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内科の医院開業動向情報

内科クリニックを開業する際の戦略のポイント!動向や必要な資金は?

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「内科医が収入を上げるためには、開業したほうがいい?」
「内科医としての専門性を生かして地域に求められる診療をしたい」
内科を選ぶ医師にとって、開業という選択肢は常に頭の中にあるのではないでしょうか。
内科は全身のさまざまな症状を扱うことから患者さんが最初に受診する科となりやすいため、開業医というスタイルに親和性が高い診療科の一つです。地域で頼られる「かかりつけ医」になるためには、内科の幅広い知識と経営戦略が必要です。

そこでこの記事では、内科クリニックの開業についてまとめました。
ご自身でクリニックを経営したい内科医の方は、ぜひ参考にしてください。

内科をとりまく動向

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厚生労働省の「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(1)によると、内科を主たる診療科にしている医師は6万1,514人で、医療施設に従事する医師全体(32万3,700人)の19.0%を占めています。また診療所に従事する内科医は3万9,564人で、診療所に従事する医師全体の36.9%を占め、こちらも最も多い割合となっています。
厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)」(2)によると、内科を標榜する診療所は全国に6万4,143施設あり、これは施設全体の62.5%を占める割合となります。
つまり、内科を主とする診療所(クリニック)は統計的に多く存在し、比較的他院との競争が激しい科と言えるでしょう。
内科を標榜する場合、一般内科のみか、循環器内科、呼吸器内科、神経内科といった一般内科+専門領域とするかによって、開業戦略が変わってきます。

内科クリニックの開業資金、一般内科のみか専門領域も診るかによって変わる資金額

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クリニック開業を考えるにあたり、まず問題となるのが資金面です。開業資金は、「設備資金」と「運転資金」にわけられます。

設備資金

設備資金の一例として、下記の項目が挙げられます。

内科クリニック開業に必要な設備資金
  • 土地・建物購入費(または賃料)
  • 物件を借りる際の保証金
  • クリニックの内装費
  • 医療機器・設備・医薬品の購入費
  • 電子カルテ関連費用
  • オンライン予約システム関連費用

一般内科のみで開業する場合、開業する地域によって戦略が大きく異なります。大都市部では、在宅医療や内科専門領域の診療をおこなうクリニックが多く存在するため、患者さんが来るのを待つ一般内科外来のみの診療所が勝ち残るのは難易度が高いかもしれません。

そのため、一般内科外来のみの場合は郊外で開業することも選択肢に入れるとよいでしょう。大都市圏の郊外には、かなりの人口が密集している地域や、開発が進み新しい人口が流入している地域があります。将来的に人口を一定数保つことができる地域を選択することで、集患しやすくなるでしょう。

一般内科+内科専門領域で開業する場合、高齢者を中心に診るのであれば、住宅街や駅の近くなどわかりやすい立地が適しています。
患者さんが長時間歩いてきたり、階段を昇ってきたりするような立地ではなく、診療所の近くに駐車場がある、2階以上であればエレベーターが設置されているなど、高齢者の方でも利用しやすい設備を用意することが望ましいでしょう。

また自院で導入する設備を絞る場合は、近隣の医療機関と連携するという手もあります。提携できる薬局や病院、競合する医療機関を確認してから立地を決めましょう。

運転資金

次に、運転資金としては、下記の項目が挙げられます。

内科クリニック開業に必要な運転資金
  • 従業員給与/福利厚生費
  • 広告宣伝費
  • 薬剤費
  • 家賃
  • 医師会費用など

開業前に資金計画を立て、無理のない経営を目指しましょう。

従業員を必要以上に雇ってしまうと人件費が経営を圧迫してしまいます。開業時は最低限の従業員だけを雇用して、患者さんが増えてきたら従業員の数を増やすようにしましょう。

内科クリニックの収入源や資金繰りについては、次の章で詳しく解説します。

内科クリニックの収入源と資金繰り

全国の「令和4年度 保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」(3)~(49)を平均すると、「内科(人工透析以外(在宅))」がレセプト(診療報酬明細書)1件当たり1,498点、「内科(人工透析以外(その他))」が1,196点で、302点の差があります。

なかでも関東各県の点数を平均した診療科別平均診療点数は、「内科(人工透析以外(在宅))」がレセプト(診療報酬明細書)1件当たり1,728点、「内科(人工透析以外(その他))」が1,231点で、497点の差がありました。関東は全国と比べても、1件当たりの点数の差が大きいことが分かります。

