太田祥一ブログ医の王道に向かって

〔第4回〕 腹部救急疾患のドクターG

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3月6、7日に第50回日本腹部救急医学会が行われました。この学会は、内科、外科、救急、放射線他、多岐にわたる診療科が腹部救急というテーマで議論する学会です。発足当初から若手の登竜門として位置づけられており、この50回のテーマも「志を未来へ繋ぐ」ということで、今回は特に若手に焦点が当てられた企画が数多く取り上げられていました。

私が事務局長を務めた第39回日本救急医学会(行岡哲男会長)もこれからの救急を担う人たちに少しでも役に立つように、多くの若手医師が救急を目指したくなるように、を第一に考えて企画しましたのでこのことも懐かしく思い出しました。

記念すべき50回の会長は私の高校のクラスメイトであった北川雄光教授が担当され、私は教育セミナー8「腹部救急疾患のドクターG」の司会を仰せつかりました(プログラム)。NHKのテレビ番組「総合診療医 ドクターG」はHPで見るに、総合診療医が司会をして研修医たちが診断を推理形式で進めて行くというものでしたが、それを腹部救急医学会でやってみよう、というのです。これは会長自らの発案で実は、かなり気合が入っていたそうです。

テーマが腹部救急ですのでその内容はもちろん診断だけでなく治療にも広がりますし、それも学会という場、つまり生放送で、経験豊富な先生方が聴衆です。準備する部隊は、共同座長はこの方もまたクラスメートの長谷川雄二先生(医療法人社団悦伝会目白病院院長)で、症例呈示及び準備担当は北川先生の教室の肝胆膵・移植の日比泰造先生というメンバーです。症例は学会の理事の先生方が今までの経験がひしひし伝わってくるような内容をお選びいただき、壇上に登る後期研修医は各施設の長から推薦された選りすぐりの若手です。

以前より何事でも私の具体的な準備は直前ですが、それまでになるべく時間をかけて頭の中で浮かせて想いをめぐらせ、アイデアをまとめる、ということをしてきました。今回ばかりはアイデアどころかイメージもまとまらず時期が近づいてきます。そこに日比先生からそろそろ打ち合わせしましょう、とメールがあり、日程調整をしたところ、なんと日比先生が国際学会から帰られたその日の夜が一回目の打ち合わせでした。成田から直行されたのに微塵も疲れを見せずに説明される先生にやる気を感じ、そこから私の気持ちもだんだん盛り上がってきました。

そうなるとしめたもので、どんどんアイデアは出ますし、症例やプレゼンテーションの内容等臨床的な詳細だけでなく、(いつもの悪い癖で)演出についても気になってきます。あとで伺うと日比先生の準備の仕方も私と同じだったようです。調べ物や準備内容が増え、打ち合わせも都合のつく時間や場所で連日となり、コンベンション会社の担当の方も含めてどんな要求にも皆さん嫌な顔一つせず、良いものを作ろうと一丸となって当日まで進めることができました。

私が担当した一番目の症例で研修医にした最初の質問で、その答えが図星だったので、これには正直なところ度肝を抜かれました。会場は暗いので私の反応はばれないだろうと思っていましたが、北川会長には私の顔色が変わったのを見透かされていたようです。参加した研修医の優秀さにはびっくりしました。さすがに施設の責任者から推薦され、それならと自ら登壇しただけのことはあります。北川会長からも、予想以上の盛り上がりで研修医の理論的思考回路に驚きました、大変頼もしく、腹部救急診療の未来は安心です、私にとっても忘れ得ぬ思い出になりました、との言葉がありました。

異なる大学、病院で勉強、研修しても、緻密な理論的思考が同じようにできるということは、施設が違っても指導が同じということで、これは医学教育が素晴らしいということです。学会を挙げて若手を盛り上げて、社会的視点からの学術的貢献や、より良い腹部救急医療に向けた社会体制・医療体制造りを目指すこの学会の成果だと思いますが、すべての臨床領域でもこのような教育が進めば良いと思います。
北川先生が副題とされた福澤先生の「進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む」の意味を実感できました。
私も同じメンバーでまた次も何か仕事がしたい、と思える、楽しくやりがいのある仕事でした。またよろしくお願いします。