太田祥一ブログ医の王道に向かって

〔第9回〕 AED解禁から10年

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何気なく新聞を見たところ、自動体外式除細動器が一般市民も使用できるようになって10年が経つ、という記事を目にしました。
AEDに関しては、このマーク(右図)に関わっていたこともありましたし、また、AEDを用いた心肺蘇生法の教育についても、医療関係者の他、スポーツ指導者や愛好者、コメディカルや医療系専門学校教員等に広めてきました。

駅などの公共の場にAEDが設置されているのはもはや当たり前の光景になってきました。これをPAD(Public Access Difibrillation)といい、公共の場所で一般人が使用できるAEDという意味です。日本のPADは欧米より遅れて始まりましたが、その有用性はNEJMにいち早く報告され脚光を浴びました("Nationwide Public-Access Defibrillation in Japan")。

今日の報道によると、設置数が増えても、一般市民の使用率は3.7%(2012年)に過ぎないそうです。AEDで除細動された人々の1か月後の生存率が41.4%(12年)に上がっています。何もしなければほぼ100%亡くなる命も半数近くが生存されているというのはとてもすごい数字だと思います。
一方で、現場で除細動されなかった人たちの1か月後の生存率は10.3%とかなり低く、ここまで開きがあると、倒れる場所で運命が変わる、ということにもなりかねません。誰でもどこでも使える社会になってほしいものです。

AEDの普及には今までもいろいろな試みがなされてきました。
救急医療財団では講習団体を認定したり、AEDの設置場所を公開したりしています(日本救急医療財団)。
講習も全国の消防署や日本赤十字社はもちろん、自動車免許取得時にも広く行われていますが、最近では自宅でDVDを見ながら人形を用いて実技も学べるパーソナルキットもレールダルから販売されています。

私自身は、「サカイク」というサッカー少年へのHPでスポーツ中に起こりやすい心臓震盪やAEDについてお話ししたり(サカイク)、キッザニアの病院パビリオンでのAEDを用いたアクティビティーのお手伝いをしています(キッザニア)。
また、救急医学会救命救急法検討委員会で行った病院へのアンケート調査結果から病院のAEDの設置状況や外来や病室以外のロビー等の公共の場の設置も有用ではないか、レンタルされたAEDの使用状況の事後検証結果から、海岸やマラソン大会等季節的なテンポラリーなイベントでAEDをレンタルしておくことは有用ではないか、等の論文を報告しています。

■文献紹介
"Utilization of automated external defibrillators installed in commonly used areas of Japanese hospitals"(SIGNA VITAE 2013; 8(1): 21 ? 24)
"How, when, and where have rental automated external defibrillators been used in Japan"(Journal of Cardiology 64(2014)117-120)

スポーツドクター養成の講習でもお話ししましたが、2020年東京オリンピックに向けて、いざという時には誰でもどこでもAEDを用いた蘇生ができるようになることが一番のおもてなしではないかと考えています。
最近では、長距離は熱中症が心臓のイベントよりも死亡リスクが10倍高いと報告されました(The American College of Cardiology)。
スポーツ中にはいろいろなことが起こっていますので、高齢社会でのスポーツにはいろいろな配慮が必要だと思います。熱中症の大多数は予防できるので、予防法についての啓発は今後ますます重要になると思います(東京医科大学病院「熱中症に対する注意とその予防について」)。

■文献紹介 「夏季スポーツにおける救護体制」(体育の科学 Vol. 64 No. 7 2014; 481-487)