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  内科(人工透析以外(在宅) 内科(人工透析以外(その他) 点数差
関東平均 1,728 1,231 497
東京都 1,996 1,364 632
神奈川県 1,970 1,363 607
埼玉県 1,600 1,088 512
千葉県 2,188 1,362 826
群馬県 1,385 1,1265 260
栃木県 1,508 1,168 340
茨城県 1,447 1,145 302

在宅診療をおこなう場合は、「訪問診療料」の点数も加算されるため、来院での診療よりも点数が高くなります。

また、関東各県の診療科別平均診療点数を比べると、地域によって在宅診療の有無による点数差が大きく異なります。差が最も大きいのは千葉県で826点、最も小さいのが群馬県で260点です。開業の際は、こうした地域ごとの平均診療点数も加味して考えるといいでしょう。

また内科だけに限った話ではありませんが、クリニックでは基本的に看護師と医療事務を採用しています。

以下の点を考えて採用人数や各職種の採用比率を検討しましょう。

  • 診療スタイルに合うよう、看護師や事務スタッフの採用人数を決める
  • スタッフの質とコスト面を考えて、正看護師と准看護師の採用比率を決める
  • コスト削減のため、子育て中や介護中の正看護師のパート採用を検討する
  • 正社員とパート社員の比率を考える
  • 医療事務も会計業務もできる事務スタッフを採用する

内科専門領域によって採用するスタッフの職種や人数も変わってきます。一例として、次のような点を押さえておくといいでしょう。

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科目 概要
呼吸器内科 看護師や受付に加えて、レントゲンやCT撮影をする診療放射線技師を採用するクリニックもある。呼吸リハビリを実施する場合は、理学療法士・作業療法士の採用も必要。
糖尿病内科 栄養指導をおこなうために管理栄養士を採用しているクリニックもある。
脳神経内科 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を採用し、リハビリをおこなうことで患者さんの満足度を向上させる「通所リハビリ(介護保険適用)」関連の点数も取得できるため、サービスメニューが増え、更なる売上向上も期待できる。

内科クリニック開業において注意すべき3つのポイント

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実際に開業するときに注意すべきポイントは、以下の3つです。

  • ポイント1:「何をする or 何をしないか」開業のコンセプトをしっかり決める
  • ポイント2:プライバシーや感染対策に配慮した内装
  • ポイント3:さまざまな媒体を駆使したマーケティング

順番に解説していきます。

ポイント1:「何をする or 何をしないか」開業のコンセプトをしっかり決める

一般内科だけを掲げて経営するのか、一般内科の標榜に加えて他の内科以外の領域も掲げるのかで、必要な行動は異なってきます。
一般内科だけを標榜する場合、「どのような患者さんを受け入れ、どのような疾患は診ないか?」をしっかり決める必要があります。
一般内科も標榜しつつ他の標榜科目も掲げる場合、開業する地域に応じた戦略を検討しなければいけません。開業する地域の他の医療機関の標榜科目は、事前に調査しておきましょう。周囲に小児科がない場合、あえて一般内科小児科と標榜すると保護者が選びやすくなります。

在宅診療をするかしないかでもレセプト平均点数が大きく変わってくるので、コンセプトはしっかり決めておきましょう。

ポイント2:プライバシーや感染対策に配慮した内装

採尿や内視鏡検査をおこなうことがあるため、共用トイレとは別に広めの採尿用トイレを作ったり、男女別のトイレを設置したりしましょう。
また、患者さんのプライバシーに配慮した空間作りや感染症対策を考慮した内装も大切です。広めの待合室を設ける、複数の診察室を設けるなどの工夫をおこないましょう。
車いすや酸素ボンベが必要な患者さんも受診されるため、廊下幅を広くするなどの配慮もあるとよいでしょう。
特に近年は新型コロナウイルスの流行により病院・クリニックでの感染を心配している方が多くいらっしゃるため、感染対策に配慮していることをアピールすることは重要になっています。

ポイント3:さまざまな媒体を駆使したマーケティング

内科の中でも特に、循環器内科や脳神経内科は文字だけでは「何を診てもらえるのかわからない」診療科です。そのためどんな症状を診ているかがわかるように、「高血圧」や「認知症」などの症状名をホームページに記載する等、認知してもらうための工夫が必要です。
また内科は若い世代から高齢者までさまざまな年齢の患者さんを診療することが多いでしょう。新聞や看板、チラシ、Web広告など、幅広くマーケティングをおこなうことで集患しやすくなります。

内科クリニックの開業戦略3つ

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内科クリニックの開業戦略は、以下の3つです。

  • 戦略1:地域の医療機関との連携を強化する
  • 戦略2:高齢者向けの内科クリニックとして在宅診療を取り入れる
  • 戦略3:幅広い患者さんの満足度を向上させるため、土日祝も診療する

