1. ドラマ・漫画にみる医療問題「医師不足」

おもしろ医療関連トピックス

ドラマ・漫画にみる医療問題「医師不足」

>>一覧はこちら

知っていますか? 医師不足の問題

厚生労働省によると、平成24年12月31日現在における全国の届出「医師数」は303,268人。前回調査した平成22年に比べて8,219人、割合では2.8%の増加となっています。また人口10万人に対する医師数は237.8人で、前回から7.4人増加しました。最近の20年間で約4割増えたことを考えても、日本における医師数は着実に増えています。

では、医師数が一貫して増えているにもかかわらず、医師不足が叫ばれるのはなぜでしょう。日本は他の先進国に比べて医師の数が少なく、高齢化が進む社会に向けてさらなる増加が望まれているのは事実です。その一方で、現在問題になっている医師不足は、主に医師の偏在のことを指しています。地方の病院不足や経営難に加え、小児科、産科、救急科など特定の診療科で受け入れ体制が不十分なために患者がたらい回しにされるケースが報道され、国民には医師不足が重大な問題として受けとめられています。

特に、マスコミ等でも多く取り上げられているのが、地方の病院における医師不足問題です。平成16年度から始まった新医師臨床研修制度が、地方の医師不足に拍車をかけたとの意見もあります。これは、研修医の希望を踏まえて受け入れ先の病院をマッチングさせるための制度ですが、運用が始まると人気のない病院が研修医不足に陥り、元からいる勤務医の負担が増してさらなる流出につながるという悪循環が指摘されました。それを受けて厚生労働省は運用開始5年後の見直し(平成22年度実施)で、研修プログラムを弾力化し、都道県別の募集定員の上限を設定するなどして、研修医の都市部集中の解消を図っています。

さらに、勤務医の労働環境にも問題があります。独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成24年に行った調査では、勤務医の4割が週60時間以上働いており、宿直勤務における平均睡眠時間は4時間未満が半数弱。そして、その翌日に通常勤務をする者が8割強もいるという現状が明らかになっています。「睡眠不足感」「健康不安」「疲労感」をそれぞれ半数近くかそれ以上の割合で感じており、8割近い者が「何らかのヒヤリ・ハット体験がある」と答えているのです。

このような過酷な労働環境は医療事故の温床ともなりかねません。現状では、勤務医の7割弱が医師不足を認識しており、特に不足が指摘されているのは「麻酔科」「救急科」「小児科」となっています。

問題解消に向けた行政の取り組み

平成25年の社会保障審議会医療部会では、これからの医師確保対策について詳細な確認が行われました。医師の地域間、診療科間の偏在を是正するために、都道府県が担う役割を強化し、地域の実情に応じた医師確保体制の構築が指示されています。医療技術の高度化・専門化に伴って医師の専門分化の傾向がある中、第一線の現場で幅広く診ることのできる医師を確保し、地域の医療と介護をつなぐ役割を果たすことを目指しています。

医師不足対策として、女性医師の活躍を支援する取り組みに力を入れる自治体もあります。平成24年の調査では、男性医師は243,627(80.3%)、女性医師は59,641人(19.7%)ですが、平成26年に行われた医師国家試験の合格者割合は男性68.2%、女性31.8%と、今後、若い世代から女性医師の割合が増えていくことが期待されています。長野県では、平成26年度から「女性医師総合支援事業」を始めました。これはキャリア形成や生活面を含めて、女性医師の多様な働き方をトータルに支援しようという政策です。

この取り組みで、長野県はまず女性医師の総合相談窓口を開設し、県内の女性医師や将来長野県で勤務を考える全国の女性医師、医学生などを対象として、長野県での勤務、生活(住まい、子育て、介護等)やキャリア形成について先輩女性医師などの相談員が対応しています。県内医療機関への就労の情報(常勤・非常勤)、臨床現場へ復職するための研修、出産や育児とキャリア形成の両立や仕事と家庭の両立に関する相談、保育サービスや介護サービスなどにも踏み込んで質問に答えています。

また、特に医師不足が深刻な問題となっている埼玉県でも、地方自治体レベルで対策が講じられています。住民の高齢化率が高く勤務医数が少ない秩父地域では「総合診療医」の育成に取り組み、平成24年には同地域で総合的な診療を行う医師を育成するために、複数の病院を3年間ローテーションで勤務してもらうシステムを構築しました。自治医科大学附属さいたま医療センターや埼玉医科大学でも、総合診療医の育成に力を入れています。埼玉県総合医局機構では総合診療医としてキャリア形成できる研修プログラムを策定し、産科、小児科、救急科の分野で県内病院に勤務するか、医師の不足している秩父や県北地域の公的医療機関などで勤務することを条件に、奨学金の貸与を行っています。

