1. 【第4回】 医療ソーシャルワーカー

在宅医療を始めたいドクター必読 多職種連携図鑑

【第4回】 医療ソーシャルワーカー

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"病診連携の要"と密に連絡をとり、スムーズに在宅移行

連携成功のために知っておきたいポイント
(1) 患者さん・家族とコミュニケーションでMSWが果たす役割とは…
(2) 患者さん・家族の情報をうまく入手するには…
(3) 自院に合った患者さんを紹介してもらうには…

病院と診療所間では、専門的な治療や検査、入院のために患者さんを紹介したり、退院する患者さんを逆紹介したりと、患者さんのやりとりが頻繁に行われます。その際に大きな役割を果たすのが、医療ソーシャルワーカー(MSW)です。

東京都渋谷区にある医療法人内藤病院の医療連携・相談室の小林裕一郎室長は、MSWの役割をこう語ります。「医師は医学的な視点、看護師は看護的な視点、リハビリ職はリハビリ的な視点から患者さんを見ますが、MSWは患者さんの生活全体を見ます」

特に高齢者は慢性疾患を抱えながら生活をしていることが多く、高齢化が進むにつれて「生活のなかに病気がある」と捉えて生活全体を見る視点が求められます。つまり、MSWの視点が患者の生活を支えるうえで役に立つのです。

もう一つの特徴として、システムを改善する点が挙げられます。たとえば、薬を指示どおりに飲まない患者さんがいた場合、医療者のなかには「服薬コンプライアンスが悪い」と考え、服薬遵守を指導するだけで具体的な対策をとらない人もいます。一方、MSWはどうすれば適切な服薬につながる生活スタイルを構築できるのかを考えます。「薬が多すぎて管理ができない」といった物理的な面や、「副作用が怖い」といった心理的な面など、理由を特定し、多職種と相談して生活システムを見つめ直し、規定どおりに服薬できる環境をつくり出すのです。
加えてMSWは、患者さんと直接的な利害関係にないため、患者さんや家族は医師やケアマネジャーには伝えにくい情報でも話すことがあります。開業医はこうした特徴に配慮し、密な情報交換・共有に努めれば質の高い在宅医療を実現できるでしょう。

在宅医がMSWと最も連絡をとり合うのは、入院患者さんが在宅に移行するとき。この時にMSWは、病院と診療所、患者さん・家族と診療所をつなげる架け橋となります。
病院と診療所の医師同士で情報共有を図ると、どうしても疾患を中心とした医学的な内容に終始してしまいがちですが、MSWが間に入ると開業医が必要とする患者さんや家族の生活情報が伝わります。

また、患者さん・家族と診療所をつなぐ際には、かかりつけ医がいるか、いないかで対応は変わります。かかりつけ医がいる場合は、通常、その医師に返します。ただ、訪問診療や専門的な医療が必要な場合は判断が難しく、その際に小林室長が気を付けているのは、診療所のホームページやパンフレットの情報をうのみにしないことです。
「かかりつけ医が、外来医療のみとうたっている場合、在宅移行時に、在宅医療をしている診療所を新たに探さなければならない場合もあります。しかし、かかりつけ医に相談すると、『ずっと診てきた患者さんだから在宅でも診る』とおっしゃる方もいます」
かかりつけ医は日頃からMSWと連絡をとり合い、いざというときに患者さん・家族の希望をかなえられるようにしておいたほうがいいでしょう。

一方、かかりつけ医がいない場合は開業医を逆紹介することになります。逆紹介先を探す際に小林氏は専門性だけでなく、開業医のポリシーも重視しています。
「看取り一つとっても、最期は病院で看取ってほしい、家族から連絡があればすぐに駆けつける、翌朝であれば駆けつけるなど、医師の考え方は違います。そのため、患者さんや家族の考え方と合う診療所を考えるようにしています」
在宅医療は患者さん・家族とかかわる時間が長く、考えにズレがあると、それがお互いにストレスとなります。事前に診療所のポリシーを確認しておけば、こうした事態を回避できます。

自院に合った患者さんを紹介してもらうために、在宅医は日頃からMSWに在宅医療に関する考え方やできることできないこと、ポリシーを提示しておくとよいでしょう。紹介時に医療者と患者さん・家族間のコミュニケーションをとり持つのも、MSWの大切な役割といえます。「患者さんや家族は医師から説明を受けてもすべてを理解できるわけではありませんし、安心・安全を重視する医師と経済的な問題を抱えている患者さんや家族では価値観が異なるため、同じ事柄でも異なった見方をします。MSWが間に入れば、こうしたズレを減らせます」
患者さん・家族とのコミュニケーションに不安を抱える医師は、MSWの手を借りれば、お互いに納得できる在宅医療になるはずです。

最後に、小林室長はこう指摘します。「まだMSWがいる診療所は多くありません。MSWを雇えば、患者さんの生活支援に特化した診療所という特色を打ち出せます」
病院とのやりとりをMSWに任せれば、医師は診療に専念できます。他院との差別化を考えている診療所はぜひ一考してみてください。

医療ソーシャルワーカーとは

医療ソーシャルワーカー(MSW:Medical Social Worker)は保健・医療分野の総合的な相談・援助職で、医療機関などで患者や家族が抱える心理的・社会的・経済的な問題の相談にのり、家庭・社会復帰の手助けをします。MSWになるのに特別な資格は必要ありませんが、社会福祉士や精神保健福祉士の資格保有者が多く、医療機関によって、「ソーシャルワーカー」「ケースワーカー」「相談員」「生活指導員」など呼び名が異なります。

記事提供

株式会社日本医療企画

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