1. MRIを用いた全身のがん検診法―DWIBS検査 PET-CT検査との比較で徹底検証

医師のための医療情報特報便

2018.09.28

MRIを用いた全身のがん検診法―DWIBS検査
PET-CT検査との比較で徹底検証

近年、医療業界で注目を集めているDWIBS(ドウイブス)検査は、MRIを用いた全身のがん検診法で、PET-CT(陽電子放射断層撮影)とほとんど同じような画像が得られます。DWIBS検査の最大の利点は被ばくしないこと。検査のたびにレントゲンやCTと、とにかく被ばく量が増えることに危機感を抱いている患者さんにとっては大いなる朗報といえるでしょう。

今回は、画期的といわれているDWIBS検査をPET-CTと比較し、類似点・相違点を診療領域、得手・不得手から徹底分析していきます。

DWIBS法は、2004年に日本の高原太郎医師により考案され、現在までに1000回以上の引用をされているMRIの手法です 1.2)。

  • 1) Takahara T, et al. Diffusion weighted whole body imaging with background body signal suppression (DWIBS): technical improvement using free breathing, STIR and high resolution 3D display. Radiat Med. 2004 Jul-Aug;22(4):275-82
  • 2) Kwee TC, Takahara T, et al. Diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression (DWIBS): features and potential applications in oncology. Eur Radiol. 2008 Sep;18(9):1937-52.

画期的なDWIBSの強みと弱み

DWIBSは、Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background Suppression(背景抑制広範囲拡散強調画像)の略です。拡散強調画像は、超急性期の脳梗塞の診断する場合に効力を発揮すると同時に、がん組織の病変部を検出することを可能にしました。

DWIBS検査のメカニズム

DWIBS検査では、がん細胞が急速に増殖することで、周囲の水分子が動きやすい正常組織と比べて、水分子が動きづらい状態となることを利用して、病変部を検出します。また、背景部の脂肪組織を抑制することによって、病変部が浮き上がって見えるような画像となります。

DWIBS検査の強み

PET-CT検査と比較してDWIBS検査の利点は、①被ばくがない、②検査費用が安価、③食事制限の必要がない、④注射が不要、⑤糖尿病で血糖値が高くても受けられること、などがあります。これだけ聞くと画期的で素晴らしい検査のように思えますが、実はDWIBS検査には弱点もあります。

DWIBS検査の弱み

DWIBS検査の弱点として、PET-CT検査と原理が異なることから、PET-CT検査で病変が写ってもDWIBS検査では写らない場合があります。特に肺や心臓周囲の病変検出が苦手とされているほか、MRIに対応していないタイプのペースメーカーなどを埋め込んでいる方は行えないという欠点なども挙げられます。 しかし、DWIBS検査の検診としてのエビデンスは蓄積中ですが、すでに多くの施設で実施され実際にがんの診断や治療効果の判定方法として活用されているのもまた事実です。

もっとDWIBS検査に詳しくなる

DWIBS検査とは前述したとおり、背景抑制広範囲拡散強調画像の撮像法で、最大の特長は、がん特有である細胞密度の増加に伴う水分子の拡散抑制を検出できる点です。ここでは、この画期的なDWIBS検査における実際の検査方法や手順などをみてみましょう。

検査時間はどの程度かかるのか

検査時間は30分程度で通常のMRI検査より少し長めですが、MRIを受けることが可能な方は誰でも受けられるというのも利点の1つです。ただし、30分間安静を保てない方や閉所恐怖症である方、MRIに対応していないタイプのペースメーカーなどを使用している方は検査ができません。
最近ではMRIが受けられるペースメーカーも開発されていますので、それ以外の注意事項を含めて、MRI検査が可能かどうか当日医師による問診を行います。

人間ドックでも受けられるのか

DWIBS検査は現段階でどこの病院でも受けられるというわけではないので、事前の確認が必要です。また、人間ドックでも最新の機器がないところでは検査ができません。以前の装置は倍以上の時間がかかったため、人間ドックのように限られた時間で検査を行う場合では受けることができませんでした。しかしMRI装置の進歩により、最新機種では30分程度で検査が受けられるようになりました。

DWIBS検査ですべてのがんを発見可能か

DWIBS検査で発見された病変が全てがんというわけではありません。がんだけに反応するわけではなく、脾臓、精巣、卵巣などの正常組織や、炎症なども感知して検出されます。DWIBS検査で異常を発見しても、他の検査で正常と診断されることも多々あるため、他の検査結果と総合してがんか否かを判断します。ですので、検出された病変であっても精密検査を行なう、または経過観察するといった対応になる場合があります。

