1. 医療ICTについてどこまで理解している!? 到来するICT化された医療について理解すべきこと

医師のための医療情報特報便

2018.10.12

医療ICTについてどこまで理解している!?
到来するICT化された医療について理解すべきこと

なぜ今医療業界にICTが導入され始めているのでしょうか? そもそもICTとはどういう意味なのでしょうか? 今回は、ICTの意味を理解しながら今後益々盛んになる医療業界のICT化について考えていきます。

医療ICTについて

ITとICTの違い

1990年代から多く用いられるようになった「IT」という言葉。その時代背景には、コンピューターやインターネットなどが急激に普及し始めたことがあります。ITという言葉は「Information Technology」の略で、簡単にいうと「情報技術」を意味します。これはコンピューターやデータ通信による技術のことで、ITが普及したおかげで仕事における様々な効率が向上したともいえます。では、ここ数年で見聞きすることが多くなった「ICT」とは一体どういう意味なのでしょうか。ITが技術を指す言葉なのに対して、ICTとは「Information and Communicaion Technology」の略であり、「Communication」を挟みこむことにより技術の活用という意味付けになります。ICTはいわゆるコンピューター単体ではなく、そこに「人」が介在することにより医療や様々なサービスに用いることを指します。もともと国はITという言葉を推進していましたが、2001年から総務省がICTという言葉を推進するようになり、2004年にはIT政策大網を「ICT政策大網」に変更するなど、人と人、人と技術が繋がって仕事をしていく時代が到来していることが見てとれます。

医療ICTについて

上述したような時代の流れからもわかるように、現代においてICTは色々な分野に活用されています。例えば、日常生活では家庭でスマートフォンのアプリに話しかけることで室内照明のON、OFFが可能となる、教育分野では、電子黒板やプロジェクターを使用した授業を展開することで学生の意欲および効率向上となるなどです。福祉分野では、家屋と連動させるケースもあります。水道の使用状況を把握して、高齢者が家で安全に暮らしているかを遠方に住む家族が確認できるといった形です。

このように様々な分野でICTは活用されておりますが、医療分野ではどのように活用されているのでしょうか? いくつか例を挙げていきたいと思います。まず、現場目線だと紙カルテに変わる電子カルテや電子処方箋が挙げられます。また、今までは医師と患者さんが直接対面して診察を行うことが基本であると認識されていましたが、ICTを活用することにより離島など離れた地域における遠隔診療などが整備されつつあります。その結果、普段病院に足を多く運べない方々への生活習慣病や重大な疾病の予防ができるようになってきました。

医療ICTが必要な理由

医療にICTが導入され始めた理由として、もともとIT化が進んだことが根底にはありますが、医療分野における様々な課題が浮き彫りになったことが大きいと考えられます。平成29年総務省参考資料「医療・介護・健康×ICTの推進について」では、医療等分野における主な課題として1.医療費・介護負担の増大2.医療機能の偏在3.地域における医師の不足・偏在、4.医療従事者の負担増などが挙げられています。また厚生労働省による報告によると、ここ数年で日本は諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しており、2025年から65歳以上の人口が益々増加の一途を辿り、2055年には全人口における75歳以上の高齢者の割合が25%を超える見込みとなっています。この結果からも、日本における高齢化社会の波が医療分野においてICT導入の理由の一つとなっていることは確かだといえます。

医療ICT導入によるメリット

ICTが医療現場に導入されることで未来の医療は変化していきます。この章では、ICTが医療現場に導入されることによるメリットを考えていきます。

先述したように、もともとは高齢化社会となっている日本において医療分野の課題を解決するためにICTが導入され始めました。ですので、課題解決という意味でのメリットは多いです。

例えば、総務省が挙げた「地域における医師の不足・偏在」という課題については「ネットワーク化による情報の共有・活用」という取り組みがなされています。この取り組みは、地域の病院や診療所をネットワークで繋いで患者さんの情報等を共有、活用するという取り組みです。

患者さんの情報をその地域における全ての医療機関で共有できるということは、今まで受診したことが無い患者さんが来院された場合、その情報共有データが閲覧できるということです。そうすることで、既往歴や今まで処方された薬も把握することができ、自分の専門ではない疾患等の場合には、他院と連携を取ることが可能となってきます。すると、その地域に対象とする医師がいなくともネットワーク化されることにより患者さんも病院を渡り歩くことなく住んでいる地域の診療所などを安心して受診することができます。これは医療費削減や医師不足、偏在の解決に繋がります。

次に「8K等高精細映像技術の医療応用」という取り組みがなされています。これは高精細映像データおよびAIを活用した診断システムの構築や、8K画像を用いた遠隔診療を可能にします。これにより対面していなくとも目の前で見ているような感覚で診察が可能となります。この取り組みの活用化が進めば、課題である医療機能の偏在や地域における医師不足・偏在を解決することが出来る可能性があります。

しかし、ICT化が進むことで失われることもあります。それは、直接人の手で触れて見て感じてコミュニュケーションを取りながら診察をする、という昔からの医師と患者さんのあり方です。確かに、高齢化社会を迎えた現代においては円滑に全ての人々に医療を提供するためにICTの導入は非常に有効です。しかし、顔を見て感情を感じて寄り添う医療のかたちをどう守るかが真の課題となってくるかもしれません。

まとめ:未来の医療を担う医療従事者として

ICT医療について、ITとの違いやメリットなどご説明してきましたがいかがでしたか? ICTは医療だけに限らず様々な分野で活用されています。人は昔から社会背景、時代変動に合わせてその時に必要なものを生み出してきました。1990年代に様々な仕事が増えた結果、仕事の効率を向上させるためにITを普及させました。その後、時代変化が更に進み高齢化社会となり、ITはICTと形を変化させ私たちの暮らしに浸透してきています。特に医療という分野は私たちと切っても切り離せないものであり、その大切な医療という分野でICT化が進むことは、様々な人に平等に医療技術、知識を提供するために非常に効果があるといえるでしょう。

しかしながら、ICT医療はまだまだ始まったばかりであり完全に浸透しているわけではありません。電子カルテが普及しても紙カルテを使用している病院や診療所もあります。医療事業者でも不明確なことが多いということは、診療を受ける一般市民にとってICT医療はさらに未知の世界といえるでしょう。現段階でICT医療は人や地域によって周知内容の格差があるのも事実です。そのため、未来の医療を担う医師や医療従事者は、どの地域でも同じようにICT医療が普及し一般市民にも理解していただけるように、国だけに頼ることなく率先してICT医療について学び、普及していない地域に出向いて市民に共有するといった行動や心持ちが必要です。その行動や心持ちが、ICT医療普及が必要とされるこれからの時代にとって、失われていくかもしれない人と人との繋がりを守る第一歩かもしれません。

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