1. インフルエンザの予防接種は本当に効果があるのか?

おもしろ医療関連トピックス

2015年1月9日

インフルエンザの予防接種は本当に効果があるのか?

>>一覧はこちら

ワクチン製造株の選定方法

ワクチン製造株の選定方法冬が近づきインフルエンザの流行が気になるころ、決まって話題になるのが予防接種の効果の有無。現在、インフルエンザワクチンはA型2株、B型1株の3種類を混合したものがつくられています。毎年、どの株にするかは、まずWHOや日本の国立感染症研究所が世界各地でインフルエンザウイルスの定点観測を行い、その年の流行株を予測。そして、これらの流行予測株の中から増殖性、免疫原性などが検討され、血清疫学データとあわせてその年のワクチン候補株が選ばれ、厚生労働省が最終的に決定しています。

国立感染症研究所によると、このWHOを中心とした世界規模でのウイルス監視に基づく予測は精度が高く、近年「抗原性の不一致でワクチンが効かなかった」という事態は、ほとんど起きていないとしています。

発症後の重症化や死亡を予防することに関しては一定の効果がある

厚生労働省は、国内で用いられている不活化のインフルエンザワクチンは、感染を完全に阻止する効果はないが、インフルエンザの発症を予防することや、発症後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとしています。

ワクチンの有効率は報告によって幅がありますが、平成11年度厚生科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院)」では、65歳以上の健常な高齢者については約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったとしています。また同じく平成14年度厚生科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に対する研究(研究代表者:加地正郎(久留米大学)」では、発熱を指標とした場合、1歳以上で6歳未満の幼児では約20~30%の発病阻止効果があり、1歳未満の乳児では対象症例数も少なく、効果は明らかでなかったとしています。

予防接種の否定派が支持する研究には問題がある

予防接種の反対派が拠りどころとする研究に「前橋レポート」があります。これは、1980年代に群馬県前橋市の医師たちが、インフルエンザワクチンの効果に不信感をもち、集団予防接種を中止した根拠を自分たちで調査してまとめた報告書です。

しかし、30年前の研究ということもあり、当時はインフルエンザか風邪かを鑑別する精度の高い方法がなかったため、37度以上の発熱で2日以上学校を欠席した場合にインフルエンザであると定義していました。また、ワクチンの有効率を調査するため、接種地域と非接種地域が比較されていますが、接種地域の中に接種率が50%に満たない場所を入れているなど、いくつかの問題点があり、「前橋レポート」だけで予防接種に有効性がないと証明するのは不十分といわれています。

さらにインフルエンザワクチンの問題点として挙げられる重い副反応については、厚生労働省でもギラン・バレー症候群、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎、けいれん、肝機能障害、喘息発作、血小板減少性紫斑病などの報告があるものの、その原因がワクチン接種かどうかは必ずしも明らかではないとしています。

以上から、インフルエンザの予防接種は、高齢者や乳幼児、基礎疾患を持っている人など「ハイリスク者」が、入院や死亡などの重篤な状態になるのを防ぐのには有効であるといえそうです。感染阻止や発症阻止に100%効果があるとは断言できませんが、感染拡大を防ぐためには、できるだけ多くの人が予防接種を受けたほうがよいといえそうです。

おもしろ医療関連トピックス 記事一覧