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終章 還るべき場所があるということ

毎年、風薫る5月になると、「しのざき整形外科クリニック」の玄関にはツバメが巣をつくる。たぶん「澁江整形外科」の頃から例年そうなのだろう。 「なるほど、帰巣本能か」篠﨑俊郎は、自分がここにいることの意味を重ねあわせる。 6月には、ヒナが数羽生まれ、親ツバメは毎日子育てに忙しい。ヒナは、巣で3週間ほど過ごし、巣立ちの時期を迎える。そして、大空へと羽ばたいていくのだ。

篠﨑俊郎・夏子夫婦も、子育てに忙しい日々を過ごしている。「子をもって知る親の恩」と言うが、俊郎も父・正俊の子育てについて思い返すことがある。「実に厳しい父だったが、自分を自由に羽ばたかせてくれた」

父は俊郎に、医者になれとも、医学部へ進めとも、一度も言わなかった。思えば、彼は高校時代、工学部でロボット工学を学ぶ夢も心に描いていた。大学受験は、医学部とともに工学部を併願さえした。そのときも、父は何も言わなかった。 しかし、俊郎は結局、迷うことなく医学部に進み、ごく当たり前のように父と同じ整形外科を選んだ。岐路に立ったとき、人は進むべき道を進むものだと、あらためて彼は思う。そして還るべき場所があれば、 必ずそこに還るものだとも…。

医師として、患者さんに一心に向きあい、そして地域の医療機関としての責務を果たしていくことが、自分には課されている。 俊郎は、思う。 「それが、父の志をしっかりと継承していくこと」なのだと。

「しのざき整形外科クリニック」 篠﨑俊郎院長

この物語は、総合メディカル初の第三者医業継承の取り組みを
当時の医師やそのご家族、関係者の取材をもとに書き下ろしたものである。

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