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 > 〔4時限〕【最善の医療判断へ】医療判断のためのコミュニケーション

【第13回】最善の医療判断のために大切なこと

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医療現場では、医師は状況に応じてさまざまな判断を迫られます。治る見込みが高い場合などの軽度な判断もあれば、生命に関わる重大な判断を下さなければならないこともあります。「判断すること」は、医師にとって避けては通れない重責といえるでしょう。昨今は、その重責を患者さんが担うインフォームド・チョイスの時代ですが、だからこそ、重責を担う患者さんを積極的にサポートし、よりよい判断を下せる状況に導いてあげることこそ、これからの医師に求められるスキルではないでしょうか。今回は、医療判断支援の活動を行っている私が、「最善の医療判断のために大切なこと」についてお話しします。

寺下 謙三

寺下 謙三(てらした・けんぞう)
寺下医学事務所 寺下謙三クリニック代表
内科医、心療内科医、医療判断医(独自の分野)、執筆家
1978年東京大学医学部卒業。研修歴として心療内科学、脳神経外科学、一般内科学、老年病学を専攻。寺下医学事務所にて民間版侍医サービス「主侍医倶楽部」および「法人主侍医」を提供。医療関連企業の学術アドバイザーを受託。
慶應義塾大学医学部薬理学教室にて、1996年から2006年まで、新分野として「医療判断学」の特別講義を開催。

スマートDr.養成講座 第13回 最善の医療判断のために大切なこと

〔4時限〕 【最善の医療判断へ】医療判断のためのコミュニケーション

最終講義となる4時限では、患者さんとのコミュニケーションについてお話ししていきましょう。

■ 「患者さま」と呼ばない!
まずは、コミュニケーションの基本となる「呼び方」についてお話ししましょう。
最近、医療の現場では「患者さま」という言葉が使われています。
診療を受けに来た人たちを「患者さま」と呼ぶ背景には、「医療=サービス業」という考え方があるのでしょうが、私はこれには賛成できません。ですから私はあえて「患者さん」と呼ぶようにしています。

患者さんが病気になるのは、生活習慣病のように自己責任であったり、運命のいたずらであったり、遺伝的なものであったりしますが、少なくとも医師の責任ではありません。
人は困難に遭遇したときに指導者を求めます。患者さんは、病気という困難を乗り切るために、医療医学の専門家である医師に知恵を求めているのです。
この考え方を医師の傲慢と感じる人もいるかもしれませんが、私は、むしろ傲慢とは程遠いものだと考えています。表面的には「患者さま」と呼んで愛想笑いをし、魂を売り渡して「商売」に走っている医師こそ傲慢なのではないでしょうか。

医師と患者の関係の崩壊は、医療現場そのものの崩壊につながります。それを食い止める意味でも、まずは、医業はサービス業ではないということを自覚すること。そして、患者さんを「お客様」と考えないことが大切です。

■ 普段のコミュニケーションも医療判断のカギになる
医療判断において、患者さんとのコミュニケーションは何よりも重要です。では、患者さんとよりよいコミュニケーションを図るためにはどうしたらよいのでしょうか。それは「患者さんの話をよく聞くこと」です。
腕のいい医師、詳しく説明をする医師であることも大切ですが、私のところにいらっしゃる患者さんの多くは「あの先生、話をよく聞いてくれる」という言葉で「よい医者」を表現することが多いように思います。
患者さんの話を聞いてあげたいと思っていても、忙しい医師には難しいことです。外来でひとりの患者さんに割ける時間は限られますし、研修医のみなさんも、病棟にいるからといって、じっくり時間が取れるわけではないでしょう。

そうした場合に、少しでも話を聞いて、患者さんの満足度をあげるコツは、「一回の面談ごとにワンテーマを見つける」ということです。
いつも何から何まで聞こうとするのではなく、「好きなこと」「自分との共通点」「いま気にしていること」などに絞って、話を聞いたり、話題にしたりするのです。
そして、たとえば、「来週家族が引越しをするんです」という話を聞いたら、手帳の隅にでもメモしておく。次回お会いしたとき「そういえば、引越しは無事に終わりましたか?」と言葉をかければ、患者さんは自分のことを気にかけてくれていると安心します。

