1. ICT?IT? 今だからこそ医療ITを紐解く

医師のための医療情報特報便

2018.11.26

ICT?IT?
今だからこそ医療ITを紐解く

今回は、医療ITの意味を整理し、国が施策している実例を紹介します。医療ITを導入・活用することによる、遠隔診療や電子カルテ、情報共有のメリットなど、多角的な側面から検証することで、今後の医療への効用を考えていきます。

医療ITとは?

ITとは「Information Technology」の略で、情報技術を意味します。ハードウェアや、ソフトウェア、アプリケーション開発、そして現在普及しているコンピューターなどに用いられています。また、最近になってICTという言葉が普及していますが、こちらは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術を指します。ITはコンピュター技術、ICTはその活用という意味で区別されていますが、世界的にはITとICTを同じ意味で使用することも多くなっており、日本でもITよりはICTという言葉を使うことが多くなっている印象です。
今回はIT(技術)という面に着目してお話していきます。医療ITにおける進歩としては、遠隔診療がとても革新的な技術といえます。遠隔診療は、Webカメラとモニターを通して患者を診療する仕組みで、オンライン診療とも呼ばれています。この新たな診療スタイルを実現したのは、クラウドコンピューティングやスマートデバイスといわれる技術や製品です。
クラウドコンピューティングとは、コンピューティングサービス(サーバー、データベース、ネットワーク、ソフトウェア)などをインターネット(クラウド)経由で配信することです。つまり、ネットを利用して様々なサービスを色々な場所に届けることが可能なシステムを指します。 スマートデバイスとは、パソコンなどを使用する場合に必要となるフレームやワークステーションなどを必要としない情報処理端末のことを指します。簡単にいうと、世界的に普及しているスマートフォンやタブレット機器のことを指します。こちらも場所を問わずあらゆる用途に使用することが可能となっています。
そのクラウドコンピューティングやスマートデバイスという技術を用いて可能になった医療技術のことを医療ITと呼び、その内の1つが先に挙げた遠隔診療です。

病院におけるIT導入

医療ITを活用すれば、医療業界全体の効率も向上すると考えられますが、実際に国は、医療ITをどのように捉えているのでしょうか。
厚生労働省が報告した「病院におけるIT導入に関する評価系」という資料の中に、医療機関が自ら機能等を考慮し、目的に応じた情報化の必要性と活用度を適切に評価することにより、望むべく情報化推進の一助となることを意図して行なった調査内容があります。医療とはあくまで人と人との繋がりにより実現するものですから、調査目的は「医療機関にITを積極的に導入することではなく、IT導入により改善したい問題に対し、その問題を解決するためのコストとメリットとのバランスが取れるようであればITを導入していく」、という考えかたにより成り立ちます。
IT導入について考える際に必要な調査、検証の評価指標についていくつか分類わけがされており、今回はそのうちの3つをご紹介していきます。
まず1つ目は、患者待遇の向上(待ち時間、予約の簡便さ等の事務待遇面)です。大小規模に関わらず、病院を受診した際に危惧される問題は待ち時間だと思います。この問題を改善するためのIT技術には、スマートフォンアプリなどを使用した診察予約システムや、診察順の表示、呼び出しが可能な装置などが挙げられます。診察順の表示や患者さん呼び出しについては人員の面でもマンパワー不足を補うことが出来るかもしれません。
2つ目は患者情報提供サービスの向上(説明、インフォームドコンセント等の情報提供) です。医師から口頭で説明されるだけでは分かりにくかった説明も、タブレットや動画を使用することによって理解しやすくなります。また、スマートデバイスを活用して患者さんが自宅で自身の病態を把握することが出来れば、次回来院時にしっかりと不安を相談することもできます。また、端末で質問することが出来るシステムがあれば、長時間待たずとも必要な回答を得ることができます。
3つ目は、医療従事者の業務改善です。医師の場合、紙カルテなどを利用していると、カルテが置いてある場所まで行かないと患者さんの情報が得られないため時間を要します。しかし、スマートデバイスなどの端末で情報収集が可能となると、その場で全ての情報把握が可能となり円滑に診療することが可能となります。
また、他職種連携においてもスマートデバイスがあれば情報の共有が可能となり、効率が良くなった結果、患者さんに接する時間をより多くとることができます。
上記のように、病院にITを導入することで効率が向上する可能性があるため調査、検証すべきだという項目は他にもあります。
そのため、この内容も、医療はIT導入を推進する時代になっているといえます。

IT化を推進、医療のさまざまな可能性を広げる

現代において医療IT化が進んでいることは国の施策を見ても分かりますが、もう少し具体的に、医療IT化が進んだ場合のメリットや、現在国が取り組んでいる医療ITの実例について触れていきます。

情報共有の効率化など、メリットの大きい電子カルテ

医療ITの1つに電子カルテシステムがあります。厚生労働省による報告から一般病院での普及率を見てみると、平成20年では14.2%、平成26年では34.2%となっています。これだけIT化が推奨されていてもまだまだ完全に普及はしていない印象です。しかし電子カルテを導入した場合、紙カルテよりも閲覧性が高まり、医療従事者が必要とする治療歴や薬歴などがタイムリーに確認できます。また、他部門との情報共有の効率化や、保管スペースがいらなくなるなど多くのメリットがあります。

地域医療連携、災害医療にも活用できる

地域に存在する多数の病院、診療所は、今まで直接会うか電話などによるツールでしかやりとりが出来ず、効率はあまりよくありませんでした。しかし、現代は地域医療連携が叫ばれる社会です。地域医療連携を円滑にすることも医療ITは目的としています。スマートデバイスを通じて地域の病院、診療所が繋がることで各地域に点在する患者さんの情報を共有し、地域医療を結ぶ重要な情報インフラとしての機能を果たすことができます。このインフラとしての役割は災害が起こった際にも素早く患者さんの状態を把握することに繋がり、地域における災害医療にも役立てることが可能となります。

遠隔診療

遠隔診療は、離島や僻地などに住んでいて頻繁に病院や診療所に来院することが難しい患者さんなどが対象となります。また、引越しやその他の理由で直接来院して受診することが難しい方も遠隔診療を利用することがあります。しかし、遠隔診療はいつでも誰でも利用できるということではなく、あくまで一時的な利用ができるものと捉えてもらわなくてはなりません。なぜなら診察というものは、患者さんを目の前で直接診て触れて話して実施する必要があり、初回からいきなり遠隔診療で状態を把握するのは難しいからです。その為、病院や診療所により様々ですが、現時点では遠隔診療の対象となる患者さんは全体の1割から2割程度です。しかし、遠隔診療というシステムがあるだけで、今まで直接受診することが難しかった患者さんにとっては「かかりつけ医」と繋がり続けることが出来る安心材料になることは間違いありません。

まとめ:IT化で変化する医療の未来

今回は、医療業界にITを導入することについて紐解いていきました。全国的に普及しているとはまだまだ言えませんが、医療ITが普及することで、医療従事者にとっても患者さんにとっても良い影響となることが分かります。医療機関サイドからみると病院機能全体の効率化、さらには地域医療連携、災害医療など、メリットが沢山あり、なかでも特に遠隔診療・在宅診療は多くのメリットがあると考えられます。これから医療業界の未来はIT導入により益々変化していくといえるでしょう。

目次