1. 地域包括ケア病棟の担う役割 地域医療に必要な医師の要素

医師のための医療情報特報便

2018.09.21

地域包括ケア病棟の担う役割
地域医療に必要な医師の要素

診療報酬改定は医師に限らず他の医療職、地域住民たちに様々な影響を与えます。平成30年の今年、実施された診療報酬改定の内容はご存知かと思いますが、その内容は医師に限らず様々な方々に影響を与えるものになったと言えます。

診療報酬改定の中に医師に関連する医科という項目があります。その項目を紐解くと、診療報酬改定概要Ⅰ「地域包括化システムの構築と医療機関の分化・強化、連携の推進」の中に「1.医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」というものがあります。

その内容は「地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟」などの一般病棟入院基本料や評価体系の見直しなどです。では、具体的にどのような病棟が今後求められるのかを把握しながら、医師としての方向性も考えていきます。

回復期リハビリテーション病棟について

病棟には一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟があります。2014年に地域包括ケア病棟が新設されるまでは、入院先の急性期病院における一般病棟にて急性期一般入院を経て急性期治療を終えた後に、容態が安定するまで回復期リハビリテーション病棟やそれが可能な病院に移りリハビリテーションなどを実施して療養病棟のある病院へ転院するか自宅復帰を迎えることが一般的でした。

しかしながら、2014年に地域包括ケア病棟が新設されてからはその流れが変化しつつあります。その流れを知る前に、まずは回復期リハビリテーション病棟の役割について再度把握しておく必要があります。

回復期リハビリテーション病棟における入院対象の条件は厚生労働省が定めており、入院する為には専門の医師による判断が必要となります。対象となるのは疾患の発症から最長で2ヵ月以内の患者さんで、対象疾患ごとに定められた期間(およそ1~2ヵ月以内)での転院が必要となります。

例えば、脳血管疾患や脊髄損傷などは発症から2ヵ月以内の転院が必要で、最大入院期間は180日となります。骨折など整形外科的疾患の場合は、発症から1ヵ月以内に転院する必要があり、最大90日の入院期間が定められています。しかしこの期間は一概にこの通りではなく疾患や状態により異なるため注意が必要です。

急性期治療を終えた後には決められた期日内に転院しなければならないため、リハビリに留意している医師や看護師、または連携室がある病院であれば相談した後スムーズに回復期リハビリテーション病院、病棟へ移ることが可能となります。

回復期リハビリテーション病棟では、厚生労働省が認めた1日6~9単位(20分1単位)までのリハビリテーションを受けることが可能であり、次のステップに向けて身体状況に合わせて短時間から長時間のリハビリが調整可能であることも大きな特徴になります。

一方、全身状態にもよりますが急性期病棟から回復期リハビリテーション病棟に移らず、何らかの事情により退院せざるを得ない場合もあります。その場合は、大体が自宅近くにあるクリニックでリハビリテーションを受けることになります。

しかし、学業や仕事に際して安静などを守れず、自分自身の状態把握が出来ずに無理をして再入院となることが多いのも現状です。

それに対して回復期リハビリテーション病棟が存在する入院型施設などに移ることが出来れば、起床から就寝時まで1日の流れを見て必要なADL(日常生活動作)に合わせたリハビリテーションを受けることが可能になります。また、自宅訪問によって家屋状況を把握して退院に備えていくことができるなどのメリットもあります。

地域包括ケア病棟の役割

2014年に新設された地域包括ケア病棟ですが、回復期リハビリテーション病棟とは一体何が違うのでしょうか。一見同じように思える病棟ですが、まずは入院料に違いがあります。回復期リハビリテーション病棟は出来高払いなのに対して、地域包括ケア病棟は包括払いになります。

従って出来高払いの回復期リハビリテーション病棟の方がリハビリを長時間実施した場合に収益が多くなります。

では、なぜ今地域包括ケア病棟が増えているのでしょうか。それは地域包括ケア病棟が主に3つの役割を担えるからです。まず1つ目は、急性期からのリハビリの受け入れ(ポストアキュート)、2つ目は、地域における在宅生活者が入院する必要性が出た場合の受け入れ(サブアキュート)、3つ目はそれらの在宅復帰支援という役割です。

回復期リハビリテーション病棟に行くまでも無いもののリハビリテーションが必要な場合や、在宅復帰における支援が必要な場合には、地域包括ケア病棟があればそちらに入院することで円滑な支援が受けられます。

時代の変化に応じて医師に求められるもの

現在、診療報酬改定により様々な急性期病院や中小病院が、その病棟の一部を地域包括ケア病棟に移行しています。しかしながら病院内に地域包括ケア病棟が新設されたからと言って、そこに勤務する医師やスタッフ達が地域包括ケア病棟の役割を正確に認識しなければ、運営して行くことは難しいでしょう。

地域包括ケア病棟に求められることは多く、特にスタッフ間の連携は何よりも欠かせません。在宅からの入院受け入れに加え、回復期リハビリテーション病棟に比べて入院期間も短いため、退院に向けて相談が出来る経験豊富なMSW(医療ソーシャルワーカー)の存在や、少ない人数であっても地域包括ケア病棟に必要な単位をこなしていけるリハビリスタッフの確保が重視されます。

その中で医師に求められるものは、地域包括ケア病棟を患者さんの病院から家への復帰をつなぐ場所と捉え、総合的に診療出来る能力です。現在、病棟の一部を地域包括ケア病棟へ移行している急性期病院は多数ありますが、急性期病院における7対1の体制に慣れている医師が、急に包括的な考えを持ち対応出来るかは疑問視されます。

そのため、地域包括ケア病棟を導入した病院に勤務している医師や、これから地域包括ケア病棟がある病院に勤務しようとしている医師に関しては、それなりの知識と経験が求められるでしょう。自分の専門分野にかかわらず、総合診療科医という考え方(立場)で、主に地域包括ケア病棟を利用する高齢者に対して身体面だけでなく、心理面、社会環境、価値観などを総合的にみていくことの出来る力が必要です。

例えば、内科的な疾患が克服できそうな患者さんがいたとしても、自宅復帰するにあたり「認知症の有無はどうなのか」「それにより自宅ではヘルパーや訪問看護などが必要なのか」ということまで考えていく必要があります。そのため、これからそのような場を舞台に医師としての方向性を考えている方は地域医療を学び、一人ひとりを総合的に診察することの出来る職場での経験が求められるかもしれません。

今取り組むべきことを整理する

平成30年に実施された診療報酬改定では非常に多くのことが見直されました。その中でもっとも興味深いのは、やはり地域包括ケア病棟に関連される「地域医療」が今後重要な役割を担っていくということではないでしょうか。

超高齢化社会を迎え変革が起きていく中で、現在勤務している病院においても病棟の移行、再編が行われている所も多いと思います。今出来ることは診療報酬改定の内容をしっかりと理解すること、そして地域包括ケア病棟が今後重要な役割を担うと考え、自分が働く病院の特性や地域包括ケア病棟で働く上で自身に足りない知識や経験を整理して把握していくことが重要です。

整理が終わり現状把握をした上で現在勤務している場所で学ぶことが困難であれば、足りない知識・経験を求め新たな職場を模索していくのも、長い目でみるこれからの働き方かもしれません。

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