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 > 〔5時限〕高年期の栄養アドバイス(前編)

【第15回】食は生命なり!栄養学を知る

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研修医のみなさんは、栄養学についてどのくらいご存知でしょうか?医学部では疾患について学ぶ際に食事療法などの観点から栄養についても学びますが、栄養学をじっくりと学ぶ機会はないのが現状です。研修医となり食事の指示を出す段になって、栄養学を学ぶ必要性をひしひしと感じているドクターも多いことでしょう。
今回は、自治医科大学で41年間、医学生のために栄養学指導を行っている私が、医師のみなさんにこれだけは知っておいていただきたい栄養学についてアドバイスいたします。

香川 靖雄

香川 靖雄(かがわ・やすお)
自治医科大学名誉教授。女子栄養大学副学長。
1932年東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業。聖路加国際病院、東京大学医学部助手、信州大学医学部教授、米国コーネル大学客員教授、自治医科大学教授、女子栄養大学大学院教授を歴任。専門は生化学・分子生物学・人体栄養学。1985年に日本医師会医学賞を、1996年に生化学研究に対し紫綬褒章、2006年には生化学研究・教育に対し瑞宝中綬章を受賞している。
著書に『ゲノムビタミン学』(建帛社)、『生活習慣病を防ぐ』(岩波書店)、『時間栄養学』『香川靖雄教授のやさしい栄養学』(女子栄養大学出版部)などがある。

〔5時限〕 高年期の栄養アドバイス(前編)

■ 高年期の栄養アドバイス
日本は高齢化が進み、日本人の平均寿命は男性が79.44歳、女性が85.90歳となり、「超高齢化社会」と呼ばれています。
高年期は65~74歳の前期高齢者と、75歳以上の後期高齢者に区分され、両者ともに増加の一途をたどる見通しです。

2001年の国民生活基礎調査によると、65歳以上の要介護の原因は、脳血管疾患26.1%、高齢による衰弱17.0%、転倒・骨折12.4%、認知症11.2%、関節疾患10.6%、パーキンソン病6.2%。その他16.5%です。このように加齢にともなう身体機能や精神機能の低下により、さまざまな病気や食事に関する問題を抱えています。
これらのことを踏まえ、介護保険制度も予防重視型システムへと転換し、要介護に移行することを防ぐ取り組みが行われています。

(1) PEM予防で認知症や寝たきりを防ぐ!

高齢者のPEM出現状況
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高年期にとって大切なのは、心身ともに健康で充実した人生を送るための栄養管理であるといえます。
高年期には、「生理機能」や食事・排泄・移動・入浴などの基本的な日常生活動作「ADL(Activities of Daily Living)」に個人差があるため、各々にあった栄養を考えることが大切です。

とくに気をつけたいのが、タンパク質やエネルギーの低栄養障害「PEM(Protein Energy Malnutrition)」の予防と回復です。PEMとは、摂取量低下、運動減少と消化機能低下のため、血清アルブミンが3.5g/d?以下に減少した状態です。
高齢者の約半数にみられ、進行すると心身機能の低下を招き、認知症や寝たきりなど、介護が必要となる傾向にあります。
タンパク質はただ摂取量を増やしても、過剰分として尿素に分解されてしまいます。
筋力トレーニングやリハビリテーションで筋肉の減少を防ぐことも大切です。

(2) 消化機能や嚥下咀嚼に応じた食事を

高齢者のペプシノーゲンⅠは基準を大きく下回る。慢性萎縮性胃炎が多いので蛋白質結合葉酸は消化不能
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消化・吸収は、老化によって低下していきます。そのため食事もやわらかくて消化のよいものを摂る傾向があり、糖質に偏った食事になりがちです。
また、胃液の分泌が低下するなど、胃の働きも悪くなります。

高齢者の70%には胃にピロリ菌が発見されます。これは血液検査をすると、ペプシノーゲン(PG)の値がPG1/Ⅱ比3以下と低くなるので明らかです。
放置すると胃がんや胃潰瘍を招くので、ピロリ菌を完全に除菌することが大切です。超高齢者の場合は除菌しても萎縮性胃炎が進行しているので、この場合は、ゼリー状の半消化態の補助食品を補うか、消化酵素剤によってタンパク質エネルギー栄養障害が防げます。

また、加齢とともに噛む力や飲み込む力が弱まるため、食物を充分に咀嚼できない可能性があります。これにより、細菌が唾液や胃液とともに肺に流れ込み、「誤嚥(ごえん)性肺炎」を起こす危険性があるので注意が必要です。

さらに唾液の分泌も低下するため、摂食障害を防ぐには嚥下咀嚼の段階に合わせて、「常食→粥食→刻み食→粥+極刻み食→ミキサー食」というように食べやすい食事に変えていきましょう。
とくに、餅や海苔など、食べにくい食品には注意が必要です。また、水や汁物なども嚥下障害でむせてしまう場合には、「トロミ」を増すなど、介護食の工夫も大切です。

患者さんに老化を予防する栄養素の摂取についてアドバイスする際には、低栄養を防ぐために、「低栄養予防の食生活指針14ヵ条」も活用しましょう。

低栄養予防の食生活指針14カ条
  • 1. 3食のバランスをよくとり、欠食は絶対避ける
  • 2. 動物性たんぱく質を十分にとる
  • 3. 魚と肉の摂取は1:1の割合に
  • 4. 様々な種類の肉を食べる
  • 5. 油脂類を十分に摂取する
  • 6. 牛乳を毎日飲む
  • 7. 黄緑色野菜や根野菜など多種類の野菜を食べる。火を通し量を確保
  • 8. 食欲がない時はおかずを先に食べ、ごはんを残す
  • 9. 調理法や保存法を習熟する
  • 10. 酢、香辛料、香り野菜を十分に取り入れる
  • 11. 和風、中華、洋風と様々な料理を取り入れる
  • 12. 会食の機会を豊富につくる
  • 13. かむ力を維持するため義歯は定期的に検査を受ける
  • 14. 健康情報を積極的に取り入れる

口から栄養をとれない、あるいは食べてもむせて肺炎を起こしやすい患者さんには、内視鏡を使ってお腹に小さな口「胃ろう」を作り、胃に直接、栄養を入れます。この手術を「PEG(ペグ=経皮内視鏡的胃瘻造設術)」といいます。これは欧米でも多く用いられている長期栄養管理法で、患者さんの苦痛や介護の負担を減らすメリットがあります。
しかし、PEGから離脱できない人が日本には約30万人いるため、終末期医療の大きな問題の一つとなっているのも事実です。