1. 医師の労働について 働き方改革による変化

医師のための医療情報特報便

2019.06.18

医師の労働について
働き方改革による変化

医療業界には医師の存在が欠かせません。高齢化が進む現代では、病院だけでなく在宅分野での需要も高くなるなど、医師は今後ますます必要とされるでしょう。しかし、待遇、勤務時間などの労働環境は、適切に整備されているとはいえない状況です。厚生労働省は現在、医師のための働き方改革を打ち出しています。今回は医師の働き方に焦点をあてて考えていきます。

医師の労働状況

近年では、さまざまな職種の長時間労働が問題視されていますが、特に医師は、生命に関わる仕事であり、365日、24時間体制で勤務に携わらなくてはなりません。ここ数年、特に地方の医療機関、大学病院などの人員不足、労務管理問題や、医師の厳しい勤務実態についてメディアに取り上げられることが多くなってきました。

なぜ医師はそこまで長時間労働を強いられることになったのでしょうか?

その理由としては、日本の医療の専門性が増し、さらに高度化していることが挙げられます。現代において求められている医療を支えるためには、医師は深夜や休日であっても関係なく長時間勤務が必要となってきているのです。

また、医師の業務は人の生命と密接に関係しており、その対応が生死に関わることもあります。

そのため、患者さんとの対話や治療方針決定、治療・処置などを、時間をかけて行う必要があり、必然的に労働時間が長くなってしまいます。

『脳・心臓疾患の労災認定基準における長時間労働と認定される水準』を超え、勤務医の約40%は年間960時間以上働いており、約10%は1,920時間を超えています。さらに、約2%はその3倍となり、年間2,880時間を超える過重労働をしています。

増加する医師の負担や長時間勤務、さらにそれに起因する医療事故などの安全問題や医療従事者の離職・休職など、さまざまな問題への対策が必要となってきています。

働き方改革

過重労働を防ぐさまざまな取り組み

過重労働問題が叫ばれるようになり、平成26年、改正医療法により医療機関の管理者が医療従事者の勤務環境改善に取り組むことが努力義務化されました。この医療法改正はさまざまな効果をもたらし、医師確保対策に取り組む「地域医療支援センター」などの設置および、女性医師の復職や就業支援が進んできました。

また、根本的に医師数が不足している問題に対しては、医学部入学定員の増員を始めました。平成28年、29年には計2か所で医学部が新設され、医学部定員は過去最高を更新し続けています。

現代の医療水準を保ちつつ、医師不足や過重労働を防ぐために医療法改正や医師数拡大が試みられています。しかし、実際に医療現場の労働環境が改善されたかというと疑問が残ります。医療現場の労働環境改善のためには医師数の拡大だけではなく、特定の地域や診療科への医師の偏在問題も解決しなくてはなりません。より高度化する医療と、食文化の変化や、高齢化が進む社会によって、疾病は変化し続けており、長期にわたる細心の医療が求められるようになってきています。そのため、医師数の拡大だけでなく、医師の偏在やITなどの導入による医療技術の高度化や入院の長期化にともなう医師の負担増加への対策を行わない限り、医師の労働環境は改善されず、疲弊し続けることになるでしょう。

働き方改革

そうした中、医師を含めた労働者に対する環境を整備すべく平成29年3月に、政府は「働き方改革実行計画」を策定しました。働き方改革とは一般的に長時間労働の見直しを図り、ワークライフバランスを改善し、労働参加と効率を向上させることです。改善の余地期間は職種によって異なり、すぐに実施する必要がある場合と、急激な変化が弊害を起こす可能性があることから十分な準備期間を置いて徐々に改善する場合があります。

医師に関しては連続勤務や時間外労働規制が対象となりますが、医師法に基づく応召義務などの特殊性を踏まえて検討していく必要があるとされています。たとえば、いきなり全ての医師に対して「8時間勤務」に変更するように求めたとしても、現在の医療水準を保つことは難しく、365日24時間体制で医療を提供することは困難になります。

そのため、医師に関する働き方改革については、5年の準備期間が設けられており、医療水準を保った質の高い医療の提供と、新しい働き方を両立しつつ実現することが必要となります。

また、平成30年2月に開かれた「医師」の働き方改革に関する検討会の中で①医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み、②36協定等の自己点検、③既存の産業保健の仕組み活用、④タスク・シフティングの推進、⑤女性医師等に対する支援、⑥医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取り組みの6項目が示されました。

以上の6項目を柱に、現在の医療機関の経営維持・存続を踏まえて、どういった枠組みの中で具体的に働き方改革を進めていくかという議論がなされています。

今後の働き方

現在までに医師の働き方改革に関する検討会は22回行われてきました。

検討されている論点としては、

  1. 連続勤務時間は28時間以内とする
  2. 勤務間のインターバルは9時間以上とする
  3. 産業医などによる勤務医の健康チェックを地方でどのように運用すべきか

などが挙げられます。

医師の負担を考えれば、連続勤務時間やインターバルに関しては、当然のことだといえます。しかし、現在の医療の質を維持していくためには、十分な医師数の確保が必要不可欠であり、現時点での急な転換は困難だという意見も多くあります。

まとめ:健康的に医師であり続けるために

高齢化が進み、医療が高度化した現代では、医療の質を落とすことなく医師の労働環境を改善するための「働き方改革」が必要だと考えます。

医師の働き方改革で掲げられていることに関しては、今すぐに実行に移せるものばかりではありません。それは、医療の質の維持にも通ずるところがあるからです。しかしながら、現状のまま医師の働き方が変わらないようであれば、医師の偏在やマンパワー不足により、医療の質は維持できず、徐々に崩壊すると考えられます。今後も働き方改革についての情報を収集しながら、自分の病院での働き方を見直す機会を作り(作ってもらい)、自身の健康状態に沿った働き方を目指すことが大切です。

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