在宅医療を始めたいドクター必読 多職種連携図鑑

【第10回】 まとめ

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連携を成功させるポイントは「相互理解」と「情報共有」

最終回は、連携成功のカギを握る「相互理解」と「情報共有」について考察します。

医師との連携において、他職種が口を揃えて重要性を指摘したのが「相互理解」です。たとえば、介護保険制度について、きちんと勉強したことがある医師は多くありません。そのため、「利用者が自立した生活を送れるようにする」という目的を持つケアマネジャーと、「高齢者だから、そこまでする必要がない」と考える医師の間にギャップが生じたり、薬を服用させるなど介護職にはできない仕事を医師が頼んだりするケースも見られます。
これは介護職に限りません。栄養士が栄養バランスだけではなく、患者さんの経済状況や調理の負担などを考えて栄養指導しているにもかかわらず、「栄養指導なら医師でもできる」と安易に考えて、自分でおこなう医師もいます。そうした栄養指導は実効性に乏しく、患者さんが継続して栄養改善に取り組むことが難しくなります。
円滑な連携を図るには、医師がそれぞれの職種の役割や、得意としていること・できないことをきちんと理解することが不可欠。そのうえで、相手に仕事を任せれば業務の効率化や治療効果の向上が期待できるでしょう。

もう一つ、連携するうえで大切なのが「情報共有」です。これも、相互理解が得られていることが前提となります。というのも、それぞれの職種によって、どんな患者情報を持っているかが異なるからです。
医療ソーシャルワーカーは患者さんや家族の生活に関する情報を把握しており、介護職は頻繁に利用者と顔を合わせるため、ちょっとした変化に気づくことができます。そうした職種の専門性を理解し、在宅医療を手がけるうえで必要な情報を教えてもらえば、質の高い在宅医療が実現できるはず。その際には、医師からも「チェックしてほしいポイント」を具体的に伝えておけば、より役に立つ情報が得られるでしょう。
もちろん、情報をただ得るだけではなく、医師から情報を提供することも重要です。たとえば福祉用具プランナーは、患者さんの疾病や既往症などを踏まえて患者さんに合った福祉用具を選びます。「こんな情報は必要ないのでは……」と思わずに、医師には積極的に情報を提供する姿勢が求められます。

最後に、他職種との連携のポイントを紹介します。

◎介護支援専門員(ケアマネジャー)
利用者の生活や家族の背景、要望などの情報を共有すれば、その人に適した在宅医療が実現できます。患者(利用者)さんの「睡眠」「食欲」などチェックしてほしい点を伝えれば、より正確な状態把握も可能。ケアマネジャーが相談・質問しやすいように、電話受付の時間を設けたり、実践的な内容をテーマにした勉強会を開催して信頼関係を構築しましょう。

◎訪問歯科医
患者さんの低栄養防止やQOL向上、家族の介護負担軽減などにつながる口腔リハビリや義歯の修整などを担います。連携先を見つけるには、地域の医師会や歯科医師会などの集まりに積極的に参加するとよいでしょう。在宅医療に移行する前から、口腔ケアの開始時期について話し合っておくと、さらに患者さんによい医療を提供できます。

◎セラピスト(リハビリ職)
同じ医療職とはいえ、お互いの専門用語を知らない場合もあるので、カンファレンスを一緒におこなう・診察にセラピストに同席してもらうなどとして治療の目的を共有できる仕組みづくりが大切。また、患者さんの様子を動画で撮影して共有するなどすれば、より情報共有が進むはずです。

◎医療ソーシャルワーカー(MSW)
医師やケアマネジャーには話しにくいことも、MSWには話せる患者さんもいるうえ、在宅医療で必要な患者さんや家族の生活情報も把握しているので、こうした情報を教えてもらえるように、依頼しておきたいもの。自院にあった患者さんを紹介してもらうには、日ごろから自院のポリシーやできること・できないことを伝えておきましょう。

◎薬剤師
薬の効果や副作用を患者さんに説明したり、残薬を管理し服薬しやすいように処方設計を行います。嚥下困難な場合はゼリー状のものや貼り薬に代えたり、服薬管理ができない場合は服用回数が少ないものにする・一包化するなどの工夫を施します。連携先を探すには、自院の外来患者さんの薬歴管理をしている薬局に訪問服薬指導を手がける意向があるかを確認。薬剤師会に相談する、という方法があります。

◎栄養士
患者さんの栄養状態の改善に向け、メニューを提案したり、配食サービスの見直しをおこないます。介護者のことも考えてメニューをつくるため、介護負担の軽減も可能。栄養指導が必要となる疾患の表や、身長ごとに肥満とされる体重の一覧などを作成し、必要な患者さんを見つけて栄養士につなげる工夫が必要。雇用が難しい場合は、地域の栄養ケア・ステーションを活用するとよいでしょう。

◎介護職
ケアマネジャーが作成したケアプランに基づき、身体介護や生活援助などのサービスを提供します。医師よりも頻繁に利用者に会うため、病状悪化などに早めに気づくことができます。利用者の家に複写式ノートを置き、医師や介護職が気になったことを書きこめるようにするなど、情報共有しやすい仕組みをつくるとよいでしょう。

◎福祉用具プランナー
現在抱えている病気だけでなく、既往症や介護者に関する情報も福祉用具選びには必要となるため、医師はできるだけ詳細な情報を提供するとよいでしょう。患者さんの状態に変化が見られたら、そのつど福祉用具プランナーに相談して福祉用具を見直せばQOL向上につなげられます。

◎民生委員
高齢者の家を日常的に訪問し、生活課題の把握に努めています。そのため、医療を必要とする人を見つけた際には受診を促してもらうことで重症化を防げます。さらに、その情報を医療・介護と共有し、必要に応じて専門職が介入することで、適切な医療・介護を提供できるでしょう。

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株式会社日本医療企画

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