1. 今後のキャリアに関係する?いまさら聞けない「病床再編」(2/3)

今後のキャリアに関係する?いまさら聞けない「病床再編」(2/3)

「病床再編」って聞いたことあるけれど…
医療費削減に向けた政策として2012年2月に閣議決定された「病床再編」。2025年に向け、医療提供体制を見直すこの政策は、医師にとっても患者さんにとっても大きな転換期になると言われています。
しかし、「病床再編」とはどのようなものなのか、誰にどんな影響があるのか、あまり認知されていないのが実情かもしれません。「病床再編」という言葉は耳にしたことがあるけれど、この政策が進むとどうなるのか、疑問を抱いている医師も多いと思います。
今回は、現場で働く医師に「病床再編」に関しての疑問質問をヒアリングし、それについて回答していきます。

勤務医にとって「病床再編」が進むメリット・デメリットとは?

急性期だけを診療したい医師にとっては、現在勤める病院が、今の「7対1」でのままいられるかどうかの見極めが必要になってきます。
救急車を受け入れ、具合の悪くなった患者さんをすぐに手術をしたり、治療をスタートしたりできる体制がきちんと整っている病院であれば「7対1」の病院として残れる可能性は高いと言えます。逆に、手術をあまり行っておらず、重症な患者さんを受け入れていない場合、または手術が全くできていない場合などは「7対1」のまま残ることは難しいかと思われます。

転職を考える時も、転職先の病院が本当に「7対1」なのかを見極めることが重要です。
例えば、「7対1」で手術などもきちんと行っており、救急を受け付けている病院であれば、臨床の経験を積みたい方にとっては良い病院という見方が出来ます。しかし、診療点数を取りたいがために「7対1」の病院として申告し、実際は患者さん7人に対して看護師1人を配置できていない病院、ぎりぎりの体制で重症の患者さんを受け入れている病院もあります。また、なんとか「7対1」で運営している病院は、医師・看護師にとっても働く環境として問題があり、良質な医療を提供できているか疑問ですし、患者さんにとっても不安要素になると思われます。

本当に、「7対1」で運営しているかどうかを見極めるポイントは、「看護重要度」の高い患者さんがどのくらいおり、毎月どのように数が推移しているかを面接時に確認すると良いかもしれません。また、来年春の診療報酬改定で、厚生労働省はこれまで評価項目であった「A項目」「B項目」のほかに「M項目」を新設しました。「M項目」とは、2015年に厚生労働省が発表した「重症度・医療・看護必要度」の見直しのために追加された新しい項目で、①開胸・開頭手術、②開腹・骨の観血的手術、③胸腔鏡・腹腔鏡手術、④その他の全身麻酔手術、この4項目を追加することで現在の基準では判断しにくい手術直後の患者さんの状況を評価します。

 「M項目」が追加になったことで、転職希望の外科医の先生にとっては病院選びの判断基準が増え、転職先を見極めやすくなりますが、内科医の先生にとっては変わらず評価基準が曖昧なため、転職時のメリットはあまりないかもしれません。医療法人であれば理事長、公立病院であれば院長が掲げる治療方針を見て決めるケースが多いでしょうが、どんな価値観で病院を経営しているか、というところで判断するしかないかもしれません。

一般病棟における重症度、医療・看護必要度の見直しの考え方
A モニタリング及び処置等0点1点2点
1 創傷処置
(①創傷の処置(褥瘡の処置を除く)、②褥瘡の処置)
なしあり-
2 呼吸ケア(喀痰吸引の場合を除く)なしあり-
3 点滴ライン同時3本以上なしあり-
4 心電図モニターの管理なしあり-
5 シリンジポンプの管理なしあり-
6 輸血や血液製剤の管理なしあり-
7 専門的な治療・処置
(① 抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)、
② 抗悪性腫瘍剤の内服の管理、
③ 麻薬注射薬の使用(注射剤のみ)、
④ 麻薬の内服・貼付、
⑤ 放射線治療、
⑥ 免疫抑制剤の管理、
⑦ 昇圧剤の使用(注射剤のみ)、
⑧ 抗不整脈剤の使用(注射剤のみ)、
⑨ 抗血栓塞栓薬の持続点滴の使用、
⑩ ドレナージの管理)
-あり
 ⑪無菌治療室での治療なし-あり
8 救急搬送(搬送日より1~2日間程度)なし-あり
B 患者さんの状態等0点1点2点
1 寝返りできる何かにつかまればできるできない
2 危険行動ない-ある
3 診療・療養上の指示が通じるないいいえ-
4 移乗できる見守り・一部介助が必要できない
5 口腔清潔できるできない-
6 食事摂取介助なし一部介助全介助
7 衣服の脱着介助なし一部介助全介助
M 手術等の医学的状況0点1点
①開胸・開頭の手術(術当日より5~7日間程度)
②開腹・骨の観血的手術(術当日より3~5日間程度)
③胸腔鏡・腹腔鏡手術(術当日より2~3日間程度)
④その他の全身麻酔の手術(術当日より1~3日間程度)
なしあり

重症者の定義

ポイント
  • 本当に「7対1」の病院として機能しているかどうかの見極めが必要
  • 「手術症例数」と「重症患者割合」に特に注目する
  • 外科医にとっては見極めやすくなるが、内科医にとっては判断基準が依然曖昧

患者さんにとって「病床再編」が進むメリット・デメリットとは?

診療・治療にかかる自己負担費用が安くなりますので、「7対1」以外の病院が増えることは患者さん側にとってはメリットと考えられます。また、どこの病院に行けば受けたい治療・望む医療を受けられるのかが分かりやすくなります。例えば、膝の痛みをスポーツ整形外科などで早く治してしまいたい場合は、急性期で対応してくれる病院を探せば良いですし、長期に渡ってゆったりと治療をしたい場合は、回復期に対応してくれる病院を探せば良いということになります。高齢者に多いですが、長期入院が必要な場合、どの病院に行けば良いのかなども分かりやすくなります。

ただし、医療費削減という観点から、長期入院を受け入れる病院に対して厚生労働省はあまり良い見方をしていません。高度急性期の病院はコストがかかるので、「リハビリや介護施設など回復期の患者さんを受け入れる施設を充実させた方が良い」と考えています。ただ実際は、介護施設は医師の手間がかからない分コストは抑えられますが、高齢者が増えたことで入所者は増え、思うように費用を抑えることができません。

そのような事情から、次のステップとして「在宅医療」を推進する動きも出て来ていますが、現実的には核家族化が進み、自宅で介護できる家族がいないケースが多く、在宅医療も思うようには進みません。在宅診療の診療報酬点数は高く設定されていますが、医師だけもしくは看護師と同行したとしても2名体制で訪問し、機材なども無い中で診察することになるので、医師としてはリスクを感じる人もいるようです。

ポイント
  • 患者さんの立場からは、自己負担費用が安くなり、望む医療が受けやすくなるのでメリットがある
  • 厚生労働省は長期入院の場合、在宅医療でケアしたいと考えている
  • 在宅医療に不安を感じる医師も多く、思うように進んでいない