太田祥一ブログ医の王道に向かって

〔第15回〕 小児救急にチャレンジ

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救急医療はその扱う範囲が多岐にわたることもあり、いろいろな勉強会が盛んに行われています。また、救急領域では以前から標準化教育が進んでいます。これはどの地域でも、どんな医療従事者が専門領域に関わらず、どのような患者さんに対しても同じように対応するために必要とされた結果だと思います。

私も一次救命処置(BLS)、二次救命処置(ACLS)だけでなく、小児二次救命処置(PALS)もAHA(アメリカ心臓協会)のコースを受講してインストラクターになり、さらに救急医学会のICLSや内科学会のJMECC等のインストラクター、ディレクター等で関わってきました。学会でも専門医更新に各種講習会受講を義務付けているところもありますので、ある期間は、土日は勉強、あるいはその指導をしていたことになります。このような講習会はエビデンスに基づいていて、一日二日で体系的に学ぶことができます。また、インストラクターコースになるとインストラクションやコミュニケーションの基本についても学ぶことができます。さらには多くの人々と知り合える、というメリットがあります。

地域医療、在宅医療でも非常に多くの勉強会が行われています。実地医家の先生方にあわせて平日の夜に行なわれている会もあります。全部出席するのは難しいですが、そのなかでも在宅リーダー研修、緩和医療研修会等を受けてきましたが、出席すればその分野が系統的に学べ、その領域の専門家とお話ができるのでとても有用です。

小児救急に関しては、小児は小さな大人ではない、という教育を受けて、また、小児救急を取り巻く状況から、成人とは違って何となく苦手意識がありました。救命救急センターでの小児救急は、外傷(特に頭部)、窒息、心肺停止等重症が運ばれてきますが、いずれも成人と同様に対応してきました。その頃前述したPALSを指導していただいた小児の救急や集中治療の先生方から、子供の救急は小さな大人と考えて対応してください、といわれたときにとても自信がついたことを覚えています。また成人と異なるバイタルサインの正常値や薬剤量は覚えていなくてもマット等わかりやすい資器材が準備されています。

PALS(PALSプロバイダーコースについて)が成人のACLSと違って特徴的なのは、小児に多い死因とその予防が強調されていることです。死因としては、自動車、自転車、異物誤飲誤嚥、溺水、火災等の不慮の事故が多いので、その予防として、チャイルドシートやヘルメットの装着、トイレットペーパーの芯を通るようなものを子供のそばに置かない、配置の変更、親の監視の強化、等の対策が記載されています。蘇生については心停止の原因として小児に多い呼吸障害、ショックについて、心停止前からの対応が強調されています。

救命のための迅速な緊急度の判断法として、視診、聴診のみで生理学的評価を行う、PAT(pediatric assessment triangle)があります。これは外観、呼吸状態(努力呼吸の有無)、循環(皮膚)の三つの要素から成り立っています。外観(Appearance)をざっと診ることによって、換気,酸素化,脳血流等身体のホメオスタシスが働いているかがわかります。観察のポイントは"TICLS"で示されています。

TICLS

呼吸状態では、異常呼吸音、呼吸努力に伴う異常姿勢、陥没呼吸、頻呼吸、鼻翼呼吸の有無を確認します。 皮膚への循環が悪い場合には、心拍出量が低下し主要臓器の血流が十分でないことになります。具体的には、皮膚や粘膜の蒼白、四肢冷感、まだらな斑状皮疹、チアノーゼ等を確認します。このような考えを用いた外来トリアージは小児で進められ、カナダでの指標が用いられてきました(P-CTAS)。これは先のPATを用いて概要を評価したうえで、その後、意識、呼吸数、酸素飽和度(SpO2)、心拍数、体温等を用いて5つのトリアージレベルに分類する方法です。最近ではJTASという日本の基準で成人と子供を区別することなく外来でのトリアージが行われています(JTASコースについて)。

このよう私は小児救急について経験が先行しましたが、体系的にも勉強してきました。先日も東京都主催の小児在宅医療の講習会に出席して小児在宅医療の必要性と実際を伺うことができました。これからは今までの経験を元に、さらに勉強して積極的に小児の在宅医療に取り組んでいきたいと考えています。