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美容外科の医院開業動向情報

美容外科で開業するには?失敗しないために必要な経営戦略を紹介!

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美容外科は華やかな診療科ですが、資本力のある大手の診療所は設備が整っているため、その近隣で開業しても撤退となってしまう可能性があります。美容外科クリニックの開業を成功させるためには、業界の動向を把握したうえで経営戦略を立てなければいけません。

この記事では美容外科で開業する際の失敗しないポイントを解説します。ぜひ参考にしてください。

美容外科クリニックの5つの特徴

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美容外科クリニックの開業においては、他科と異なる5つの特徴があります。

美容外科クリニックの特徴
  • 美容外科医の数は少ない
  • 診療所に従事する医師の平均年齢が若い
  • 美容外科クリニックの数は美容外科医師数よりも多い
  • 開業エリアが限られる
  • 競合が乱立している

それぞれ解説していきます。

美容外科医の数は少ない

厚生労働省の「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(1)の調査では、美容外科医は医師全体(32万3,700人)のわずか0.3%、942人でした。その内病院に従事する美容外科医は16人、診療所に従事する美容外科医は926人、となっています。

診療所に従事する医師の平均年齢が若い

同調査によると、診療所に従事する美容外科医の平均年齢は43.4歳です。診療所に従事する医師全体の平均年齢は60.2歳であり、その差は約17歳となっています。

美容外科クリニックの数は美容外科医の数よりも多い

厚生労働省の「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」(2)によると、全国に美容外科を標榜する診療所は1,404施設、美容外科医師数942人の約1.5倍となっています。

実は美容外科クリニックは「美容外科医」だけが開業しているのではありません。皮膚科医や形成外科医、外科医などさまざまな医師が開業しています。そのため、美容外科医の人数よりも多くの美容外科クリニックが乱立する結果となっています。

開業エリアが限られる

美容外科クリニックは他科と異なり、大都市部に集中しているという特徴があります。
住宅街や駅から離れた場所では集客が難しいと考えられているため、人気の開業エリアはいずれも都市部や人口密集地・繁華街です。

競合が乱立している

美容外科クリニックの開業に適したエリアには競合相手が乱立しているため、新規開業のハードルは年々高くなっています。

全国展開している大手美容外科チェーンやTV、SNSで認知された医師が経営している診療所もあるため、そういった競合相手といかに差別化を図るかが成功の鍵となっています。

美容外科クリニックの開業資金

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クリニック開業を考えるうえで、初めに検討するべき課題は「資金」です。開業資金は、「設備資金」と「運転資金」にわけることができます。
美容外科クリニックの開業資金を、項目ごとに解説していきます。

設備資金

設備資金の一例として、下記の項目が挙げられます。

美容外科クリニック開業に必要な設備資金
  • 土地・建物購入費(または賃料)
  • 物件を借りる際の保証金
  • 診療所の内装費
  • 医療機器・設備・医薬品の購入費
  • 電子カルテ関連費用
  • オンライン予約システム関連費用

美容外科クリニックの特徴として、患者さんは「自宅の近くの診療所に通う」のではなく「自分の納得のいく施術を受けられる診療所に通う」傾向にあります。ターミナル駅やハブ駅の駅前で開業する美容外科クリニックが多いのは、他科よりも広いエリアから集患できる可能性があるためです。

また美容外科クリニックを受診する患者さんは、開院する医師の知名度や施術内容などを重視して選ぶ場合もあります。そのため商業ビルの一室で開業をしても問題はありません。少し入り組んだ場所で開業する場合は、駅からのわかりやすいアクセス方法や詳しい地図をホームページ上に掲載しておきましょう。
美容外科クリニックの物件選びで重要視すべきポイントは、「綺麗な建物」を選ぶことです。患者さんの多くが女性であるため、以下の点は必ずチェックしておきましょう。

  • 仕事帰りやプライベートでもアクセスしやすいか?
  • 建物は女性でも入りやすいか?
  • エレベーターや廊下は清潔感があるか?
  • 風俗など女性に好まれない店舗が同じビル内に入居していないか?