開業する前に把握しておきましょう。

戦略1:地域の医療機関との連携を強化する

CTやMRIなどの高度医療機器を開業当初から導入するクリニックもありますが、敷地面積の問題から設置しない場合もあるでしょう。その際は、地域にある他の病院との連携を築いたり、近隣の診療所と協力をしたりすることが重要です。
連携を強化しておくことによって病院や近隣の診療所から患者さんを紹介してもらうこともできます。マーケティング費のかからない集患方法と言えるでしょう。

戦略2:高齢者向けの内科クリニックとして在宅診療を取り入れる

高齢社会がますます進む日本では、在宅診療のニーズがさらに増加していくと考えられます。
レセプト平均点数も高くなっており、在宅診療をおこなうことはさまざまなメリットがあるといえます。地域の医療機関やケアマネジャーなどと連携し、内科疾患で受診が必要な場合には紹介してもらえるようにしておくとよいでしょう。

戦略3:幅広い患者さんの満足度を向上させるため、土日祝も診療する

平日は仕事が忙しくて受診できない方も多くいらっしゃいます。土日に体調が悪くなることも少なくありません。
土日祝日に診療をおこなうことで、患者数の増加が期待できます。また、いつでも診てもらえる安心感が生まれることで患者さんの満足度が高くなり、かかりつけ医として継続して受診してくれる可能性もあります。
このように、内科クリニックの開業にはいろいろな戦略が考えられます。

まとめ

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内科を主とする医師数やクリニック・診療所数は多く、内科クリニックの開業は競争が激しい世界です。
まずは、コンセプトを明確にし、経営戦略を立てて、マーケティングをしっかりおこなうことが、開業の成功へ繋がります。
またクリニックをうまく経営し患者さんを集めるには、地域の医療機関との連携体制を作ることもとても大切です。
経営やマーケティングのポイントをしっかり押さえて、内科の開業を成功させましょう。開業に関して不明点があれば、ぜひフォームからお問い合わせください。

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参考URL
  1. 厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
  2. 厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)」・病院報告の概況
  3. 北海道厚生局「令和4年度 北海道内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  4. 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(青森県)」
  5. 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(岩手県)」
  6. 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(宮城県)」
  7. 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(秋田県)」
  8. 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(山形県)」
  9. 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(福島県)」
  10. 関東信越厚生局「令和4年度 東京都内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  11. 関東信越厚生局「令和4年度 神奈川県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  12. 関東信越厚生局「令和4年度 埼玉県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  13. 関東信越厚生局「令和4年度 千葉県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  14. 関東信越厚生局「令和4年度 群馬県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  15. 関東信越厚生局「令和4年度 栃木県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  16. 関東信越厚生局「令和4年度 茨城県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  17. 関東信越厚生局「令和4年度 新潟県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  18. 関東信越厚生局「令和4年度 山梨県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  19. 関東信越厚生局「令和4年度 長野県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  20. 東海北陸厚生局「令和4年度 富山県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  21. 東海北陸厚生局「令和4年度 石川県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  22. 東海北陸厚生局「令和4年度 岐阜県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  23. 東海北陸厚生局「令和4年度 静岡県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  24. 東海北陸厚生局「令和4年度 愛知県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  25. 東海北陸厚生局「令和4年度 三重県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  26. 近畿厚生局「令和4年度 福井県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  27. 近畿厚生局「令和4年度 滋賀県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  28. 近畿厚生局「令和4年度 京都府内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  29. 近畿厚生局「令和4年度 大阪府内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  30. 近畿厚生局「令和4年度 兵庫県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  31. 近畿厚生局「令和4年度 奈良県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  32. 近畿厚生局「令和4年度 和歌山県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  33. 中国四国厚生局「令和4年度 鳥取県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  34. 中国四国厚生局「令和4年度 島根県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  35. 中国四国厚生局「令和4年度 岡山県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  36. 中国四国厚生局「令和4年度 広島県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  37. 中国四国厚生局「令和4年度 山口県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  38. 四国厚生局「令和4年度 徳島県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  39. 四国厚生局「令和4年度 香川県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  40. 四国厚生局「令和4年度 愛媛県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  41. 四国厚生局「令和4年度 高知県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  42. 九州厚生局「令和4年度 福岡県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  43. 九州厚生局「令和4年度 佐賀県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  44. 九州厚生局「令和4年度 長崎県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  45. 九州厚生局「令和4年度 熊本県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  46. 九州厚生局「令和4年度 大分県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  47. 九州厚生局「令和4年度 宮崎県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  48. 九州厚生局「令和4年度 鹿児島県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  49. 九州厚生局「令和4年度 沖縄県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」

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