1. 医療事故調査制度 再発防止に向けた取り組み

医師のための医療情報特報便

2019.02.26

医療事故調査制度
再発防止に向けた取り組み

医師や看護師、医療の専門職は常に生死に携わる現場で働いています。生死に携わる現場では常に事故とも隣り合わせです。医療事故調査制度はそんな医療現場の安全確保のため、事故の再発防止を目的とした制度です。この制度は、原因を解明するために医療機関が自主的に医療事故を調査し、再発防止に取り組むことを基本としており、責任追及を目的としたものではありません。今回はこの医療事故調査制度について学んでいきます。

医療事故調査制度について

医療事故調査制度とは、平成26年6月18日に成立した、医療法の改正に盛り込まれた制度で、医療法「第3章 医療の安全の確保」に定められており、第6条の11において「病院等の管理者は医療事故が発生した場合には、厚生労働省で定めるところにより、速やかにその原因を明らかにするために必要な調査を行わなければならない。」と規定されています。医療事故調査制度では、医療事故が発生した医療機関において院内調査を実施、その調査報告を第三者機関が統合、情報収集、分析することで事故の再発を防止することが目的であって、責任追及を目的としているわけではありません。つまり、今後再び医療事故が起きないように考え、予防して行くことを目的とした制度になります。

医療事故調査制度の流れ

※厚生労働省より引用

医療事故調査制度の具体的な流れを、厚生労働省が公表している情報をもとに確認していきましょう。

1.医療事故の報告

医療事故が疑われる事例が発生した場合、医療機関はまず遺族に説明を行います。医療事故かどうかの判断は医療機関の管理者が行いますが、事故と思われることに対して管理者は報告することになっています。

2.院内調査

報告後、第三者機関である医療事故調査・支援センターに連絡をし、院内調査を行います。原則として医療事故調査を行う際には医療事故調査等支援団体に対して、医療事故調査を実施するために必要な支援を求めるものとしており、外部の医療専門家の支援を受けながら調査を行うことになります。これは、内部のみの調査という形をとると、中立性や公正性に欠けるという理由から定められています。ここでいう医療事故調査支援団体とは厚生労働大臣が定める団体のことを指し、日本および都道府県の医師会や歯科医師会、薬剤師会、国立病院機構などになります。

3.医療事故調査支援団体による支援

支援内容は団体によって異なりますが「医療事故の判断に関する相談」「解剖、死亡時画像診断に関する支援」「報告書作成に関する相談」と様々です。院内調査終了後は、調査結果を遺族に説明して医療事故調査・支援センターに報告する流れになります。また、医療機関が医療事故として医療事故調査・支援センターに報告した事案に関しては、遺族も調査を依頼することができます。

4.院内調査結果報告

医療機関から遺族と支援センターに調査結果を報告する際、遺族に関しては口頭または書面など、希望する形での報告を行わなければなりません。センターへ報告した内容については、医療事故調査の一番の目的である「再発防止」に向けて必要があれば、センターから医療機関に内容確認などを行うこともあります。

5.センター調査

報告された事例について、院内調査とは別に、詳しい原因について医療機関または遺族がセンターへ調査を依頼した場合は、センターは必要な調査を行うことができます。

6.再発防止に関する普及啓発

先述した通り、医療事故調査は「再発防止」のための取り組みです。そのため、センターは医療機関から集めた情報を、ある単一の医療機関の問題としてではなく、すべての医療機関において留意すべき共通認識として、得られた再発防止に関する情報等を提供するという役割も担っていきます。

医療事故調査の実態

医療事故調査の流れなどを説明してきましたが、医療事故調査における事故とは、どのようにして判断されるのでしょうか。ここでは判断基準を紐解いていくことで、医療事故調査の実態について考えていきます。

判断基準に関しては法令で細かく規定されています。医療法第6条の10では、「病院、診療所または助産所の管理者は医療事故(病院、診療所、助産所に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産であって、その管理者が当該死亡または、死産を予期しなかったもの)が発生した場合には厚生労働省令で定めるところにより、遅延なく該当医療事故の日時、場所及びその他事項などを医療事故調査・支援センターに報告しなければならない」と明記されています。そのため、病院等の管理者は医療事故と判断しうる問題が起きた際には、法令に則ってすみやかに判断する必要があります。

「医療従事者に起因し、死亡や死産を予期しなかった」と考えられるケースには、以下のようなものがあります。

「医療(従事者)に起因したと疑われる死亡や死産」については、

  1. 診察
  2. 検査など(経過観察を含む)
  3. 治療(経過観察を含む)
  4. その他(療養、転倒や転落、誤嚥、身体拘束や隔離)

が挙げられ、4.その他(療養、転倒や転落、誤嚥、身体拘束や隔離)については、管理者が医療に起因し、または起因すると疑われると判断した場合になります。

また、「医療またはそれに起因」に含まれない内容としては、

  1. 施設管理に関する火災や地震などの天災によるもの
  2. 併発症(提供した医療に関連のない、偶発的に生じた疾患)
  3. 原病の進行
  4. 自殺
  5. その他(院内で発生した殺人・傷害致死等)

が挙げられています。このように、医療に起因したと疑われる死亡や死産に関してはしっかりと定義があり、それに従って管理者が判断する必要があります。 上記のように判断材料はありますが、まずは医療行為を実施する際に第6条の10の内容を医療従事者としてしっかり把握したうえで、医療従事者は死亡や死産が予期される場合は、患者さんに事前に説明し、診療記録に明記しておく必要があります。

まとめ:医療事故から学ぶその先の医療

医療事故調査制度とは何か、また調査の流れはどうなっているのか、そしてその判断基準について考えてきましたが、いかがでしたか? 医療事故は、医療行為をおこなう医師や医療従事者であれば誰しも直面する可能性があります。医療は、提供する医療従事者と、提供される側である患者さん(ご家族)双方の同意を持って安心、安全に展開されるべきものです。しかし万が一医療事故と判断される事例に遭遇した場合は、速やかに報告し、原因を究明、同じような事例が起こらないようにしていきましょう。医療事故は決して他人事ではなく医師ら医療従事者と患者さん、誰しもが関わる可能性があるため、自分ごととして捉える必要があるでしょう。

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