1. 〔第6回〕 高齢社会に向けて、死亡診断書について復習しよう

太田祥一ブログ医の王道に向かって

〔第6回〕 高齢社会に向けて、死亡診断書について復習しよう

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この書類は、医師でなければ書けない、その方の人生最後の書類なので正しく理解しておきたい、間違いなく丁寧に書きたい、と考えてきました。
医師には作成義務があります(医師法19条)。
これは診断がついている方が診療中にその病気で亡くなった際に書く書類で、
 (1)人間の死亡を医学的・法律的に証明する。
 (2)死因統計の資料となる。
という2つの意義があります。

死因を確定することは高齢社会ではますます難しくなると思います。死因としては、肺炎による呼吸不全のように、病態として明らかな場合にはいいのですが、疾患の終末期の状態としての心不全や呼吸不全の記入を控えることになっています。
原死因は原則的には’I欄’の最下欄になっており、その原因が’II欄’に書かれている場合にはその疾患が原死因とされます。高齢者で死因がない、いわゆる自然死の場合のみ老衰を用いることになっています。

また、’I欄’の(ア)が外因によるものでも、その原因イ)が内因性疾患であれば病死として扱います。逆の場合、外因が原因の内因性疾患による死亡は外因死として扱います。
診断がついていない、診断がついている病気で亡くなったのではない場合は異状死として警察に届けます。これは医師法第21条に決められていることです。
異状死体については日本法医学会からガイドラインが出されていますが、その一部を下記にまとめます(異状死ガイドライン:日法医誌;1994 第48巻, 第5号, pp.357-358)。

【1】外因による死亡(診療の有無、診療の期間を問わない)
 (1)不慮の事故
   A.外傷(交通事故、転落、熱傷、電撃症等)
   B.溺水
   C.窒息
   D.中毒
   E.異常環境
   F.その他の災害
上記に分類されない不慮の事故によるすべての外因死。
 (2)自殺
 (3)他殺
 (4)原因が不詳の外因死
【2】外因による傷害の続発症、あるいは後遺障害による死亡
【3】上記【1】または【2】の疑いがあるもの
【4】診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いがあるもの
【5】死因が明らかでない死亡
 (1)死体として発見された場合。
 (2)一見健康に生活していたひとの予期しない急死。
 (3)初診患者が、受診後ごく短時間で死因となる傷病が診断できないまま死亡した場合。
 (4)医療機関への受診歴があっても、その疾病により死亡したとは診断できない場合(最終診療後24時間以内の死亡であっても、診断されている疾病により死亡したとは診断できない場合)。
 (5)その他、死因が不明な場合。
(日本法医学会教育委員会(1994年当時):柳田純一(委員長)、木内政寛、佐藤喜宣、塩野寛、辻力、中園一郎、菱田繁、福島弘文、村井達哉、山内春夫)

【4】についてはまだまだ議論の多いところですが、つまり、異状死とは「外因と死因が確定できない死亡」ということになります。この場合は、警察による検視(検死ではない)が行なわれます。この場合にも死因を確定しなくてはならないので、検視後に医師(東京23区は監察医務院、それ以外は嘱託警察医)が検案して診断書でなく検案書を書きます。

警察に届けるということは必ずしも解剖することになるわけではありません。検死の意味は解剖ではなく、医師が検案して死亡と判断することです。
解剖には司法、行政、病理があります。司法解剖は、犯罪の恐れがある遺体に対しその原因を究明するために行われる解剖、行政解剖は、検案によっても、死因が判明しない場合に行なう検査で、医学的な根拠で研究を含めて行われるのが病理解剖です。

では、医師が最期のその場に居合わせた場合以外はどのようにすれば良いのでしょう? 医師法第20条には無診察診療の禁止が決められています。つまり診療しないで診断書を書いてはならない、ということですが、死亡診断書は受診後24時間以内に死亡した場合には、死亡時に診察していなくても交付できるということになっています。
平成24年に厚労省から、受診後24時間以上でも死亡原因が今まで診療している疾患での死亡が予期できる場合には、まず診察を行い、その上で生前に診察していた傷病が死因と判定できれば死亡診断書を発行しても良いという通達が出ています。
もちろん、死因が診察していた疾患と異なる疾患であれば、前述したような、死因が確定できないという理由で異状死体となり、警察の検視を受けるということになります。

死亡したところ及びその種別での「5.老人ホーム」とは養護、特別養護、軽費、有料老人ホームで、グループホームやサービス付き高齢者住宅は「6.自宅」になります。
手術は、’I欄’および’II欄’の傷病に関係のあるもののみ記載し、術式と診断名に関連する所見を記入します。
厚生労働省から記載についてのマニュアルが出ていますので参考にしてください。(マニュアル)

安楽死はわが国では法的に認められていません。一方、緩和医療、ホスピスという医療や医療を行う場が広がってきています。移植も死後だけでなく脳死下で行われるようになりました。人生の最期まで選択肢ができてきました。