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食べると眠くなるのはなぜ?脳科学でわかる食と睡眠のメカニズム

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食欲と睡眠に関係する物質オレキシンの発見

最近の脳科学の進歩は目覚ましいものがありますが、睡眠時の脳のメカニズムについては、まだ研究する人の数も少なく謎が多いようです。「お腹がいっぱいになると眠くなるのはなぜか」、そんな私たちの日常生活の出来事一つとってみても、脳科学的にはわからないことが多かったのです。

そんななか、1900年代終わりごろに、脳の覚醒と睡眠に関係する“オレキシン”という物質が脳の中から発見されました。これをきっかけにさらに研究が進み、多くの睡眠の謎が解き明かされてきています。
発見したのは、当時米国テキサス大学にいた柳沢正史教授と櫻井武教授のグループです(※1)。

オレキシンは、食欲を刺激する脳の中の「食欲中枢」という場所で発見され、さらに睡眠に関係する物質であることが解明されました。このオレキシンが活発に働いているときに、ヒトを含めた脊髄動物の多くは覚醒し、オレキシンの働きが鈍ると睡眠状態に入ると考えられています。

満腹になるとオレキシンの活動が鈍って眠くなる

野生動物は空腹になるとエサを探す行動をとらなければなりません。それは敵と戦う危険な行為と隣り合わせであり、意識を最高レベルにまで覚醒させておく必要があります。このとき、「オレキシン作動性ニューロン」という神経細胞がオレキシンを刺激して活発化させ、野生動物を覚醒させるのです。最高レベルに覚醒した野生動物は、これぞと狙った獲物を捕獲し、エサにありつけるというわけです。

エサを食べて満腹になると、もうエサを獲る危険な行動はしばらくしなくて済むので、オレキシンの活動が鈍り、眠りたくなると考えられています。ヒトも生物の進化の結果生まれた種ですから、このような野生動物時代の脳の働きを継承していても不思議ではありません。

血糖値が高くなると眠くなる脳内のメカニズムとは

空腹時と睡眠時の脳のメカニズムをさらに見ていくと、空腹時には血液中のグルコース濃度(血糖値)が低くなり、オレキシン作動性ニューロンの活動が活発になって、オレキシンが活性化します。逆に、満腹になると血糖値が高くなり、このニューロンの活動が低下して、オレキシンの活動が低下することが解明されています。

ナルコレプシーを引き起こすのもオレキシンの仕業

作家の阿佐田哲也さんが罹った病気として知られる「ナルコレプシー」は、突然睡魔に襲われる奇病で、直前まで話をしていたのにいきなり眠ってしまうこともあるといいます。10歳代半ばから発症する場合が多く、重要な会議の場でも運転中でも、突如、急激に眠くなるため、社会生活はもとより生命維持さえ危ぶまれます。このナルコレプシーも、ヒトを覚醒させるオレキシンの働きが阻害されることによって引き起こされると考えられています。
このように、いろいろと最近は解明されてはきていますが、脳科学にとって睡眠はまだ謎だらけ。これからどんな発見がされるのか、大いに楽しみです。

※1現在、柳沢正史教授は筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機関長、櫻井武教授は同副機関長。
参考文献:『睡眠の科学』(櫻井武・著、講談社ブルーバックス刊)

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