開業事例

ひらのレディースクリニック

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ひらのレディースクリニック

開業タイプ 新規開業
科目 産科、婦人科
所在地 〒631-0824 奈良県奈良市西大寺南町5-26
T・Kビル西大寺SOUTH4階
TEL TEL:0742-52-0500
URL https://hirano-ladies-clinic.jp/

インタビュー

開業のきっかけ、開業までの準備を教えてください。

本格的に開業を意識したのは2020年の1月くらいでした。当時、奈良県総合医療センターに勤務し、主に急性期の患者さんに対応していました。一人ひとりに時間を割く余裕はなく、手術が終われば患者さんは地域に帰っていき、関係が終わってしまいます。働きがいがある一方、異なる形で患者さんと関わる方法もあるのではないかと思うようになりました。患者さんとじっくり向き合いたいという思いで、開業に向けて準備を始めました。父が開業したのが、私が1歳のとき。自分の子どもが1歳のときに父と同じように開業したいと思った面もありますね。

駅に近いことを条件に物件を探し、現在の医療モールでの開業を決めました。最寄りの近鉄大和西大寺駅は、奈良市内や大阪、京都をつなぐハブ駅で、バスロータリーもあり、人が集まります。当院のある駅南エリアは、マンションの建築が進み、ファミリー層を中心に人口も増えています。産科は20代から30代、婦人科は10代から高齢者まで需要があると考えています。

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院長 平野 仁嗣 氏

総合メディカルには、開業を決めた当初から手伝っていただきました。私が開業する3か月前の8月まで医療センターに勤務していましたので、銀行とのやり取りなども含め、ほぼ全てに関わってもらいました。総合メディカルが準備したことを私が確認しながら進めるような手法で、お世話になってよかったと思います。ただ、建物が出来上がってみて、もっと自分が勉強して関わればよかったという部分もありました。

新型コロナウイルスの感染が始まっていたため、診察室などを広めにし、密集した状態にならないようにしました。また、診察は予約制で、院内滞在時間を短くするようにしました。抗菌加工を施し、サーマルカメラを導入するなど、院内の感染対策の徹底も意識しました。

駅を挟んだお兄様のクリニックと連携しているのですか。

兄は駅を挟んだ場所にある父のクリニックを継ぎました。昔から兄弟仲が良く、両親の希望はそのままでいてほしいということでした。共同で経営すると、どちらかが一方的に指示したり、けんかになることも多いと聞きます。1つのクリニックで経営すれば、効率的には良いのですが、2人でやる規模でもありません。仲良くしたいというのを重視し、それぞれが経営者としてやっていくことにしました。

この地で50年、父が実績を積んできたので、兄のクリニックは産科のイメージが強く、私の方は、医療センター時代からの患者さんなど、9割が婦人科です。結果的に兄は産科、私は婦人科を診ることが多くなっていますが、あえて機能分化したわけではありません。

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落ち着いた雰囲気の院内には平野院長が撮影した写真も飾られている。

当院は、分娩ができませんので、分娩は分娩可能な医療機関を紹介するようにしています。兄のクリニックもあくまで選択肢の1つと位置づけ、誘導はしていません。当院をサテライトクリニックと思って受診する方もいらっしゃいますが、そうではないことを説明し、患者さんには理解していただいています。兄のクリニックを選ぶ方も多く、独立独歩ながら相乗効果はあると感じています。

どのようなクリニックを目指していますか。

良質なプライマリケアで地域を支えるクリニックを目指しています。プライマリケアには、いろいろな定義がありますが、私は、なんでも診ることと解釈しています。その上で、自身で解決できるもの、できないものを判断し、最適な治療につなげる役割だと思います。診療科の範囲は、医師の力量のほか、院内の設備やニーズ等によって変わってくるでしょう。当院は内科のほか、小児、泌尿器、精神、整形外科等を受け入れています。

