1. 女性医師の現状 女性医師のキャリア継続(維持)が求められている

医師のための医療情報特報便

2018.12.10

女性医師の現状
女性医師のキャリア継続(維持)が求められている

近年、社会全体においての女性の活躍には目を見張るものがあります。医療業界でも、現在の医学部における女学生は全体の3分の1を占めるなど、今後、女性医師には更なる活躍が期待されています。しかしその一方で、結婚・出産などを機会に休職、離職する女性医師が多いのも事実です。今回は、そんな女性医師の今を紐解いていきます。

女性医師の現状

日本の労働力である生産年齢人口は、少子高齢化に伴い今後急速に減少するといわれています。労働力の減少は医療業界に限らず社会的にも影響を与えるものであり、今後は女性が活躍しやすい労働条件を定めていく必要があります。現在、女性が社会で長くキャリア(現役)を続けにくい要因としては、結婚・出産を機に休職、離職してしまうことが大きいとされており、今後は子育てをしながらでも当たり前に継続就業が可能となる社会にしていく必要があります。

日本社会全体が労働力の減少を問題視している中、医療業界においては女性医師の割合が徐々に増えつつあります。厚生労働省の報告によると現在、医学部生の約3分の1が女性となっており、平成28年度では全国の女性医師の総数は全医師の21.1%となっています。非常に少ない割合に感じるかもしれませんが、平成10年度においては全体の13%にしか満たなかった時代もあり、徐々にその数(女性医師数)が増えていることが伺えます。

次に年代別の女性医師数と割合を見ていくと、男性医師の場合は20代から50代にかけて上がっているのに対し、女性医師は30代をピークに下がる傾向があります。

一方で、医療施設従事医師数の総数に占める女性の割合は、平成24年度が19.6%であるのに対して平成28年度は21.1%と上昇しています。では、活躍の場を広げている女性医師は、どの診療科で多く働いているのかを見ていきましょう。厚生労働省の報告によると、診療科別で見る女性医師の割合は皮膚科が最も多く46.1%であり、次に眼科、麻酔科の順で多く、その次は小児科と産婦人科が同等の割合を占めます。一方で女性医師が少ない診療科については整形外科、脳神経外科、泌尿器科、外科など、外科系の診療科が目立つ印象です。

医師として女性として

前述したように、女性医師の活躍が求められる一方で、結婚や出産を機に休職、離職する女性医師が多いのも事実です。では実際に、医籍登録後どの年代でどのくらいの割合の女性医師が離職し、復職するのかを見ていきましょう。

医学部を卒業する平均年齢26歳を100%とすると、医籍登録をしてから約12年が経った時点で女性医師の就業率は最低値の73.4%となっています。年齢でいえば29歳から休職、離職する女性医師が増え、38歳で一番多くなるイメージです。

29歳付近から休職、離職する女性医師が増えてきますが、その期間は29%の方が6か月~1年未満、次いで27.8%の方が1~6か月未満です。この結果から、休職、離職の期間は1ヶ月~1年未満がもっとも多く、休職、離職しても短期間で復職する女性医師が多いといえます。

休職、離職する際の理由については、「出産」が70%と一番多く、次いで「子育て」が38.3%と上位を占めており、いずれも出産を機に休職、離職する場合が多いことが伺えます。

こうした背景を見ていくと、労働力が減少していく現代においては、女性医師が結婚、出産後も安心して就業できる環境が必要だとわかります。厚生労働省が、実際に現場で働く女性医師に対して実施したアンケート結果を見てみると、子育てと勤務を両立するために必要な事として、職場の雰囲気と理解、勤務先に託児施設がある、子供の急病等の際に休暇が取りやすい、当直や時間外勤務の免除、配偶者や家族の支援、など、結婚や出産をしても働きやすい環境が整えば、働き続ける事が出来ると思われる意見が多く挙げられています。

今、女性医師が必要とされている!

医療業界での医師の確保が難しくなる中、日本での労働力減少を踏まえたうえで、女性医師の医療現場におけるニーズが高くなることは前述しました。実際に女性医師が多い皮膚科や小児科などの診療科では、女性医師が指導者や管理者になる事も多くなると予想されています。 しかし、女性医師は社会全体の性別役割分担意識などを背景に、結婚・出産を機に仕事と生活を両立させることが困難になることから、役職などのキャリアを中断せざるを得ない場合が多いという現状があります。

では、その様な課題がある中で、女性医師の活躍が求められる現代社会において国がどのような環境整備、施策を行っているのかを見ていきます。2014年、安倍内閣により女性が輝く日本を作るための政策が進められる中、「日本再興戦略」で女性医師が働きやすい環境の整備が提唱されました。

日本再興戦略の中では、国民の健康寿命延伸のためには新たに具体的施策を講ずべきとされ、女性医師による懇談会を設置し、その報告書に合わせて復職支援や勤務環境改善、育児支援等の具体的取り組みを一体的に推進するという内容が盛り込まれました。 女性医師による懇談会実施後の報告では、女性医師が働き続けやすい環境整備を進めるにあたって、妊娠や出産等のライフイベントに伴う負担を軽減するために職場環境を見直すと共に、モチベーションを維持向上しながら、自らの希望するキャリア形成を図り、社会的役割を果たしていく視点が必要だと報告されました。

その報告を受け国は、女性医師に関わる様々な取り組みを打ち出しました。取り組みの内容は主に以下の3つです。

①女性医師等就労支援事業

各都道府県において女性医師支援に係る取り組みを実施するとして、大学や医師会に相談窓口を設置する、復職のための研修を実施する、などが挙げられます。

②女性医師キャリア支援モデル普及推進事業

地域の医療機関に普及可能な支援策のモデル構築や、シンポジウム等の普及・啓発のために国が必要経費を補助するというもの。実際に女性医師支援に資する先駆的な取り組みとしては、女性医師に対するキャリア教育や、院内保育所利用等の育児支援などがありました。

③女性医師支援センター事業

日本医師会に委託して様々な取り組みを実施するというもので、具体的には女性医師の就業等に係る実状把握調査の実施や、全国の大学医学部や各医学会の女性医師支援や男女賛同参画の担当者に対する「大学医学部・医学生女性医師支援担当者連絡会」の開催などです。

このように患者さんはもちろんですが、国としても現代において女性医師の必要性を十分に感じており、様々な施策を実施していることがわかります。

まとめ:女性医師にキャリア継続が期待される

今回は女性医師の現状を紐解いてきましたがいかがでしたでしょうか。現代の日本社会において労働力が減少していくことは紛れもない事実であり、医療業界に関わらず女性の活躍は社会が成り立つためには非常に大きな意味を持ちます。今後、ますます女性医師の活躍が必要とされる社会になりますが、国も様々な施策を実施しており、働きやすい環境が整っていくと思われます。

目次