また院内の設計においても、注意しなければいけない点が複数あります。

美容外科クリニックには美的意識の高い患者さんが多く来院するため、高級感や清潔感には気を配りましょう。特に受付や待合室など、患者さんの目に触れやすい場所は印象に残りやすいため注意が必要です。
また「美容外科に通っていることを他の人に知られたくない」患者さんもいらっしゃるため、プライバシーにも十分に配慮する必要があります。診断やカウンセリングの声が診察室の外に漏れない設計や、患者さん同士ができるだけすれ違わない動線を考えて実現しましょう。
さらに可能であれば広めのパウダールームを施術室ごとに設置すると、患者さんが身なりを整えやすくなります。
機器の設置を考え、処置室のスペースとコンセントの設置箇所にも気を配る必要があります。

美容外科クリニックの集患の要となるのは「最先端」で「効果の期待できる医療機器」を揃えていることです。例えば、レーザー機器やフォトフェイシャルなど、美容系の医療機器は1台1台が高額なため、機器の購入・レンタルは開業初期の経営を圧迫する可能性があります。しかし、最新鋭の設備や美容系医療機器を取り揃えることで、クリニックの印象をハイレベルに見せることができます。資金の許す範囲にはなりますが、開業当初から診療所のブランディングに合わせた機器の選定と導入をおこないましょう。

運転資金

次に、運転資金としては、下記の項目が挙げられます。

美容外科開業に必要な運転資金
  • 従業員給与/福利厚生費
  • 広告宣伝費
  • 薬剤費
  • 家賃

多くの美容外科クリニックが自費診療をおこなっています。プチ整形やメスを使用しないシミのレーザー治療、ボトックス注射などの単価はそれほど高額ではありませんが、高度肥満に対する腹部脂肪切除術などの外科手術は、単価が100万円を超えることもあります。どれだけ患者さんに興味を持ってもらえるか、集客に繋げられるかが成功の秘訣といえるでしょう。

美容外科クリニックで複数の患者さんを診察する体制を作るためには、受付スタッフ・カウンセラー・看護師を雇用する必要があります。開業当初は患者さんに気軽にクリニックを利用してもらうため、医療資格のないスタッフでも施術が可能な「エステメニュー」や看護師が医師の指示のもとにおこなう「医療脱毛」でキャンペーン価格を設定するなどして、施術メニューを複数用意しておくのがおすすめです。

また美容外科クリニックの雇用で重視したいのは、スタッフの見た目です。美容外科クリニックのスタッフは、そのクリニックのイメージを左右すると言っても過言ではありません。清潔感があり美意識の高いスタッフは患者さんの興味・関心を惹くことができます。最近はSNSなどで美容外科クリニックを選ぶ患者さんも多いため、「SNS映えするスタッフ」の雇用も検討してみるとよいでしょう。

手術をおこなう美容外科クリニックでは、手術に対応できる看護師の雇用が欠かせません。美容外科クリニックの看護師は手術の対応など、より専門性の高い看護技術が求められるため、厚生労働省の「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和3年 実施-」(3)調査結果に記載がある一般クリニックの平均年収300~400万円よりも給与水準が高額になっています。

受付やカウンセラースタッフは兼務することも多いですが、患者さんの話をしっかりと聞きながらサービスを売り込むこともできるスタッフが見つかると大変心強いです。営業やコールセンターなどの経験をもつスタッフを採用するとよいでしょう。

そして美容外科クリニックにおける職員への福利厚生として多くのスタッフが期待しているのは、一部の美容施術を安価で利用できるということです。雇用されたスタッフがクリニックでさまざまな施術を受けることで美を維持できているというのは、クリニックの技術力のアピールにも繋がるため、多くの美容外科クリニックではスタッフ向け施術を雇用の売りにしています。

さらにスタッフが契約を結んだ場合は、何%かのインセンティブが発生するクリニックがほとんどです。スタッフのやる気にも繋がるため、契約単価や月間の契約件数に合わせたインセンティブも検討することをおすすめします。

美容外科クリニック開業において重要視したい「SNS戦略」

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SNSの活用は、美容外科クリニックの経営にとって非常に重要です。

厚生労働省の「令和2(2020)年受療行動調査(概数)の概況 (4)では、医療機関にかかる時に「情報を入手している」人は外来患者の80.0%、その内23.5%の人が「医療機関が発信するインターネットの情報」を頼りにしていると回答しています。

乱立する競合相手との差別化を図るため、SNSを利用した広告戦略を重視している美容外科クリニックが増えてきています。クリニックの内装や設備を動画で解説したり、医師自らが手術方法やカウンセリングの実際の様子を動画で解説したりするのも患者さんには人気の高いコンテンツです。

