1. やせすぎていても、太っていても、がんのリスクが高まる!?

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やせすぎていても、太っていても、がんのリスクが高まる!?

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今や、日本人の二人に一人はがんに罹患し、三人に一人はがんで亡くなる時代が到来しました。医療者にとっても、患者さんにとっても、がんはもはや身近な疾患となってきましたし、診療科によっては、患者さんのほとんどが悪性疾患という科も少なくないのもうなずけます。

その一方で、がんの治療成績も飛躍的に向上しています。特に、この10数年はがんの遺伝子解析やそれらに対応した新しい化学療法の開発、そして、副作用コントロールの発達などはめざましいものがあります。
がん検診の意義については、いくつかの異論はあるものの、基本的には早期発見・早期治療が大切ですし、さらには、予防も欠かせないというのは誰しも認めるところです。

医療経済的にも、予防は治療に比べて費用対効果が高く、医療費適正化が求められる今、その重要性は従来にも増して高くなっていると言えるでしょう。

がんの意外なリスク

予防の一つとして、がんの危険因子から身を遠ざけて置くことがポイントです。ではがんのリスクにはどんなものがあるでしょうか。
代表的なものは、ご存じの通り喫煙です。これもがん検診の重要性同様、いくつかの異論はありますが、やはり受動喫煙を含めてタバコの煙は避けるべきというのが、がん予防の観点からも一般的に認められていることです。
さらには、アスベストの曝露は胸膜中皮腫の原因になることや、子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)感染によって引き起こされることなども知られていますし、生活習慣との関わりでは、疫学的調査によって、食生活と発がんの関係がメディアで報道されることもあります。
そんな中、意外なリスクとして注目を集めているのが、がんと肥満度(BMI:Body Mass Index)との関連です。

独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センターが、がんとBMIの関係を調査したものが、報告されています(Cancer Causes Control. 2004 Sep; 15(7):671-80)。これは、岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の40~69歳の男女、約9万人を対象に1990年から2001年に追跡調査したものです。
この調査研究において、女性では差はありませんでしたが、男性はBMIが21未満の痩せているグループと、30以上の非常に太っているグループで、21~29のグループと比較してがんの発生率が高かったと報告されています。

アルコール性でもウイルス性でもない肝細胞がん

また、肝細胞がんについては、メタボリックシンドローム関連要因との関係が、同じ研究グループから報告されています(Cancer Causes Control. 2009 Jul;20(5): 741-50)。これも、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄、大阪の40~69歳の男女約2万人を13年間追跡調査したものですが、高血圧、高血糖、低LDLコレステロール、高中性脂肪、肥満(BMI25以上)といったメタボ関連要因の集積があると、肝細胞がんの発生リスクが約2倍高くなることが報告されています。特に、高血糖と過体重との関連では、BMIが高くなるほど肝細胞がんの発生リスクが高くなり、高血糖も過体重もない人に比べて、これら2つが重なると、肝細胞がん発生リスクが3.4倍であったと報告されています。

この肝細胞がんと肥満の関係については脂肪肝から、肝硬変、肝細胞がんへと至ることは知られていました。もちろん、多いのはウイルス性肝炎によるものですが、内臓脂肪の蓄積が肝がんへとつながっていくケースがあるということは知っておくべきだと思います。

喫煙とならぶトピックスに!?

また、米国臨床腫瘍学会(ASCO)でも、肥満は米国におけるがんでの死亡の重要な寄与因子の一つであるとの報告がなされています。現在は、もちろん、喫煙が主なリスクファクターですが、今後は、肥満も喫煙とならんで、とくに乳がんや大腸がん、前立腺がんの発症や悪化に関して注意すべき項目とされていくでしょう。

日本も、米国ほどではありませんが、肥満のカテゴリーに入る割合が増えています。がん患者の治療において、肥満が喫煙とならぶトピックスになる日は、そう遠くなさそうです。
病棟や外来で、患者さんに「痩せた方が良いですよ」「もう少し、体重を絞りましょう」と、医師の立場から迷い無く言えるためにも、まずは、自分自身の体調・体重管理に取り組んでいくことも大切なのかも知れませんね。

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