1. 【第9回】 民生委員・児童委員

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【第9回】 民生委員・児童委員

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地域住民のさまざまな生活課題を把握 早期受診促し重症化を防ぐ

連携成功のために知っておきたいポイント
(1) 民生委員の役割とは…
(2) 地域住民の疾病の早期発見・早期治療、重症化の防止につなげるコツとは…

民生委員の定数は、厚生労働大臣が定めた基準(一定の世帯数ごと)により市町村(特別区を含む)ごとに定められています(2014年度からは国の基準を参酌しての都道府県条例による定数設定化)。その役割は、民生委員法第1条に「常に住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行なう」と定められ(守秘義務あり)、活動内容は高齢者世帯などへの訪問による相談支援や見守り、独居高齢者や子育て世帯向けのサロン活動など、地域特性に応じての幅広いものです。

全国民生委員児童委員連合会が11年に行った実態調査によると、一定区域ごとに設けられた民生委員・児童委員協議会の同年度の取り組みとして多かったのは「災害時要援護者の安否確認等の活動の強化」(81.5%)、「地域社会での孤立・孤独をなくす運動の取り組み」(73.5%)という順でした。民生委員はこのように、地域のさまざまな生活課題をとらえて自発的な組織活動にも取り組んでいます。

一方で、都市部の高層マンションの建設や自治会加入率の低下などで、地域で孤立・孤独の状態の住民も増えており、自治会や町内会がその役割を果たしにくくなっています。民生委員の役割や活動内容を知らない人も増え、地域づくりの一端を担う民生委員の活動を地域住民に一層周知するなどの取り組みが求められています。
民生委員は、地域住民が医療・介護面で問題を抱えている場合は、地域包括支援センターや行政の担当者につなぐことが多く、特定の医療機関と連携して活動を行うケースはほとんど見られません。

そうしたなか、埼玉県幸手市にある社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス東埼玉総合病院では、12年度在宅医療連携拠点事業として、住民とともに地域の高齢者を支える事業に取り組みました。その一環として、同院に近接している幸手団地に「幸手団地健康と暮らし支えあい協議会」を設立。団地の自治会長が協議会会長を、自治会や民生委員、同院が同委員を務め、事務局を同院に置いています。

同地で約30年間にわたり民生委員を務める家田昭枝氏は、「今まで大きな病院とかかわったことがなかったため、最初に協議会の話を聞いたときは、病院の担当者とどんな話をすればいいのかさえわかりませんでした」と明かします。しかし、同院の在宅医療連携拠点事業推進室の中野智紀医師や丑久保広子看護師、自治会と会合を持ち、何度も話をするうちに、医療機関から見た地域の課題を知り、地域医療を何とかしなければならないという思いを持つようになったと語ります。同事業の一環として同協議会で、団地に住む対象者などに聞き取り調査などを実施した際には、民生委員からも地域住民に「調査に協力をお願いします」といった声がけを行ったと言います。

13年11月には住民主催で地域ケア会議を開催。「これは我々が知る限り、全国初の試みです」と、中野医師は胸を張ります。同会議には医療職や介護職、自治会や民生委員、行政など、地域の高齢者の医療・介護にかかわるさまざまな職種が参加、2時間以上にわたって話し合いを行いました。そこで民生委員が医療や介護に関する課題を抱えている住民について、名前を伏せたうえで発表し、その課題に各職種が専門的な立場からアドバイスをしたり、対応を協議したりしました。専門職の介入が必要な場合は、同会議後に個別に話し合いの場を設けました。

医療・介護の関係者につなぐべきか、民生委員が判断に迷うケースもあり、さまざまな専門職の意見が聞ける場が設けられたことに民生委員から好意的な声が上がったといいます。医療の専門職が民生委員を後方から支える仕組みが生まれたことで、民生委員の負担感も軽減できました。

「医療が必要な人を早い段階で見つけて適切な医療を提供できなければ、やがて重症化し救急車で搬送しなければならなくなります。それを防ぎたいと思っても、地域住民の個々の情報を医療機関は知ることができないのが実情です」(中野医師)
その点、高齢者の家を日常的に訪問し、生活課題の把握に努めている民生委員は「体調が悪い」といった相談を受けることもあり、その際に受診を勧めれば重症化の防止にもつながるはずです。
丑久保看護師は「以前、独居高齢者の方が入院された際に、普段かかっている医療機関の連絡先を記したメモを自宅に取りに行く必要が生じたことがありました。民生委員に相談し、同行してもらうことで、患者さんの安全を図れました」と、医療機関と民生委員が"顔の見える関係"を構築する利点を指摘します。
独居高齢者が増加するなか、民生委員とうまく連携していくことで、地域医療には大きな効果が生まれる可能性がありそうです。

民生委員・児童委員とは

特別職の地方公務員(非常勤)で、任期は3年。市町村に設置された民生委員推薦会から候補者を都道府県知事に推薦。都道府県知事は地方社会福祉審議会の意見を聞いた後に、厚生労働大臣に推薦し、厚生労働大臣が委嘱します。定数は23万6,271人(2013年12月1日現在)で、現員数は22万9,488人(同)。児童福祉法に定める児童委員も兼ねており、給与の支給はなく、ボランティアとして活動しています。1917(大正6)年に岡山県に設置された「済世顧問制度」と、翌年に大阪府で始まった「方面委員制度」が始まりとされています。

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株式会社日本医療企画

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