医学部入学定員は平成20年度から1,416人増員し、平成25年度には過去最高の9,041人となりました。平成22年度からは、定員増に当たって特定の地域や診療科での勤務を条件とする「地域枠」を設けており、平成25年度の地域枠入学定員は476人となっています。この地域枠とは、大学が特定の診療科や地域で診療を行うことを条件とした選抜枠を設け、都道府県が学生に対して奨学金を貸与(地域医療へ一定の年限従事することにより返還免除)する仕組みです。このように、決して減っているわけではない医師の偏在を解消するため、日本各地でさまざまな取り組みが行われています。

医師不足を背景としたドラマや漫画

使命感の強い医師が、過酷な職場で孤軍奮闘する物語。これは医療を題材にしたドラマや漫画の王道といえるでしょう。医師不足を俯瞰的に問題視したものではなくとも、多くの作品が医師不足や医師の偏在を背景にした舞台設定でドラマを描いています。ここではその具体的な例を挙げてみましょう。

『麻酔科医 ハナ』(作:なかお白亜 監修:松本克平 コミック)
医療崩壊の要因となる医師不足の中でも、特に深刻なのが麻酔科医の不足。その激務の実態と日常の様子を、大学病院の麻酔科医・華岡ハナコを主人公に描く。時にシリアス、時にコミカルに、すさまじいリアルさが医療関係者に高く評価された。激務、安月給、セクハラなど、きつい仕事だとは思いながらも、今日もハナコは元気に麻酔をかける。

第1巻の単行本の帯には「年収3,500万円でもやりたくない仕事ってナニ?」との文字が。答えは「麻酔科医」だ。以前、麻酔科医4人が一斉退職したある市立病院で、年収3,500万円の条件で麻酔科医が公募された事実がある。この『麻酔科医 ハナ』でも、手術室を掛け持ちする過酷な麻酔科医の日常がリアルに描かれている。

【作中で取り上げられている問題点】
・過酷な労働環境
・麻酔科医の不足
・大学病院の閉鎖性

『Tomorrow 陽はまたのぼる』(2008年 TBS日曜劇場)
医師という仕事に絶望した市の職員が、病院再建を通じて心を開き、一度は捨てた医療の道を再び歩き出すヒューマンドラマ。地方病院の経営難や、医療現場の抱える苦悩に立ち向かう医師・森山航平を演じるのは竹野内豊。ヒロインの看護師・田中愛子には、看護師役に初挑戦した菅野美穂。共演には緒川たまき、黒川智花、エド・はるみ、陣内孝則、岸部一徳ら個性的な俳優陣が顔を揃えた。
回を重ねるにつれ、森山航平が苦悩しながらも、8年前に自らが関わった医療ミスと向き合う姿が描かれる。このドラマがスタートして間もなく、ドラマの設定に酷似した経営難で運営を停止した千葉県の総合病院が話題になった。

【作中で取り上げられている問題点】
・地方病院の経営難
・救急受入拒否など医療サービスの低下
・医療事故と医師の償い

『真夜中のこじか』(原作:北原雅紀 作画:あおきてつお コミック)
17年前、弟の命を救ってくれた医師・土門大吾に憧れ、小児科医になった朝比奈伴美。念願通りに土門小児科クリニックで働き始めるが、そこはまるで戦場のような職場だった。エース医師が退職して人手不足となり、院長の大吾も過労がたたって病に倒れる。
そんな時、院長代理として現れた土門健吾は、病院を独断で夜間専門の体制に変更。当初は24時間診療にこだわっていた伴美だが、大事なのは24時間の"病院"ではなく、24時間の"医療体制"を作ること、そして医療の質を上げる努力を忘れないことだと気づく。慢性的な医師不足から、今日もどこかで危機に瀕する小さな命たち。過酷な小児医療の現場で、伴美は今日も未来を担う子どもたちのために戦う。

【作中で取り上げられている問題点】
・小児科救急の不足と一部医療機関への集中
・24時間診療の苛烈な労働環境
・過労で倒れる医療従事者と人材不足

まとめ
いかがだったでしょうか。漫画『ブラック・ジャック』などの古典的な作品でも描かれているように、患者を救いたいという医師の信念と理想追求をベースに、誰もやりたがらない困難な仕事を成し遂げていくのが、医療ドラマ・漫画に多く見られるストーリー展開です。現実の世界でも、タフで、情熱的で、有能な医師こそ、患者にとって心強い存在であることは言うまでもありません。しかし、そのような特別な個人に頼らざるを得ない状況を少しずつ変えていくこともまた、医師不足問題の大きな課題といえるでしょう。
■ 小児科、麻酔科、救命救急科求人特集はこちら

おもしろ医療関連トピックス 記事一覧