには周囲の理解や協力を得られなかった。実際に難聴であっても、難聴者として扱われることに抵抗を感じたり、自分にスピーカーを向けられるのは嫌だと感じる人がいた。

医師のなかにも「大きな声ではっきり喋ればそれで済むこと」と思っている人が少なくなかった。中石氏は、誤解を解き、また、大声で話しても実りのあるコミュニケーションはできないことを説明しながら協力を求めていった。そのとき中石氏を支えていたのは、話す側から歩みよるという発想だった。
「聴こえの改善という問題は、補聴器をつけるという聴く人の努力の問題になっていました。しかし、難聴者に聴こえやすい音があるということを知ったとき、話し手側の努力でできることがあると気付きました。今までとはまったく逆の発想です。しかし、このアプローチが必要だと思いました」

回路設計をやり直していっそうの小型化を実現

難聴者の意見、音響の専門家や医師のアドバイスを受けながら、中石氏は「難聴者にとって聴こえやすい音」を求めて機器の改良を進めていった。高い音が聴きにくいという話を聞き、最初の試作器では高音を強調する設計にした。しかし100人以上のモニタリングの結果、音質がよくないという感想が寄せられた。聴こえにくい人は、音質はわからないのではないかという先入観を持ってしまっていたことに気付いた。

そこで高い音を無理に上げるのではなく、通常の会話によく使われる1000ヘルツから2000ヘルツの音を強調、筺体を細長くして音を鳴らす部分を後ろに下げることにより、音が拡散しないようにした。反響を防ぎ、より聴こえやすくするためだ。

さらにマイクやケーブルについても、ノイズや歪みの発生しないものを求めて試行錯誤を続け、これでほぼ完成と考えた試作器ができた。しかし新たな難問が降りかかる。「大きすぎる」というのだ。
「机の上に置くには大きいと指摘されてしまいました。しかし底の部分のアンプをさらに小型化するためには回路設計を一からやり直さなければなりません。しかも部品の間隔が狭くなると音に歪みが出やすいという問題もありました」

中石氏はレコード会社時代の人脈をたどって新たなパートナーを探し、ようやく10%以上の小型化を実現。ついに「comuoon」が完成した。

佐賀県・吉野ヶ里町に工場をかまえる佐賀エレクトロニックス株式会社が部品、回路、基板などを開発当時から担っている。開発~製造にはほかにも数社が関わる。

聴こえの改善で医療サービスの向上に貢献したい

すでに「comuoon」は多くの医療現場で使われている。反響も大きかった。ある医師は中石氏にこう感想を伝えた。「ぼくはこれまでは仕事をしていなかった、と思いました。難聴の人に一方的に話して、それで伝えた気になっていた」と。またほかの医師は、聴こえることで患者さんとの会話内容が豊富になったことを喜んだ。「最近はどのように過ごしていますか」といった生活に根ざした話をする際も、聴こえがうまくいっていないと、うまく意思疎通できないからだ。

中石氏も大きな手応えを感じている。「医療現場は音声による重要なコミュニケーションを多用しています。医療に従事される皆さんのお仕事に少しでも貢献できたことを嬉しく思っています」
「comuoon」の姉妹器として、ワイヤレス環境での対話が可能な「comuoon connect」も誕生した。襟につけるピンマイクを使えば、話す人が動きながらでも聴きやすい声を届けることができる。さらに中石氏は、スピーカーから出る音を一人ひとりに合わせてタブレット端末を使ってカスタマイズし、さらに聴こえを改善することに取り組んでいる。「comuoon」をどこでどう使うか、使い手によってアイデアは次々と生まれている。伝える側の工夫・努力という新たな視点が、音声コミュニケーションの新しい時代を切り拓いた。

記事提供
中石 真一路
(慶應義塾大学SFC研究所 所員、広島大学 宇宙再生医療センター 研究員、日本聴覚医学会 準会員)

ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社

ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社
〒105-0022 東京都港区海岸1-9-11 マリンクス・タワー2F
■ comuoonの購入や製品に関するお問い合わせは販売代理店へ
総合メディカル株式会社 医業支援事業推進部
〒810-0001 福岡県中央区天神2-14-8 福岡天神センタービル16F
TEL:092-713-6831(代表)、FAX:092-713-6072