1. 外科医が選ぶ45歳以降のキャリアパス 外科医のスキルを活かし、広範な活躍も

医師のための医療情報特報便

2018.10.05

外科医が選ぶ45歳以降のキャリアパス
外科医のスキルを活かし、広範な活躍も

将来的に外科医不足が懸念されている状況で、若手世代に関しては外科医の需要が安定的に見込まれていますが、年代によって一概にいえない側面があります。どのようなちがいがあるのかをみていきましょう。

外科医の場合、ベテランと呼ばれる40代後半以降になると、それまでのキャリアをそのまま踏襲することが難しくなってくるケースがあります。40代後半以降のキャリアの方向性をみてみると、大きく分けて3パターン考えられます。まず、現状の専門領域を継続する、次に、専門領域以外の外科全般や関連領域にフィールドを広げる、3つめに、内科やその他の領域にシフトチェンジする、という選択肢があります。それでは、それぞれの選択肢についてわかりやすく解説していきます。

専門領域の転職には年齢の壁が

専門領域を継続する場合のキャリアパス

まず、現状の専門領域を継続するケースについてみてみましょう。たとえば、急性期病院などで専門外科の一員として診療にあたり、オペや後進の指導を行うといった業務に就くこともあります。この場合、大学の医局を離れたとしても活躍するフィールドはかなり多岐にわたると考えられます。診療科によっても異なりますが、40代後半の年収はかなり高額になるので、医師としてのモチベーションを保つ観点からも一つの選択肢になるといえます。

年齢の壁を意識してキャリアプランを

上述の方向性で転職する場合、大きな制約となるのが年齢の壁です。40代後半になると、少なからず採用の間口が狭くなってしまうのが現状です。たとえば消化器外科の場合ではチームで治療にあたることが多いため、現部長より年上か近い年齢の医師を採用することが少ないようです。理由は、役職者より若くないとチーム内の(年功序列の)秩序が保てず、特にチームでオペをする診療科でその傾向が強いようです。一方、整形外科は1人、脳神経外科は最低2人いれば成立することから、これらの専門領域では採用の間口は比較的広い傾向にあります。ほかに、泌尿器科も1 人で診療が可能なことから年齢の制約がほとんどなく、部長などの役職につく可能性もあるようです。

以上のように診療科によっても異なりますが、総じて専門領域への転職は、40歳プラス1、2歳か、30代ならば好条件で採用される可能性が高いので、長期的に診療を続ける意志があるのなら、できるだけ早い段階で転職活動を開始するのが望ましいといえます。

外科医のスキルをいかして、診療の幅を広げる

さて、2つめの選択肢として挙げた、専門領域以外の外科全般や関連する領域に進む場合について考えてみましょう。地域医療に密着した急性期施設の外科では広範囲な外科疾患を扱う場合も多いので、診療の幅が広がります。専門領域でないとしても、医療機関から求められるスキルを積極的に身につけ、転職先に自らを合わせていくスタンスで臨めば、医療機関から歓迎され活躍の場も広がるでしょう。

緩和ケア病棟でがん治療の経験を発揮する

高齢化にともない、緩和ケア施設と同様にがん罹患率が増え続けています。過去にがん治療に携わってきた外科医であれば、緩和ケアにシフトする選択肢も有効です。手術した患者さんを最期まで看取ってこそ、がん医療が完結するというのが緩和ケアの根幹です。急性期医療とは別の、新たなモチベーションを創出する可能性も大いにあります。

実際に厚生労働省が、治療を終えたがん患者さんが自宅療養するための政策を進めていることとも相まって、地域の緩和ケアのニーズは高まり、緩和ケア病棟の新設や病棟転換をはかる病院も見受けられます。ただし、緩和ケアに従事する場合、施設によっても異なりますが、患者数自体が多くないうえにオペもないので、待遇面(年収)は一般外科よりも少し低い傾向にあります。

収入と貯蓄が比例しない現実

外科医にかぎらず医師の給料が高いのは周知の事実ですが、診療科によって差があります。現実問題として必ずしも収入と預貯金額の高さが比例しているとはいえません。生活レベルをあげれば支出がふえるのは当然ですし、それ以外にも研修や医師としてのスキルアップのための投資も必要経費です。診療科や働き方による個人差が大きいといえます。

開業のメリットと必要なスキルについて

開業に対する意識調査と実態

日本医師会の『開業動機に関する調査』によると、新規開業の平均年齢は41.3歳で、開業後年数が短いほど開業年齢が高くなっています。この結果から、病院等で一定期間のキャリアを経た後に開業しているケースが増えてきていると推察されます。開業動機に関しては、「自らの理想の医療を追求するため」がトップで42.4%でした。

一方で、病院勤務医時代の労働環境の厳しさを理由とした開業も多くみられ、「勤務医または研究者時代の精神的ストレスに疲弊したため」が21.0%、「勤務医または研究者時代の過重労働に疲弊したため」が18.6%と、約2割に達しました。中央社会保険医療協議会の調査等では、「病院勤務医の過重労働は深刻であり、現在の最優先課題が、病院勤務医の過重労働緩和であることは明らかである。そして、そのためには、十分なしっかりとした財源の手当てが必要である」としています。

開業のメリットは年収アップ

開業のメリットをピックアップすると、動機とリンクする点が多く「理想とする医療の実現」「医局などの外的要因に左右されない」「医療だけでなく、経営にやりがいを感じる」「収入のアップ」などが挙げられます。特に「収入アップ」は開業するうえで重要なポイントといえるでしょう。

勤務医と開業医の平均年収の差を年代別にみると、40代では勤務医が1,372万円、開業医が1,963万円、50代は1,356万円に対し1,900万円、60代では1,611万円に対して2,260万円という結果になりました。この結果からも、勤務医と開業医の年収の開きは500万円ほどあり、開業医の年収が高いことがみてとれます。

開業に必要なスキル

医院を開業するために最も必要なのは、あらゆる症例に一人で対応する医療スキルですが、もちろんそれだけでは開業を成功させることはできません。医師としてオールラウンドのスキルを身につけたうえで、経営手腕および集客力をあげるための地域社会とのコミュニケーション力、スタッフの募集といったトータルな能力も必要とされています。

勤務医は医療機関全体の方針に従い業務をこなすことが評価・キャリアにつながりますが、開業医の場合は全てを自身の方針で定めアクションを起こす必要があります。また医療技術面だけでなく、開業を成功させるためには経営手腕も必要です。開業医として成功するためには以下の能力が必要といえます。

  • オールラウンドな医療技術
  • コミュニケーション力
  • コンサルティング力
  • マーケティング力

以上はごく一部ですが、開業医として成功するには多くの知識・スキルと多大な資金が必要であり、長い準備期間をかけて実行する必要があります。医師としてのスキルは高いにこしたことはありませんが、それ以外の諸条件を検討したうえで、ご自身に合ったキャリアパスを見つけましょう。

まとめ

外科医のキャリアプランを考えるうえで、安定性や収入面以外にも、就業条件や働き方および将来設計を視野に入れながら、各人にとって理想的な方向性をみつけステップアップし準備することが望ましいといえます。外科医としてのスキルを積むことは不可欠ですが、実態を把握したうえで、長期的な視野でキャリアパスを築いていくことも非常に大切です。

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