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本当は危険性なし?電車内での携帯電話利用が心臓ペースメーカーに及ぼす影響

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ますます増える電車内での携帯電話・スマートフォン利用

ますます増える電車内での携帯電話・スマートフォン利用今や、電車に乗ると座席の半分以上の人がスマートフォンをいじっていることは珍しくありません。また、スマートフォンに比べると目立たなくなっているとはいえ、従来型の携帯電話によるメール等の利用もあります。特にインターネット利用に関しては、全国の地下鉄車内でも電波の送受信が可能になったため(神戸市営地下鉄の一部路線は2015年度にエリア化を予定)、もはや、飛行機や船以外の交通機関のほとんどで、ちょっとした移動時間を使って情報交換が行えるようになりました。

さすがに電車内で通話をしている人は、ほとんど見かけなくなりましたが、気になるのは、メールやインターネット利用時に携帯電話・スマートフォン本体が発する電磁波の心臓ペースメーカーへの影響です。首都圏では多くの鉄道会社が「優先席付近では携帯電話やスマートフォンの電源を切ってください」と乗客に協力を求めています。また、携帯電話会社各社のホームページにも同様の注意が掲載されています。そのため、心臓ペースメーカーを使っている人も優先席付近に乗車していれば安心ということです。

たしかに、隣や目の前に座っている人が心臓ペースメーカーを使用していることに気が付かず、自分が携帯電話やスマートフォンを操作したことでその人の命に関わるようなことが起きたら大変です。とはいえ、優先席付近にいる人のうち、どの人がペースメーカーを利用しているのかを知ることは簡単ではありませんし、だからといって短時間乗って降りるだけのために電源を切ったり入れたりするのは面倒でもあります。実際に優先席近くに乗った人が電源を切ろうとしている場面に出会うことはあまりないように思います。

実際のところ、このルールが徹底されないと、本当に心臓ペースメーカーを利用している人は安心して電車に乗ることはできないのでしょうか?

携帯電話・スマートフォンが心臓ペースメーカーに影響を与える距離は?

ペースメーカーを製造している医療機器メーカーでは、携帯電話やスマートフォンなどの利用の際に、「通話、携行する場合は、心臓ペースメーカーの植込み部位から15センチ以上離してください」と注意を呼びかけています。この15センチという距離は、総務省が2000年度から定期的に行っている「電波の植込み型医療機器等への影響の調査研究」による調査結果が基準となっています。

同省が2014年5月に発表した「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」によると、2012年7月以降にサービスが行われている通信方式の携帯電話やスマートフォンに関しては、最長で3センチ程度近付いた場合に心臓ペースメーカーが影響を受けることがあったことから、余裕をもって15センチ以上離すこととしています。ただ、3センチの距離でペースメーカーに与えたという影響は一時的なものに過ぎず、距離を離せばすぐに正常動作に戻ったと報告されています。

なお、スマートフォンの場合はWi-Fi規格による無線LANの通信機能も備えていますが、この無線LANによる通信については、心臓ペースメーカーへの影響はみられなかったそうです。

また、実は15センチという数値は、2013年1月に発表された調査結果によって、それ以前の22センチから修正されています。その理由は、電波の出力が強く、心臓ペースメーカーの動作に影響を与えやすいとされていた第2世代の携帯電話サービス(ドコモのムーバ等)の提供が終了したからです。第2世代の携帯電話の場合、総務省が行った実験では最大で15センチ程度の距離でなんらかの影響が現れたため、当時は余裕をもって22センチと設定されました。現在、携帯電話会社各社のサービスはすべて電波の出力が弱い第3世代以降の通信方式に移行しているため、以前ほどの危険性もなくなり、一方で心臓ペースメーカー自体も電磁波の影響を受けにくくするための改良が進んでいることから、緩和されたとのことです。

関東と関西で異なる鉄道会社の対応

関西の私鉄各社が加盟する関西鉄道協会とJR西日本では、2014年6月25日付けで携帯電話やスマートフォンの使用について、それまでの「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください」から「優先席付近では、混雑時には携帯電話の電源をお切りください」に変更しました。これは、先の総務省からの調査結果を受け、混雑時以外は乗客同士が15センチ以下まで近付くことはないと判断した、実情に合わせた対応といえます。

これに対して、首都圏の鉄道会社では、2014年11月時点でこれまでのルールを変更する動きはありません。その理由については、関東と関西では電車の混雑具合が大きく異なることがあります。関西は朝夕の通勤通学時間に混雑する程度ですが、関東の場合は時間や上下線に関係なく日中も混んでいる路線があり、混雑時という状況がどの程度を指すのかが曖昧で、安全性についても100%確認できていないからだそうです。ちなみに、関東以外の地方の鉄道機関においても、まだルール変更の動きはみられません。

結局のところ、混雑していなければ、優先席付近にいても携帯電話やスマートフォンの電源を切る必要はないように思えます。実際にはその優先席で、スマートフォンやタブレット端末を使用している心臓ペースメーカー利用者の方もいると言います。

しかし鉄道会社各社のアナウンス内容には微妙な違いがあったり、最も身近な有識者であるはずの医師の見解やアドバイスも、実態としては様々であったりするため、心臓ペースメーカー利用者の漠然とした不安感が広がっていることはもっと問題視されるべきかもしれません。

また乗車率が100%を超える通勤時間帯などでは、心臓ペースメーカーを使用している人が優先席付近に辿り着くことすら困難です。完全にリスクをなくすためには「混雑時には優先席付近に限らず電源を切る」とするルールが必要とも言えますが、たとえ行政がそのようなルール整備を行ったところで、残念ながら満員電車で全員にルールを順守させることは現実的でない気もします。

このように現実に則したルール整備を見出すことは容易ではないにせよ、行政や日本心臓ペースメーカー友の会などのコミュニティからの正しい知識の発信を強化し、ペースメーカー利用者の不安を減らすことと、今までの背景を踏まえた上での健常者の理解を得ていくことが必要なのかもしれません。

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