徹底比較―DWIBS検査とPET-CT検査

今までは病変部が光って抽出され、なおかつ全身を検査することができるのはPET-CT検査に限られていました。しかし、PET-CT検査がブドウ糖代謝の亢進により病変を検出するのに対して、DWIBS検査では細胞の密集度の亢進により病変が光って検出することを可能にしました。
ですから、ブドウ糖代謝が亢進しないタイプのがんはPET-CT検査では検出できず、細胞の密集度の低いがんはDWIBS検査で検出しにくいといえます。

得意領域と不得意領域

PET-CT検査が不向きなのは、胃がん、大腸がん、肝がん、腎がん・尿管がん・前立腺がん等の尿路系がんの診断です。一方、DWIBS検査は胃がんや大腸がんの検出に不向きなのは同じですが、腎がん・尿管がん・前立腺がん等の尿路系がんの診断には適しています。
ただし、DWIBS検査もPET-CT検査も小さい病変の検出は難しいようです。いずれの検査においても、炎症等がん以外の病変も検出されることがあるのが通常で、発見された病変がすべてがんというわけではなく、検出された病変は改めて精査されることになります。

それぞれにメリット・デメリットも

PET-CT検査とDWIBS検査を比較すると、どちらの検査にもメリットとデメリットがあります。PET-CT検査の最大のメリットは、歴史があるだけに豊富なエビデンスを有し、各種診療ガイドラインに掲載され、かつ推奨されているということです。
一方で、DWIBS検査とPET-CT検査が同じ条件下で行われた症例をみる限りでは、両検査の診断の精度はほぼ同程度という結果もでています。いろいろな医療機関の医師たちも、DWIBS検査とPET-CT検査の診断精度は同程度であるとの見解を示していることから、検査を受ける際にそれぞれのメリット・デメリットを確認したうえで選択するのがよいのではないでしょうか。

2つの検査を詳しく比較してみると

  • 放射線被ばくは、DWIBS検査(以下D):なし、PET-CT検査(以下P):あり(PETとCTで二重被ばく)
  • 注射は、D:なし、P:あり(注射後1~2時間の安静が必要)
  • 検査時間は、D:30分~40分、P: 30分~40分(延長する可能性が高く、検査後約30分待機)
  • 在院時間(受付~会計)は、D:1.5時間程度、P:3時間程度
  • 検査前食事制限は、D:不要、P:必要(6時間)
  • 検査料金は、DはPの1/3ほどで受けられる。

禁忌と不得意領域での差異

  • 糖尿病患者は、D:検査可、P :検査できない場合がある
  • 禁忌別にみると、D:MRI禁忌患者は不可、P :生理的集積による診断(尿路系がん:腎がん、尿管がん、前立腺がん、膀胱がんなど)の障害がある人は不可
  • 診断精度を領域的にみると、D:腸管腸間膜病変と肺結節は不得意、P:腸管病変と肝がんは不得意
  • DWIBS検査は、上記のほかに人工内耳・人工中耳、内視鏡クリップ、刺青・アートメイク、磁石式義歯、整形外科体内インプラント、心臓人工弁・胸骨ワイヤ、歯科用インプラント、ステント・血管内フィルタなどを装着している方の場合は、検査が可能かを事前に医師へ確認する必要があります。

被ばくしないDWIBS検査なら繰り返し撮影可能

課題点もありますが、DWIBS検査の最大の利点は被ばくしないこと、侵襲がないということが挙げられます。病状が進行している患者さんにとって、頻回に造影剤を投与してCT検査を行うのは身体的な負担が非常に大きいものです。DWIBS検査と併用し、CT検査の回数を減らすことができれば患者さんの負担も軽減できるというメリットがあります。
また、身体的な負担だけでなく費用が抑えられることもメリットのひとつといえます。DWIBS検査はPET-CT検査のおよそ1/3弱と非常に安価で、保険上の制約もあまりないため毎月撮影することも可能です。上手に活用して病変を早期の段階で発見して診断、またその進行度を管理するのに最適な検査法として、実施している医療機関は確実に増加しています。

まとめ

話題のDWIBS検査はMRIを用いた全身のがん検診法で、被ばくしないという最大の利点と、事前準備も不要で比較的リーズナブルに受診できる画期的な検査法です。一方で、禁忌の方や苦手な領域もあるので、受ける前には確認が必要です。医師側はPET-CT検査などと比較検討したうえで、患者さんに最も適した検査方法を選択する必要がありますし、患者さんは医師から十分な説明を受けてから決定することが大切です。

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