情報は1度公表したらそのままにするのではなく、定期的にアップデートすることが大切です。特にSNSでは定期的な情報発信をおこなうことが患者さんの認知に繋がり、結果として集患に繋がります。

ちなみに美容外科クリニックのSNS利用においては、厚生労働省の「医業もしくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」(5)の遵守が求められます。

2018年6月1日より、これまで広告の扱いを受けていなかったホームページにも医療広告ガイドラインが適応されることになりました。さらに平成30年におこなわれた改正ではより細かい部分まで適応されています。医療広告ガイドラインに違反した場合、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課されます。クリニックのイメージダウンは避けられません。

美容系診療をおこなうクリニックにおいては特に細心の注意を払いましょう。
厚生労働省は定期的に「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(6)をおこない、令和4年3月にも医療広告ガイドラインの改定をおこなっています。美容外科クリニックを経営しながら、最新の動向をキャッチし続けるのは難しいため、資金に余裕がある場合はホームページやSNSの運用代行会社に依頼するのも選択肢の1つです。

美容外科クリニックで他院との差別化を図る経営戦略

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競合相手の多い美容外科で、他院との差別化を図る経営戦略を3つ紹介します。

  • 専門クリニックとしての開業
  • 男性に特化した美容診療所の開業
  • 複数の医師を雇用した多角的な経営

開業前に把握しておきましょう。

ポイント1.専門クリニックとしての開業

開業当初はどのように自分のクリニックをブランディングしていけばよいのか、競合相手との差別化をどのように図るか、悩まれる医師の方も多いでしょう。

さまざまな機器を導入して多角的に経営しようとしても、開業当初でクリニックの認知度が低い状態では満足な集患に繋がらず、経営を圧迫する可能性があります。

競合相手との差別化を図るための戦略の1つとして、専門分野に特化したクリニックの立ち上げを検討しましょう。

専門分野の一例としては「脂肪吸引」「豊胸専門」「二重施術など顔の美容整形専門」などが挙げられます。専門クリニックは患者さんにとってもわかりやすいブランディングになるため、競合相手と差別化した形で認知されやすくなります。

「○○地域の脂肪吸引は●●クリニック」など、独自のキャッチコピーで勝負するのも成功のための1つの手段です。

ポイント2.男性に特化した美容診療所の開業

近年は女性に限らず、男性も美容外科クリニックのターゲットになっています。美容外科ときくと女性が施術を受けるイメージが先行していますが、「髭脱毛」「ニキビ跡のケア」「ムダ毛処理」「美白」「二重施術」など、男性の場合も治療のニーズは女性とほとんど変わりません。

メンズ専門の美容外科クリニックは都市部を中心に展開されています。男性医師が開業する場合もありますが、女性医師目線で見た「かっこいい男性」をプロデュースすることをコンセプトとした美容外科クリニックも人気が集まっています。

男性の美容外科クリニックに対する認知とニーズは将来的にも衰えることはないでしょう。今後市場が拡大していくことを考えると、競合相手の少ない内に早期参入しておくことが吉と出る可能性があります。

ポイント3.複数の医師を雇用した多角的な経営

1つのクリニックに複数の美容外科医が勤務し、それぞれが得意な治療を分担しておこなうケースも増えてきています。医師が増えることで治療できる患者さんの数も増え、治療内容も充実するため、増収にも繋がります。ただし集患が上手くいっていない場合、医師を増やしても売上に繋がらず、人件費が経営を圧迫する場合もあります。

複数の医師と開業する場合は、皮膚科、形成外科、外科など、美容外科と異なる診療科の医師と開業するほうが多角的な経営が可能です。クリニックがある程度軌道に乗り出したら実行してもよい経営戦略といえるでしょう。

まとめ

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美容外科クリニックは競合相手も多く、開業初期からコストもかかるため、競合との差別化と患者さんからの認知が開業成功の鍵になります。設備の用意やスタッフの質の確保など、投資する対象を見極めることも重要です。

自身の得意分野と患者さんのニーズを考えて戦略を立てることで、美容外科クリニックの開業を成功させましょう。開業に関して不明点があれば、ぜひフォームからお問い合わせください。

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参考URL
  • 厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
  • 厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」
  • 厚生労働省「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告 -令和3年 実施-」
  • 厚生労働省「令和2(2020)年受療行動調査(概数)の概況 」
  • 厚生労働省「医業もしくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」
  • 厚生労働省「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」

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