1. 医療業界が向かう方向性 診療報酬改定から紐解く医療者の未来

医師のための医療情報特報便

2018.09.14

医療業界が向かう方向性
診療報酬改定から紐解く医療者の未来

今、医療業界はどのような方向に向かっているのか。医師に限らず医療資格者、それに携わる医療機器や医薬品関連の方々もその動向について気になるかと思います。今回は医療業界全体の中でも厚生労働省が「厚生労働白書」の中で報告している高齢者の状況や、平成30年度の診療報酬改定の内容から医療業界の今後を紐解いていきます。

これからの社会

厚生労働省は「厚生労働白書」の中で「我が国の高齢者を取り巻く状況」という内容で今後の人口増減や高齢者の事などを報告しています。

ご存知の方も多いと思いますが現在人口は減少しています。総人口の推移は平成20年にピークとなり、その後減少の一途を辿っています。年少人口(14歳以下)、生産年齢人口(15~64歳)に関しても減少しており、減少は2060年まで続くといわれています。しかし、人口が減少しているにも関わらず高くなっている割合があります。それは高齢化率(65歳以上人口割合)です。市町村ごとに違いはありますが2060年には約2.5人に1人が高齢者になるといわれています。

この超高齢化社会で問題となるのが医療費ですが、現在1年間あたりの医療費は65歳以下で184,900円、65歳以上では741,900円と言われており、およそ5倍の費用となっています。そのため、現代においては医療業界の需要は益々増えていくことでしょう。これから先、社会の変化に合わせてどのような社会モデルを作っていくかということが、多種多様な取り組みが既に実施され始めている医療業界を牽引するための鍵となってきます。

平成30年診療報酬改定から読み解く医療業界

平成30年に行われた診療報酬改定ではこうした高齢化社会の中で、「地域包括ケアシステム構築」を進めていこうという事が書かれています。地域包括ケアシステムは定義があるものではなく、その地域ごとに今どのような連携が医療福祉と住民の間に必要かを協議の上、自分たちで形作るものです。しかし、決まった形があるわけではないので、やらなければならない事がわかっていても難しく感じてしまうかもしれません。しかし、今後の高齢者増加や診療報酬改定の中に盛り込まれ始めた「地域で医療を提供することの重要性」などを考えると、これから先医療業界は地域に活動の主軸を置く時代になると考えられます。

では、具体的に医療業界が地域活動をするとして、どのような視野を持ち活動すればよいのか。そのキーワードは平成30年度診療報酬改定の中の「地域包括ケアシステム構築」の内容として4つほど提示されています。

  1. 国民の希望に応じた看取りの推進
  2. 訪問診療の主治医とケアマネージャーの連携強化
  3. 介護医療院・有床地域包括ケアモデルへの対応
  4. リハビリテーションにおける医療介護連携の推進

このように、国は医療業界全体として医療と介護の連携を推進しています。こうした診療報酬改定の動きから、今後医療業界は病院や施設で患者さんを診るという時代から、地域で介護福祉業界と連携しながら新しい取り組みを実施していく時代に変わっていくでしょう。

また、こうした地域への参画を国が推し進める中、既存の病院のあり方にも変化がみられます。それは病棟の変化です。今までは在宅復帰後の日常生活に不安が残る場合、退院後に通院するか回復期リハビリテーション病棟へ移り、リハビリテーションを実施した後に退院するか療養病棟に移動するかの選択肢が一般的でした。しかし、地域で暮らす高齢者が多くなった現代においては、入院した場合退院に少しでも不安が残る場合や、元々在宅であったが少しの期間入院が必要になった場合などの受け皿確保が問題視されていました。

また高齢者などが長期間のリハビリテーションを必要とした場合、出来高払いである回復期リハビリテーション病棟にしか移動出来ないとなると、高齢化社会である今日の我が国にとっては医療費高騰の原因にも繋がっていました。  しかし、国が地域で医療を提供する方向性を打ち出した後、2014年に新設された「地域包括ケア病棟」により、この問題は解決の糸口を見出しつつあります。

地域包括ケア病棟とは、その名の通り「地域完結型」の医療提供を目指すための病棟です。回復期リハビリテーション病棟との主な違いは「入院出来る日数は短いが急性期病院から退院まで少しのリハビリテーションが必要な患者さんの受け入れが可能になる」「在宅からの受け入れが可能になる」「入院して退院するにあたり専門相談員が退院後のヘルパー、訪問看護まで考慮した上で地域と連携してくれる」そして「診療報酬が包括払いである」ことなどが挙げられます。医療業界全体が国の方針も踏まえて地域への参入を目指す今、医師や医療従事者達は何をすべきかを模索していかなくてはいけません。

新しい医療の形

「地域包括ケアシステム構築」や「地域包括ケア病棟」という新しい形の出現にともない、「地域に根ざした医療提供」という目線が医療資格者、医療機器メーカー、医薬品業界それぞれに必要だという事がわかりました。

では、その中で医師としての新しい医療の形を考えてみましょう。地域での医療提供と言われたら、まず「開業医」が頭に思い浮かぶかもしれません。しかし、果たして開業医だけに頼れば地域医療は成り立つのでしょうか。その答えは前述していたように医療だけでなく介護との連携がキーワードになります。開業医だけに地域包括ケアを含む新しい医療の形を期待する事は大きな負担となり得ます。開業医だけに頼らず、その地域で既に住民と連携している介護福祉業界の方々を巻き込む必要があるでしょう。 また、医療・福祉の連携だけでなく地域包括ケアの構築を新しい医療の形と捉えるなら、地域に住む一般の方々を巻き込んで、今地域に医療福祉のコンテンツとして何が必要なのかをともに模索・構築していく事が大切になってきます。

現代を生きる医師、医療従事者として

病気を治す事が困難だった時代から月日は経ち、平均寿命が延びて健康寿命をどう生きていくかが考えられるようになった現代。これからの医療業界を考えたときに国も地域医療の重要性を訴える時代となりました。

これからの医療業界や地域医療について考える上で、国が報告したものの中に興味深いデータがあります。2014年に内閣府が報告した「高齢者の自分が最期を迎えたい場所」では、半数以上の54.6%の高齢者が「自宅」と答えています。それに対して厚生労働省の人口動態調査によると実際に亡くなった場所で一番多いのは「病院」であり、「自宅」は12.4%でした。

今を生きる高齢者も自宅、すなわち現在住んでいる地域で最期を迎えたいと考えている事がわかります。しかし、その意思と反して病院や施設で亡くなる方が多いのが現状です。終末期医療に関する調査等報告書の中で、高齢者本人や家族の多くは、自宅で暮らす事が出来ない理由を「介護してくれる家族に負担がかかる」、「症状が急変した場合の対応に不安がある」と回答していることが分かっています。

では、これらの現状を踏まえて開業医に限らず病院に勤務する医師や医療資格者が地域に出る機会を増やした場合はどうでしょうか。家族だけでは支えられない現状や、急変時の対処の仕方などが分かるのではないでしょうか。そうした地域住民へのサポートが、これから医療業界が変革を迎える中で、現代を生きる医師や医療資格者に必要な取り組みなのかもしれません。

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