1. 医師としてのキャリア 厚生労働省による意識調査から

医師のための医療情報特報便

2019.06.11

医師としてのキャリア
厚生労働省による意識調査から

医師として病院内だけで働いていると、自分以外の医師はどのような働き方をしているのか、将来のビジョンをどう考えているのかなど、なかなか分からないこともあると思います。実際に他の医師は今後のキャリアについてどう考えているのでしょうか。今回は、厚生労働省の調査をもとに現役の医師たちの「キャリア」について考えていきたいと思います。

医師働き方に関する調査

時間短縮勤務による空き時間を利用して他の仕事を兼務するなど、働き方が多様化する社会の中で、医師の働き方も多様化しつつあります。そんな現代において、全国の医師の勤務実態やキャリア意識について気になる方もいるのではないでしょうか。厚生労働省は、平成29年に現在の医師の勤務実態や、働き方の意向・キャリア意識を正しく把握することを目的に、「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」を実施しています。医師の現状を把握するために、この調査結果は大切な指標となるのではないでしょうか。

調査に際し、厚生労働省は医師調査票を調査対象者約10万人に、医療施設票を12,035施設に配布しました。回収数は医師調査票が15,677件、医療施設票は3,126件となっています。

調査に回答した医師の性別の分布は、男性11,570名、女性3,511名、未回答396名となっています。その内、常勤医師が10,738件、非常勤医師が1,949件、病院・診療所の開設者が2,501件、未回答が149件でした。非常勤医師からも約2,000件の回答があることから、厚生労働省は、常勤・非常勤ともに十分な分析が可能という見解を示しています。

続いて年齢分布ですが、男性医師は30~50代の回収率が高く、20代医師からの回収率がやや低めでした。また、女性医師は30~40代の回収率が比較的高い傾向にあります。この結果について、厚生労働省の資料では、三師調査の結果と比較したうえで「概ね回答の分布が再現されている」と示されています。

医師としてのキャリア意識

多忙な日常の中で、医師は何に「やりがい」を感じているのでしょうか。やりがいは医師によって異なると思いますが、その中でも「自分はこの道でやっていきたい」というさまざまな想いがあるのではないでしょうか。厚生労働省の意識調査の中に「キャリア意識」という項目があります。キャリア意識は医師が今後どのような勤務形態(勤務地)で働いていきたいかを調査した内容になります。

提示した資料は全世代の調査結果で、一番多く望まれている形態は勤務医ということになります。その次に開業医、そして研究教育という順番となっています。

世代別の調査結果によると、30代以下の若手医師のほとんどが、今後のキャリアとして勤務医や開業医を希望しているのに対して、40、50代以上になると勤務医・開業医を希望する割合が下がる一方、介護・福祉分野や産業医の希望も増え、希望するキャリアが多様化する傾向がみられます。

将来を見据えて

次に、医師に対して、東京都23区および政令指定都市、県庁所在地等の都市部以外で勤務する意思があるか調査したところ、44%の医師が、今後、地方(東京23区および、政令指定都市、県庁所在地などの都市部以外)で勤務する意思があると回答しました。そのうち、20代では2~4年、30~50代では10年以上の地方勤務を希望する医師が多いことがわかりました。

さらに、20代の医師においては、60%の医師が地方勤務の意思があると回答しており、ほかの年代よりも多くなっています。ただ、長期間ではなく先述しているように2~4年の短期間を希望する場合が多いようです。

しかし、近年、医師数の地域偏在は問題となっています。地方で勤務する意思がない理由としては労働環境への不安、希望する内容の仕事ができないこと、医局の人事のため選択の余地がないこと、また、専門医の取得に不安があることも20代に特徴的です。

30〜40代では子どもの教育環境が整っていないことや、家族の理解が得られないこと、また、希望する内容の仕事ができないこと、労働環境への不安は20代と同様に上位の理由となっています。しかし、20代と違って専門医取得に関する不安は少ない傾向にありました。

50代以上では、前述したように地方勤務を希望する医師が多い反面、30〜40代同様に、勤務する意思が無い理由としては、労働環境への不安や家族の理解が得られないことなどが挙げられています。

若いうちはキャリアアップが希望する働き方に大きく影響しますが、年を重ねるにつれて、家庭環境の変化など、働き方に影響する要因は増えていきます。そのため、年代により希望する働き方の傾向が異なってくるようです。

まとめ:医師として生きる

今回は、厚生労働省が実施した意識調査をもとに、医師達がどのような働き方をしているのかを見てきました。他の医師達がどのようなキャリアを意識しているか参考になったでしょうか。人が生きるうえ上で医療は不可欠であり、その医療業界を牽引する医師は多忙を極めます。医師になる前に描いていたビジョンと、実際に働いてみて感じる現実のギャップに戸惑いを感じている方もいることでしょう。その場合、自分が今後どのようなキャリアを積んで目標を達成していくかを考え直すこともあると思います。今回の情報を参考にしていただき、自分の「やりがい」を大切にしながら、医師としてのキャリアを構築していくことが重要だといえます。

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