1. 介護医療院について 生活施設を組み込んだ考え方

医師のための医療情報特報便

2019.02.19

介護医療院について
生活施設を組み込んだ考え方

高齢化社会にともない様々な法改正がなされていく今日、施設に関連した内容も変化の時期を迎えています。平成12年の介護保険法の施行により、長期入院する患者さんの入院措置として長期療養型病床群から分かれた、介護療養病床と医療療養病床。しかし、入院する患者さんの区分けが曖昧になっている現状から、介護療養病床は廃止となり、新しい介護保険施設への転換が開始となりました。ところが、患者さんの「生活」が充足しなかったことから転換はうまく進みませんでした。そんな状況を打破するため、新たに平成30年4月から介護医療院が創設される事となりました。

介護医療院について

超高齢化社会となった日本にとって、療養病床は必要不可欠となっています。現行では介護療養病床や医療療養病床などがありますが、その利用者像にはどのような特徴があるのでしょうか。厚生労働省は以下のようにまとめています。

    ■療養生活が長期に及ぶ
  • 介護療養病床は約1年半の平均在院日数となっており、長期化している。
  • 介護療養病床では約4割が死亡退院となっている。
  • ■医療、介護の必要度が高い
  • 特養や老健よりも、医療必要度が高い患者さんが入院している。
  • 平均年齢が80歳を超えており、高い要介護度を有している患者さんが多い。

上記のような利用者像から、療養病床に入院する患者さんが長期にわたって生活を送るのにふさわしい環境整備(住まい機能の強化)を行うことが必要であると考えられています。また、死亡退院が全体の4割という背景を踏まえて、経管栄養や喀痰吸引など日常的な医療処置、充実した看取りを実現するための体制強化が必要とされています。

療養病床を利用する患者さんのこれらのニーズに対応するため、国は平成30年から介護医療院の創設を決定しました。介護医療院は、今後増加が見込まれる長期療養が必要な患者さんに対応するために設置される施設です。特に医療、介護の必要性が高いと判断された患者さんへの「日常的な医学管理」や「看取り・ターミナル」等の機能、そして「生活施設」としての機能を兼ね備えた施設になります。

医療療養病棟との違い

現在多く利用されている医療療養病床と、介護医療院にはどのような違いがあるのでしょうか。簡単に言うと、患者さんが必要とするサービスの違いです。医療療養病床に必要とされるサービスは医療寄りであり、介護医療院では必要なサービスが介護寄りになります。

医療療養病床は元々、病院・診療所の「病床」のうち、長期療養を必要としていて、なおかつ医療的ケアが必要である患者さんを、医療保健の範囲で支援することを目的としていました。しかし、最近では入院が長期化することで高齢化が進み、「治療」というよりも「生活」の場としての利用価値が求められてきているため、そのまま医療療養病床で支援することが困難となってくる場合が多いのが実情です。

このような現状のなかで、介護保険の範囲で支援していく「介護医療院」が創設されました。介護医療院は、高齢化により長期療養を余儀無くされた要介護者のニーズに応じて、入院が長期化した場合には医療ケアを受けつつ生活の場としても過ごせる、そして場合によっては、看取りまでを考えることが出来る施設となります。

介護医療院と医療療養病床は「広さ」にも違いがあります。医療療養病床では床面積の基準が約6.4平米であるのに対して、介護医療院では8平米とされており、この面積は老健施設相当の広さになります。

介護医療院は、現代の高齢化社会におけるニーズに柔軟に対応できる反面、医療療養病床と違い介護保険法に基づいて実施することになるので、介護保険の保険者である市町村の負担が大きくなることも事実です。そのため、自治体が小規模であれば、今後運営主体を都道府県に変更するなどの検討も必要になるかもしれません。

介護医療院が目指す未来

日本の高齢者人口は2042年にピークを迎えるといわれており、高齢化社会に突入している現代においては医療、福祉に関して様々な対策がなされてきました。長期入院が必要な方が多くなってきたことから、国は平成12年の介護保険法の施工と医療法改正を受けて、「療養病床群」を「介護療養病床」と「医療療養病床」に分けました。しかし、その後の調査によって入院している患者さんの区別が曖昧になっている実情が明らかになったため、介護療養病床を23年までに廃止することを決定しました。そして介護療養病床から医療療養病床への転換を進めてきましたが、うまく転換が進まなかったことから、廃止の期間を29年まで延長しました。そのような動きがあったなかで、医療療養病床だけでは医療ケア、介護ケア、さらには生活の場の提供や看取りまでを補えないことから、今回「介護医療院」という医療と介護の両方の機能を備えた新施設が誕生するに至りました。

先述した時代背景によって誕生することになった「介護医療院」。この施設が今後担っていく役割は、大きいものとなりそうです。厚生労働省は、「介護医療院は長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、その者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするものでなければならない」という基本方針を定めています。つまり、その患者さんに応じてケアをすることはもちろん、必要に応じて自立を促していくことを定義しているので、患者さんに「家に帰りたい」という想いがあるのであれば自宅に帰って在宅でのケアや看取りに繋げていく必要があります。このことから、現在地域包括ケアシステムの構築に向けて各自治体が実施している動きは、ここに集約されると言ってもよいでしょう。介護医療院は、今後の社会において患者さんが自分らしく過ごしていくために必要不可欠な施設となりそうです。

まとめ:介護医療院で働く医療者として

高齢化社会の日本では、少子高齢化社会、多死社会を想定した色々な取り組みが実施されてきました。社会背景に応じて何度も変化してきた医療、福祉の仕組みは今後より一層充実していくものと思われます。

介護医療院は、革新的であり、今まで担えなかった介護と医療、そして在宅の共存した役割を担える施設になることが期待できます。医師の仕事は多岐にわたり、通常業務だけでも大変ですが、1人でも多くの医師たちが介護医療院を知り、そこに何らかの形で携わることで、たくさんの人が過ごしやすい社会に繋がるはずです。

今後私たちの「生き方」を左右するといっても過言ではない新しい施設「介護医療院」に着目してみてはいかがでしょうか。

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