開業事例

東京ネクスト南砂内科・透析クリニック

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東京ネクスト南砂内科・透析クリニックサムネイル
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東京ネクスト南砂内科・透析クリニック

開業タイプ 新規開業
科目 人工透析内科、腎臓内科、内科
所在地 〒東京都江東区南砂2-36-10 光陽ビル2F
TEL TEL:03-5683-2277
URL https://www.tokyonext-minamisuna.jp

これまで以上に高いQOL提供を。
在宅透析と長時間透析の可能性を追求し、実証する取り組み。

直近の統計では2019年12月31日末時点の日本における透析患者数は、前年比1・4パーセント増の34万4640人とされている。定期的に血液をろ過し、腎臓機能の不全分を補いながら命をつなぐ医療の存在はすでに広く国民に認知され、親しみさえもたれている。しかし、その透析の実際がどんなものなのか、さらには最先端の透析がどうなっているかを正確に把握する人は少ないだろう。
陣内彦博氏は、透析医療が40年の時を経て新しい局面を迎えていることを確信した。そして、確信にしたがって行動した。在宅透析や長時間透析といった透析医療の新機軸を実践し、より大きなQOLを提供するために勇躍開業に踏み切ったのである。

インタビュー

一人ひとりの健康状態、ライフスタイルに合わせた透析を提供する

2013年1月、東京都荒川区に東京ネクスト内科・透析クリニックが開業。JR山手線日暮里駅から徒歩1分の近代的なビルの2階に、最新設備を施し透析ベッド43を備えるだけでなく、オーバーナイト透析や在宅(家庭)血液透析、施設長時間透析といった刮目すべき新方針をいくつも示し、多くの透析患者の心をつかんだ。特に金曜の夜に実施されているオーバーナイト透析は日中に時間を作りづらい現役世代のビジネスマンなどに、好評を博している。

開設者であり同院理事長でもある透析専門医の陣内彦博氏が語る。
「クリニックのキャッチフレーズを『All for the patient―全ては患者様のために』としたことで、私のめざしたものを察していただけるのではないかと思います。
当院はあくまで患者さん本位に、患者さんのQOL向上を第一主義に医療を展開します。
一人ひとりの健康状態、ライフスタイルに合わせた透析を提供することで、皆さまの生活をより元気で、より豊かにできると信じています」

東京ネクスト南砂内科・透析クリニックのイメージ
院長・理事長 陣内 彦博 氏

透析は、心からの笑顔で患者さんと力を合わせられる医療

父親は小児科、長兄は産婦人科、次兄は整形外科、姉は内科という医師一家の環境をもつ陣内氏。

医学生時代の実習、卒後の研修を通じて臨床の実際を見聞、体験しながら標榜を絞り込んだ。
「医学生となった当初はまず、体力をふるって長時間の手術をこなす循環器外科への憧れなどを膨らませました。そして次第に、患者さんに寄り添う内科系の医療に興味が移っていったのをおぼえています」

その過程で、自身の中に苦手意識があることに気づく。たとえば、がんの患者さんとの接し方に悩んだ。
「明らかに余命の短い患者さんにも、担当となれば、『どうですか、今朝の気分は』と明るく声をかけるところから診察を始めなければならない。弱音が出れば、励ます必要だってあります。それがプロの仕事だと言われればそのとおりなのですが、私にはそれを、動揺なく続けていく自信がどうしてももてませんでした。
治る見込みの薄い患者さんを前にして、発すべき言葉が見つからないのがショックでしたね」

その点に無理を重ねることは避けると決め、がんを扱う領域を徐々に除外。そして、出会ったのが透析医療だった。
「腎臓が機能を失い、放置すれば2〜3か月で生命維持ができなくなってしまう人が、透析を受けることで40年、50年と生き延びている事実があります。すごい、すばらしいと声が出てしまうほど感動しました。
これほどの医学の勝利は、ほかにないとさえ思います」

つまりは、患者さんと、噓のない本音の笑顔で接し、励ませる臨床がしたかったということなのだろう。〝永遠の好青年〞とでも称すべき、笑み満面の人柄そのものの選択だったのだと思う。

次なる出会いは在宅透析と長時間透析

2008年に東京女子医科大学の血液浄化療法科に入局し、透析専門医としての修業を開始。現在は同クリニックの名誉院長である秋葉隆教授の指導のもと、透析医療を学ぶ日々を送った。
「さまざまなことを学びました。とりわけ、私の入局時点で、日本の透析の歴史はほぼ40年。40年にもわたって尿毒症の恐怖から患者さんを守ってきたことへの誇りは大きなものがあると実感しました。ただ、その反面、技術的に確立して長くたつ分野でもあり、ある種の退屈を感じている関係者がいることも知りました」

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感染症の疑いのある患者さん用に陰圧式透析室を7室設け、一般とは別の出入り口を用意するなど、ゾーニングを徹底。

