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ハダカデバネズミは人間の救世主?がん研究に光明をもたらすネズミの話

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日本人の死因NO.1「がん」

日本人の死亡原因の第1位は「悪性新生物(がん)」です。
死亡原因の約28%を占め、2位の心疾患の約15%を大きく引き離しています(「厚生労働省2015年人口統計」)。わが国の約3人に1人ががんによって亡くなるわけですから、“がん撲滅”は国民的課題といえるでしょう。

医師はもちろん、遺伝子や免疫分野などの研究者、生物学者など多くの人が、がんの原因究明、より最適な治療法の発見のために取り組んでいます。

「ハダカデバネズミ」ががん研究に寄与?

そんななか、ちょっとユニークな動物ががん研究に意外な役割を果たすのではないかと注目されています。
その動物の名は“ハダカデバネズミ”。アフリカのエチオピア、ケニア、ソマリアなどのサバンナの地中に暮らしているげっ歯類です。

ハダカデバネズミは、大きさは7㎝くらい、平均80頭、最大で300頭くらいで群れをつくって生活しています。名前のとおりハダカ、つまり毛がなく肌が露出していて、歯が口の外に出ています。一見すると不気味ですが、よく見ると愛嬌のある顔をした、いわゆる“キモカワイイ”小動物として話題になりました。そんな彼らが日本人、いや人類の最大課題「がん撲滅」にどんな関係があるのでしょう。

“超長生き”なのに、なぜがんにかからない?

がんは私たち人間以外の動物にも発症する病気です。
実は、高齢化社会の波はイヌやネコにもおよんでいて、動物病院ではイヌネコのがん患者(?)が近年増えているそうです。ペットや家畜、そして実験用動物もがんにかかります。たとえば、マウスはイエネズミを実験動物として改変した動物ですが、その半数近くにがんが発生するともいわれています。

ところが、同じげっ歯類であるにもかかわらず、このハダカデバネズミは、これまでがんにかかったモデルが見当たらないというのです。
そもそもハダカデバネズミは長寿な生き物として知られていて、野ネズミが平均1~2年生きるといわれているのに対し、ハダカデバネズミの平均寿命はなんと28年。寿命が長ければ、それだけ高齢化が進み、人間と同じようにがんの発生率が高くなってもよさそうなものです。
しかし彼らはがんにかかりません。このことから、がんの研究者にとって「ハダカデバネズミ」は非常に興味深く、海外や日本でも盛んに研究がおこなわれているのです。

秘密は「ヒアルロン酸」にある?

なぜ、ハダカデバネズミはがんにかからないのか。
まだすべてが解明されたわけではありませんが、これまでの研究によると、ハダカデバネズミが「体内に多くのヒアルロン酸を持っていること」が理由ではないかといわれています。

がんの発生要因の1つに、細胞が無秩序に増加することが挙げられます。ヒアルロン酸はそうした無秩序な細胞増加をコントロールすると同時に、タンパク質が酸化ストレスによって損傷を受けるのを防ぎ、がん化を食い止めているのではないかと考えられています。
また、地下生活を送る彼らは低温・低酸素で生きており、新陳代謝が低いことが長生きの秘密ではないかと考える研究者もいます。その環境が、がんの発症率とも何か関係するのかもしれません。

そして最近、ハダカデバネズミの細胞を使ってiPS細胞がつくられたというニュースが入りました。(北海道大学遺伝子病制御研究所・三浦恭子講師、慶應義塾大学医学部生理学教室・鵜岡野栄之教授による発表)
iPS細胞を医療に応用するうえで大きな問題となっているのは、移植したiPS細胞ががんを誘発してしまうことです。しかし、「がんになりにくい」ハダカデバネズミの細胞からつくったiPS細胞なら、がん化を防げるかもしれないと期待されているのです。
日本から遠く離れたアフリカのサバンナの地下で暮らしている不思議な生き物が、がん研究に一役買っているというのですから、これこそ生命の神秘ですね。

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