些細ではありますが、これが気持ちの上での信頼関係を支えます。
普段からコミュニケーションを大切にすることが、いざというとき、難しい説明や重大な判断を告げるというような場面でのスムーズなコミュニケーションにつながるのです。

■ 重い診断や判断を告げるときには…
では、命やその後の人生を左右するような重大なことを患者さんに告げるときはどうしたらよいのでしょうか? 私が心がけている2つのことをご紹介します。

(1) 時間を緩衝剤にする

 
スキルス性胃がんで、余命はあと半年です。
手術か、抗がん剤か、どちらを選びますか?

もしこのような言葉を、診断が出てすぐ、なんの躊躇もなく患者さんに告げたらどうなるでしょうか?
診断が正しいものであっても、告知の仕方によっては、医療判断として間違っているということになります。
もちろん、進行が早い病気の場合には、早々に診断結果を告げる必要がありますが、患者さんやご家族の心理状態を無視してはいけません。

 
明日か明後日、奥さんとご一緒にいらしてください。

このような言葉で、「ある程度の時間」というワンクッションを入れることによって、患者さんは、心の準備をした上で医師の話を聞くことができるのです。

(2) 覚悟と希望をセットにする

患者さんに重大な話をするとき、当然、医師はリスクのことを考えます。
このリスクにばかり気を取られると、患者さんから見た「覚悟」と「希望」という意味では、「覚悟」の部分だけを話すことになりがちです。そうした場合、「覚悟=リスク」に関してはきちんと説明できますが、覚悟だけがのしかかった患者さんの気持ちは落ち込むばかりで、そのことは、その後の経過のプラスにはなり得ません。
もちろん、リスクをきちんと説明することは大切ですが、その上で「希望」についても言及することで、患者さんは病の中にも希望の光を見出し、その後の治療に積極的に取り組むことができます。
たとえば、確率論から言えば「1%の希望」であっても、それを「数%」と告げること。ギリギリのラインではありますが、許されることではないかと私は考えています。

■ 最善の医療判断とは何なのか?
最後に、これからの医療を担っていく研修医のみなさんへ、私が考える「最善の医療判断」についてお話しします。

私が考える最善の医療判断とは…
結果が悪かったときにも
患者さんやご家族が満足できる判断

「最善の医療判断とは?」これは私にとっての永遠のテーマではありますが、医療判断の現場で私が常に心がけていること、それは「結果が悪かったときでも、患者さんがどれだけ満足できるか?」ということです。
その判断に至るために、医師をはじめ、患者さんやご家族、関係するすべての人が、手間暇を惜しまず真剣に考えて結論を出すのです。
研修医のみなさんは、時間に追われ、忙しい日々をお過ごしかとは思いますが、ぜひ「真剣に考えるクセ」を付けていただきたいと思っています。

私が慶応義塾大学で医療判断学の講義を行っていたとき、学生たちは、最初は「単位がほしいから」という軽い気持ちで教室に来ていました。
しかし、授業が進むにつれ、医療の本質的な部分について真剣に考えることの大切さに気づき、100%に近い、非常に高い出席率となりました。
なかには、「こんなに重い判断は自分にはできない」と大学を辞めそうになった学生もいて、慌てて引き止めたこともあります。それくらい、みんなが真剣だったのです。
「本当にあの判断でよかったのだろうか…」と、結果論的なことで苦悩することもあるでしょう。
しかし、そうしたプロセスがあってこそ「仮に悪い結果であっても患者さんが満足できる」という、最善の医療判断ができるようになってくるのだと私は思っています。

最後になりましたが、私がよく医師たちに言うことに「気を抜かず、力を抜け」ということがあります。みなさんお忙しいかと思いますが、患者さんたちと真摯に向き合いながら、「手を抜かない」「やりすぎない」「あきらめない」スマートな医師になってくれることを願っています。

寺下先生の本寺下先生の本

寺下先生の本
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『私を救う医者はどこ? よろず相談クリニック13のエピソード』(集英社be文庫)