患者さんにもプライマリケアを理解していただく必要があります。高齢になればいろいろな疾患が現れ、複数の医療機関を受診する患者さんもいらっしゃいます。お話を聞く中で、「ご希望であれば、医療機関をまとめるためのお手伝いもできますよ」と情報提供し、理解を促しています。

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知人から贈られた人形が患者さんの気持ちを和ませる。

クリニックで取り組んでいることを教えてください。

丁寧な説明を重視しています。勤務医時代も患者さんとはじっくりお話しする方でした。「なんだか調子が悪い」「話を聞いてほしい」と言う患者さんは、対応を苦手とする医師もいましたが、私は嫌ではありませんでした。
「私にしか話せない」という患者さんもいて、そういう患者さんを大切にしなければいけないと思っていました。

開業しても、その考えは変わらず、じっくり話を聞くようにしています。そのために予約制を導入しています。しっかり話したい人には十分に時間をとるようにしています。今までの経験から患者さんの雰囲気で、結果だけ聞いて帰りたい人、とことん聞いてほしい人というのが少しは分かるようになってきました。予約表を見て、時間をかけるところはかけるなど、メリハリをつけることで、結果的には予約時間通りになるようにしています。

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女性が使いやすいよう配慮したパウダールーム。

医療センターでは、「他の医療機関で診てもらえなかった」「内診が痛い」「何となく怖い」という患者さんも多かったのですが、患者さんに寄り添い、声のかけ方などを工夫することで、「先生だったら診てほしい」と言っていただいていました。

患者さんは、「男性だから、痛みや不安は分からないでしょ」と思うはずです。「僕はこの仕事をしているけど、もちろん子どもを産んだこともないし、子宮のがん検査を受けたこともない。でも、最大限想像力を働かせて、最大限丁寧に診させてもらうつもりだ」と伝えると、患者さんはちょっと笑って、受け入れてくれます。

不安や怖い気持ちに先回りし、「こんなことが不安なんじゃないの」と寄り添い、解消するようにしています。なかには強がっている人もいますが、不安の裏返しのこともあります。患者さんを見て、本当の気持ちをできるだけくみ取れるよう努めています。おかげさまで、ロコミで患者さんが増えています。

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予約制をとり、待合室に人が密集しないよう工夫している。
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患者さんの不安を取り除くよう寄り添って診察する。
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車いすでも利用できる「みんなのトイレ」

経営は軌道に乗りましたか。

開業から1年半は、知ってもらうことを重視し、チラシを配っているつもりで診療しています。外来患者は1日35人ですが、次のステップは、システム化を進めて、今と同じクオリティで多くの患者さんを診られるようにしていきたいです。

「なんだか調子が良くない」というレベルでも受診していただき、長く付き合っていく「婦人科のかかりつけ医」になれればと思っています。

今後の目標を教えてください。

乳がん検診の勉強を開始します。機械も導入しましたが、忙しくて勉強に手をつけられていません。乳がん検査は中途半端に手を出すと、患者さんに迷惑をかけるので、自分なりの合格点を出せるまでは行わないつもりです。

患者さんの中には、婦人科で乳がんを診てもらえると思っている大もいらっしゃいます。患者さんの誤解ではありますが、「女性をトータルで診る」という考えでは、乳がんの知識も必要だと思います。乳腺の先生に依頼すべき部分は依頼しつつ、一般の検診程度には診断できるようになりたいと思います。

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「一人ひとりの訴えをきちんと受け止めたい」と話す平野仁嗣院長。

また、高齢の人の不正出血やおりものをしっかり診ていこうと思います。病気かどうかも分からず、周囲に相談もできず、悩んでいる人は多くいらっしゃいます。カンジダ症を治してほしいという方も多いのですが、治りづらい疾患です。不快感などを上手にコントロールしてあげられる技術を身につけたいと思います。

現在は、病気ではないが本人はとても気にしているという状態を受け止める施設がありません。おりものやカンジダ症などにまじめに取り組んで、女性のQOLを上げる手伝いができればと思います。経験を積んで、院外の勉強会などで、地域の人たちにもお話しできるようにしていきたいですね。

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