- 精神疾患の患者数は300万人を超え、専門医のニーズは増加の一途をたどる
- 統合失調症や気分障害(うつ病・双極性障害)・てんかん・摂食障害・認知症などの精神疾患を扱う精神科。患者数は約300万人以上と増加傾向にあり、また、これらの精神疾患は投薬治療だけではなく、患者さん一人ひとりに対する精神的なケアが必要なため診療時間が長くなるということもあり、全国的に人手不足な状況にあります。
厚生労働省『必要医師数実態調査』をみても、現員医師数が一般内科・一般外科・整形外科の次に多いにもかかわらず全国的に求人があるように、慢性的な人手不足の状態が見受けられ、さらには、近年にわかに注目を集めるようになった、性同一性障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、さらには司法における精神鑑定なども精神科医の領域であることから、今後ますます需要が高まることが予想されます。
このような現状から、他科医師向けの研修プログラムや、年々増え続けている子供の精神疾患を専門とした児童精神科医の育成プログラムなどを実施している病院も増えてきていますので、他科に比べて自分に合った転職先を探しやすい環境といえるかもしれません。
厚生労働省による「平成24年(2012年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」の調査結果では、平成24年12月31日時点における医療施設に従事する精神科医師数は14,733人となっています。
これは全医療施設従事医師数の5.1%を占め、平均年齢は50.4歳となっています。平成20年の同様の調査では全医療施設従事精神科医師数13,534人。全医師数の5.0%を占め、平均年齢は49.3歳でしたから、この4年間で医療施設に従事する精神科医師は約1200人増え、平均年齢の上昇にも一応の歯止めがかかっているようです。一方で、多くの病院・クリニックで引き続き活発な求人活動が行われているといえます。2011年、厚生労働省は急増するうつ病などの精神疾患を、従来のがん・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病の「4大疾病」にくわえて「5大疾病」とする医療政策の基本指針をまとめました。厚生労働省がまとめた2009年時点のデータによれば、がん患者数およそ152万人、糖尿病患者数およそ237万人に対し精神疾患患者数はおよそ323万人となっています。精神疾患患者数はここ10年で1.5倍にも急増しており、年間3万人前後で推移している自殺者の9割にも何らかの心疾患があるものと考えられています。
近年、うつまたは精神疾患に対して社会の啓蒙も進み、以前に比べてメンタルクリニックや心療内科を含め、精神科に関連する医療機関を訪れることに抵抗の少ない患者さんも増えてきました。精神科病院の他にも入院施設を持たないメンタルクリニック、投薬よりカウンセリングを中心とした施設など精神科医療機関にも多様化がみられ、病院勤務の精神科医と診療所勤務の精神科医とでは増加率にも差がみられなくなっています。
メンタルヘルスの問題が社会や経済に与える影響は大きく、社会問題視されるまでになってきた昨今、精神科医の重要性や必要性に今後さらに大きな注目が集まるのではないでしょうか。また求人案件の内容をみても、精神科医の活躍の場や働き方の多様性についても広がりが見受けられます。
精神科の現員医師数は平成22年9月29日時点で10,843人、必要求人医師数は935人で、現員医師数と必要求人医師数の合計は現員医師数の1.09倍です。また現在は求人募集をしていませんが、医療機関が潜在的に必要とする必要非求人医師数を含めた場合、必要医師数は1,200人となり、現員医師数と必要医師数の合計は現員医師数の1.11倍です(厚生労働省 平成22年「病院等における必要医師数実態調査の概要」より)。現員医師数に対する必要医師数の倍率(全診療科平均)が1.14倍であることをふまえても、まだまだ転職のチャンスが多い分野だといえます。
現状、日本は欧米諸国よりも精神医療が遅れており、行政機関を筆頭に精神医療の啓もう活動が行われています。うつ病の認知度向上をはじめとして、いじめ問題を代表とする学校精神保健や自殺対策、地域住民のメンタルヘルス問題など、活躍の場はますます広がるでしょう。常勤・非常勤ともに求人募集が活発に行われているのも魅力です。