太田祥一ブログ医の王道に向かって

〔第22回〕 スポーツ救急(1)

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スポーツと救急は私が昔からテーマにしていることのひとつです。2001年に「救急医学」という専門雑誌にゲストエディターとして編集した際の特集テーマをスポーツ救急としました。その後出版もさせていただきました(「スポーツファーストエイドマニュアル ケガの応急処置から蘇生法の実際」文光堂、2007年10月)。

昨年はスポーツ救急についてお話しする機会が2回ありました。
そのうち1回は心肺蘇生が中心で、その実習をパーソナルトレーニングキット(右写真)を用いて行いました。このキットは自己学習できるように指導用のDVDがついています。従来の実習のように数人で一体のシミュレーターでのトレーニングに比べて、実習の時間をより多く取れるというのが最大の利点です。私は多くの人に現場で質の高い心肺蘇生を実践していただくのはもちろんですが、それだけではなく、指導者になって多くの人に指導していただきたいと考えてきましたので、よりリアルに、より身体を動かしてスキルが向上する様な講習会を心がけてきました。とにかく絶え間ない胸骨圧迫を基本とした質の高い心肺蘇生を身に付けられるように実習することが何よりも重要だと思います。

心肺蘇生のトレーニングはチームビルディングの基本にもなります。リーダーを決め、メンバーがそれぞれの役割を分担し、チーム全員に明確なメッセージを伝える(コミュニケーション)、一人だけでは限界があることを理解してお互いを尊重したうえで、共有、介入、評価といった一連の流れが基本になっています。そのためリーダーのパフォーマンスは重要です。これを救命の連鎖(下図)に沿ってリレーできれば蘇生率もさらに高まると思います。低体温療法をはじめとして心拍再開後(Post Cardiac Arrest Syndrome)の集中治療も社会復帰のためにはとても重要です。

スポーツの現場では多くのプロアスリートが突然死しています。また、健康のためのスポーツでも突然の心肺停止はあり得ます。いつでも誰でもどこでも心肺蘇生ができるようになることは、2020年の東京オリンピックで東京ができる最高の本当のおもてなしに繋がると思っています。
スポーツ現場での心肺停止の原因として、肥大型心筋症の次に心臓震盪があります。これは、胸部へボールなどによって鈍的外力が加わることによって心室細動が引き起こされます。外力が加わった瞬間には脳には血流があるので少し経ってから意識がなくなるといわれています。痙攣を起こすこともあります。原因となる外力は野球のボールが最も多いので予防のためのプロテクターもあります。