- 需要が急増する一方で有資格者は少なく、キャリアアップ支援も充実
- 放射線科領域における医療技術や治療の急速な進化に伴い、従来のX線やCT・MRIなどの画像診断に留まらず、画像診断技術を応用した外科的治療(IVR)、高エネルギー放射線を腫瘍に照射する放射線治療、ラジオアイソトープを使った核医学治療といった先端医療現場においても中心的な役割を担うようになってきた放射線科。
厚生労働省『必要医師数実態調査』によると、放射線科に従事する医師のうち約20%が短時間雇用や非常勤である半面、求人数では圧倒的に常勤医師が多いという現状にあり、とくに、IVRや放射線治療・核医学治療を担当する放射線治療専門医の需要が急増しています。
しかし、全国に約6,300人いる放射線科専門医のうち、放射線治療専門医の資格を有している医師はわずか16%程度と非常に少ないことから、放射線治療専門医の育成・確保が急務となっており、転科を希望する医師やキャリアアップを目指す医師を対象とした研修プログラムを実施している病院も少なくありません。転職を機に、先端医療に深く関わる放射線科でキャリアアップを目指すのもよいかもしれません。
放射線科医はレントゲン写真やCT、MRI、核医学検査で撮影された写真を読影し診断する放射線診断医(画像診断医)と、放射線を使ってがんなどの治療を行う放射線治療医に分けられます。近年は高度先端医療の現場においても放射線治療医の不足が叫ばれていますが、一般医療現場における放射線診断医の不足も深刻な問題になっています。
今後は医療のQOLが大きな課題として掲げられ、治療法も選択肢が多彩になってきています。そのうち、どの治療法がこの患者さんにとって最適であるかを的確に診断するためにも放射線診断医の重要度はさらに増してきており、それが求人案件の増加にも反映されています。
放射線科医が不足する大きな原因として、CTやMRIといった検査機器の普及と性能の向上が挙げられます。日本には全世界の約1/3のCTが集中しているといわれますが、これはMRIなど他の先端検査機器においても同様の傾向があり、多くの人が高度な医療検査を受けられる体制が整っています。また検査機器の性能も大幅に向上し、短時間で多くの患者さんの撮影を行うことができるようになり、また詳細な病状を知るために多くの枚数の検査撮影が行われるようにもなりました。
これらの検査機器によって得られた画像から正確な診断を行うためには放射線科医の存在が欠かせませんから、単純計算でも画像数の増加に比例して放射線科医も増員が必要となります。
しかし厚生労働省の調査(医師・歯科医師・薬剤師調査の概況)によれば、平成20年から平成24年にかけて医療施設に従事する全国の放射線科医の数は約5,190人から5,940人ほどと、750人前後、14%あまりしか増加していません。これが深刻な放射線科医不足を招き、多くの医療施設で放射線科医に対する求人競争を繰り広げる結果となっています。
近年の医療技術の向上に伴い、あらゆる分野の診療科目で優秀な放射線科医を必要としています。また放射線診断医の場合は小さなお子さんがいらっしゃる女性医師でも無理なく働けるなど、多彩な働き方が選択できるようになっています。
放射線科の現員医師数は平成22年9月29日時点で5,101人、必要求人医師数は449人で、現員医師数と必要求人医師数の合計は現員医師数の1.09倍です。また現在は求人を募集していませんが、医療機関が潜在的に必要とする必要非求人医師数を含めた必要医師数は614人であり、現員医師数と必要医師数の合計は現員医師数の1.12倍です(厚生労働省 平成22年「病院等における必要医師数実態調査の概要」より)。
これまでの日本の医療では、特に胃がん治療などにおいても手術による治療が主流でしたが、近年は放射線治療で手術に匹敵する治療成果を上げるようになってきました。画像診断の進歩にもめざましいものがあり、CT、MRI、RI、PET/CTなど新しい画像診断の方法が続々と登場し、それに伴い放射線科治療医のニーズも高まっています。しかし、患者や需要の増加に対して、放射線科治療医の数はそれにまだ追いついていません。全国的に放射線科治療医が常勤・非常勤医師ともに求められており、転職チャンスが多い分野といえます。