1. 【第6回】 介護支援専門員(ケアマネジャー)

在宅医療を始めたいドクター必読 多職種連携図鑑

【第6回】 介護支援専門員(ケアマネジャー)

>>一覧はこちら

ケアマネジャーとの「情報の連携」で、在宅医療がより充実したものに

連携成功のために知っておきたいポイント
(1) 正確な容態把握にケアマネジャーが欠かせない理由とは…
(2) 相談しやすい開業医がやっている工夫とは…

在宅医療を受ける高齢患者さんは、同時に要介護認定を受けているケースが多くあります。ケアマネジャーは本人や家族から要望や悩みなどを聞いて自立支援に資するケアプランを作成し、本人が自立した日常生活を営めるように調整役を担っています。

一般社団法人日本介護支援専門員協会の木村隆次会長(当時)は、「ケアマネジャーは在宅医療にかかわる医師、歯科医、訪問看護師などの専門職のなかで、患者さんの生活の様子や家族の背景などの情報を最も蓄積していると言えます。ケアマネジャーの情報は、医師が在宅医療を実践するうえでさまざまな判断の助けとなるはずです」と指摘します。

在宅医療開始時に通常医師は家族との同居の有無を確認しますが、ケアマネジャーは、「日中は家族が仕事に出ているので、昼食は一人で食べている」といった暮らしぶりにまで踏み込んだ情報を持っています。こうした情報から、「昼食後の服薬はホームヘルパーに手伝ってもらおう」という提案も可能となるでしょう。

ケアマネジャーと病院の医療関係職の間では入院患者さんの在宅移行に向けた情報共有も進んでいます。患者さんの生活の継続性を考えると、ケアマネジャーと医療関係職種の連携は、退院後の生活を見越して入院中比較的早期からおこなう必要があり、退院時だけ連携を図ればよいわけではないからです。

2012年度の診療報酬・介護報酬同時改定では、介護支援連携指導料(入院中2回)、退院時共同指導料2(退院時)という診療報酬、介護報酬上でも「退院・退所加算」が入院中3回算定できるようになりました。算定にあたっては、「退院・退所情報記録書」が必要となります。標準書式はあるものの、各地域で決められた様式がある場合はそれを用いることもできます。これをケアマネジャーから得て活用すれば、よりきめ細かい在宅医療を提供できるでしょう。

在宅医療の開始後もケアマネジャーの緊密な連携は重要です。たとえば尾道市医師会では、患者さんのより詳しい容態把握を行うために「DBC(Dementia Balance Check)シート」を作成。シートには「いらだち・怒り」「不眠」「徘徊」「食欲低下」などの項目が20以上あり、「重度」から「なし」のいずれに当てはまるかをチェックできるようになっています。項目が細分化されているため、介護職でも確認すべきポイントがわかりやすい。医師のほか、ケアマネジャーやホームヘルパーなど、患者さんにかかわる専門家がそれぞれの視点からチェックしていけば、医師は訪問診療時以外の状態を詳細に把握することができます。ケアマネジャーの資格を持つ株式会社日本生科学研究所介護事業本部の宮脇聡運営統括部長兼和光・東京城北エリア長は、「利用者さんと接し生活の様子を把握していくなかで、認知症の症状に気づくこともあります。そうしたケアマネジャーの情報や意見をぜひ参考にしてほしいと思います」と話します。

では、どうすれば医師とケアマネジャーのよい連携体制を構築できるのでしょうか。宮脇運営統括部長は、連携における悩みを打ち明けます。「ケアマネジャーは、介護保険法第二条の『(前略)保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われる(後略)』にのっとって、利用者さんが自立した生活を送れるように取り組んでいますが、医師のなかには『高齢だから、そこまでする必要はない』とおっしゃる方もいます」

医師とケアマネジャー間の目標のずれは、医師の意識の持ち方一つで修正できます。「今連携している医師は、『主役である利用者(患者)を支えるために医師とケアマネジャーは同じ土俵で仕事をしている』という意識を持ってくれるので連携しやすいですね」(宮脇運営統括部長)
ケアマネジャーは介護職出身者が多いため、医療の知識が不足する人も多くいます。医師はそれを踏まえ、わかりやすい言葉を使って説明することが大切です。実際、そのような医師がケアマネジャーからは好評だといいます。また、介護職を対象に「痰の吸引」や「感染症対策」などについての勉強会の開催も有効。「連携している医師は教科書には載っていない実践的な内容の勉強会を開いてくれるので助かっています」と、宮脇運営統括部長は笑みを見せます。こうした場の設定が信頼関係づくりには役立つでしょう。木村会長も、「最近では、曜日、時間を決めてケアマネジャーの問い合わせや相談に乗るための『ケアマネタイム』を設ける診療所も増えてきました」と語ります。

医師とケアマネジャー。どちらにとっても、「患者(利用者)さんのためによりよい生活づくりを支援する」という目標は共通しています。それぞれの意識と取り組み方次第で、今以上にスムーズな連携が図られ、在宅医療の質の向上につながるはずです。

(文=山辺健史、株式会社日本医療企画 編集部)

介護支援専門員とは

通称ケアマネジャー。要介護者などが自立した日常生活を送れるように介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、自治体、居宅サービス事業者や施設などとの連絡・調整などを行います。保健・医療・福祉分野での実務経験5年以上の者などが介護支援専門員になるには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、介護支援専門員実務研修を修了後、都道府県の資格登録簿に登録申請し、介護支援専門員証の交付を受ける必要があります。ケアマネジャーは専門職として唯一、5年ごとの資格更新制が導入されています。
※肩書きはすべて取材当時のものです

記事提供

株式会社日本医療企画

株式会社日本医療企画
〒101-0033 東京都千代田区神田岩本町4-14 神田平成ビル
【トピックス】
・開業医や開業志向勤務医をサポートする最新クリニック総合情報誌
CLINIC BAMBOOばんぶう
・Amazon.co.jp書籍介護部門ランキング1位(2014/11/14調べ)
2015年度まるわかり!『介護保険制度改正のすべて』