陣内氏も陥りかねなかった〝退屈〞を吹き飛ばす力をあたえてくれたのが、秋葉教授だったとのこと。
「実は当初2年ほどは興味をもてずにいたのですが、教授は『在宅透析と長時間透析について模索してみては』と何度か言葉をかけてくださっていました。ある日、重い腰をあげて調べ、学んでみるととてつもない可能性があると気づきました」

可能性とは、QOLの向上。
「透析のすばらしさを信じる私も、一つだけかなわないと思うことがありました。それは、腎臓移植です。
移植に成功した患者さんは顔色が見違えるようによくなり、掛け値なしの健康を取り戻します。一方、透析患者さんは週3回の透析で日常生活を維持していますが、日中に決められた時間だけの透析を受けていることの限界は確実にあり、施設に通う疲れも相まって移植の患者さんの健康には及ばないのです。
ところが、自宅に透析設備を持ち、自由な時間帯に好きなだけ透析できるようにすると、移植の患者さんにも負けないほどのQOL向上が果たせるのです。これをやらない理由は、どこにもない。そう確信しました」

東京ネクスト南砂内科・透析クリニックのイメージ3
陰圧式透析室の内部。

在宅透析は地域医療
大学の乗りだす事案ではない

在宅透析と長時間透析への取り組みは、結局、陣内氏を開業へと導くことになった。
「当然、医局内でその必要性を説く論陣を張ることになるのですが、医局、そして大学としての見解はシンプルでした。『そこに踏み込むと、ことは地域医療の領域になる。大学が乗りだす事案ではない』─非常に整然とした論です。強弁はすべきでないと思いました」

粘り強く可能性を探ることにした。
「たとえば、大学の腎臓病総合医療センターで無理ならば関連病院での取り組みはどうだろうとは考えてみました。
印象深いのは医師は総じて興味を示してくれましたが、コメディカルからは見向きもされなかったこと。既存の透析施設運営は長い年月をかけて確立されたもののため、まったく新しいアプローチを組み込むことでさまざまな混乱が生まれると思われたのかもしれません。それはそれで、いたしかたなしと諦めました」

東京ネクスト南砂内科・透析クリニックのイメージ4
待合スペースにもついたてを施し、感染防止に努める。

在宅透析のみにこだわって、
患者さんを路頭に迷わすことはできない

陣内氏が当初に構想したのは、在宅透析専門の医療機関だったとのこと。
「ただ、試算してみると、経営が成り立たないのがすぐにわかりました。保険点数が十分ではないのです。ですから院内に透析施設を持ち外来を受け入れるスタイルは、私の理想に照らせば次善の策であることは事実です」

次善の策とは言っても実際はより大きな設備投資を求められる道、リスクの増大と言ってもいいだろう。
「とにかく在宅透析にチャレンジしたかったのです。情熱が先走ったのは事実です。ただ、いかに先走ったとはいえ、経営的に破綻しては患者さんまで路頭に迷わすことになります。そんなことは決してあってはならない。ですから試算の出した答えに素直に従い、在宅透析以外の部分にしっかりとした経営基盤をもつべきだと判断しました。
施設透析で十分な診療報酬を得て、その利益を回すかたちで在宅透析の普及を進めることを基本方針としました。ちなみに、オーバーナイト透析も、それ単体では赤字と事前にわかったうえで手掛けています」

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東京ネクスト南砂内科・透析クリニックの透析ベッドは49床。各ベッドは間隔を空け、仕切りを設けている。

この努力はひな型づくり
道しるべや礎になれたらうれしい

そういった経営上のハードルをクリアするにあたっては、コンサルティング会社のアドバイスがたいへん役に立ったとのこと。
「私は、いわゆるゼロ開業ですので、さまざまな試算、調査、調達に関して信頼できるパートナーは不可欠でした。
総合メディカルの担当者さんがくださったアドバイスは、どれもこれも効果的なものばかりでありがたかったですね」

2021年には江東区南砂に東京ネクスト南砂内科・透析クリニックの開設も果たしたが、その開設計画においても総合メディカルとのパートナーシップが大いに機能したとのこと。
「全国的に見ても画期的な感染症対策特化型の透析クリニックを誕生させることができたのですが、計画立案にあたっては診療圏調査から賃貸物件の選定まで独自のノウハウでプランニングを後押ししてくれました」

心強いパートナーがあるとはいえ、リスクもまた小さくはないチャレンジに見える。そのモチベーションは、どこから生まれるのか?
「私がクリニックで取り組んでいる事柄は、すべてひな型づくりと考えています。それは、私が次のステップを見出すためのひな型であると同時に、これから在宅透析や長時間透析を手掛ける方々のひな型にもなっていければうれしい。
在宅透析の未来は明るいと信じています。ですから、その道しるべや礎になれるなら、これ以上の喜びはありません」

東京ネクスト南砂内科・透析クリニックのイメージ6

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