開業事例

いけだ内科

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いけだ内科

開業タイプ 新規開業
科目 内科、呼吸器内科、漢方
所在地 〒853-0032 長崎県五島市大荒町73-2
TEL TEL:0959-88-9120
URL http://www.ikeda-naika.clinic

インタビュー

五島市での開業のきっかけは何でしょうか。

妻が五島市の出身で、10年程前から、父親が開業した福江産婦人科医院を継承しています。そのため、私もいずれは五島市で開業しようと考え、2009年より同市に来て、五島中央病院で6年間勤務しました。五島市で仕事をする中で、ここでも他の離島や僻地と同様に医師が不足しており、開業の需要が高いことがわかって、開業して地域医療に貢献したいと改めて思うようになりました。最近はメディアでもよく取り上げられていますが、五島市は自然豊かで環境がよく、また、離島ですがスーパーやコンビニなども多くあって、日常生活の利便性は本土と変わらないところも気に入りました。

いけだ内科のイメージ
院長 池田 秀樹 氏

勤務医の間は、業務が多忙で、患者さんの訴えにきちんと対応できていないというジレンマがありました。例えば、めまいや頭痛、腹痛などで受診される患者さんの中には、西洋医学的に検査をしても異常がないという場合があり、それでは治療に結びつかず、患者さんは不調が改善されないままです。漢方なら、症状に合わせて薬を処方できますから、西洋医学では足りない部分に手を差しのべられるのではないかと思っていました。そこで開業する際には漢方を取り入れたいと思い、2015年3月に五島中央病院を辞めた後、開業までの1年間、漢方の勉強をしました。

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小児から高齢者まで幅広い年代の患者さんが受診している。

開業の場所は、私が五島に移住してから、数年かけて妻とともに探し、幸い官公庁が近い利便性のよい場所を確保することができました。妻が院長を務める福江産婦人科医院は、私が開業する1年前にすでに移転新築しており、当院はその隣に建設することにしました。建物の間取りや内装、建築業者や医療機器の選定、職員の募集などは、妻の医院の移転でもお世話になった総合メディカルと相談しながら、2016年4月の開業を目指して1年かけて進めていきました。

当初は内科としても入院設備が欲しいと思い、産婦人科と同じ建物で開業することも考えていました。しかし、内科の入院患者さんは全身状態がよくない人も多くいる一方で、産婦人科は赤ちゃんを迎える準備の人たちがほとんどであり、そのような人たちが一緒の病棟で過ごすのは、どちらも気を遣うのではないかとの判断に至りました。そこで当院は別の建物にし、入院設備なしで開院することにしました。内科と産婦人科が隣接していることで、内科からは貧血の患者さんを婦人科疾患疑いで紹介したり、逆に産婦人科から喘息や気管支炎のある患者さんを紹介されたりと、患者さんにとってのメリットもあるのではないかと考えています。

開業にあたって困ったことはありませんでしたか。

開業当初は患者さんが1日10人くらいと少なかったことです。しかし、私が開業した際、近くのクリニックが閉院することになり、そのクリニックの患者さんを引き継ぐことになりました。その後は、五島中央病院からの紹介などで、患者さんが徐々に増えていき、さらに患者さん同士のロコミで受診される人もいて、今では小児から高齢者まで幅広く、1日30~40人が受診されています。

五島市は離島ということもあり、診療所の数が減少傾向にあります。そういった点でも当院の開業は、周囲の先生方に歓迎されたと感じていますし、五島中央病院で勤務していた時から医師会との連携もありましたので、スムーズに開業できました。

クリニックの特色を教えてください。

私は、総合内科専門医、呼吸器専門医の資格を取得し、またこれまで、細菌、真菌、結核をはじめとする抗酸菌などによる呼吸器感染症を中心に比較的まれな髄膜炎やリケッチア感染(ツツガムシ病など)などの、感染症全般の診療も行ってきました。ですので、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病に対する一般内科診療の他、呼吸器疾患や感染症の専門性を生かした診療も行っています。

また、検査機器を充実させるように心がけており、多くの呼吸器専門のクリニックで導入されているスパイロメーターや睡眠時無呼吸症候群の簡易検査をはじめ、最近では、呼気-酸化窒素測定器(呼気NO)を導入しました。呼気一酸化窒素測定は、気管支喘息の新しい診断機器として注目されていますが、導入している医療機関は多くはありません。導入して間もないですが、気管支喘息や咳喘息の診断や治療に有用だと感じています。他に、院内で血算や生化学検査をできるようにしており、特に緊急時や診断に迷う際、直ちに検査を施行して結果が判明することで、自院外来でフォローできるのか、中核病院に搬送した方がよいのかを適切に判断でき、役立っています。CTはありませんが、中核病院である五島中央病院の放射線科でスムーズに予約を取ることができ、読影した結果は速やかに確認できるため、現時点では不便さを感じていません。

診療所においては中核病院との連携が重要ですが、長崎県にはあじさいネットというインターネット回線による医療機関同士の連携システムがあり、患者さんの同意があれば、このシステムを通して五島中央病院の検査データや画像を確認することができ、診断や経過観察に役立てています。また、五島市には睡眠時無呼吸症候群の検査(終夜睡眠ポリグラフィー)ができる施設がありませんが、長崎市内の専門病院である井上病院と連携し、同院での検査結果の説明は、このシステムを通して、睡眠障害の専門医から直接パソコン画面で受けられるようにしています。その結果に応じて、当院でCPAP(持続陽圧呼吸療法)を導入したり、歯科や耳鼻科にマウスピース作成や手術を依頼したりしています。

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優しい言葉と笑顔で対応するスタッフ。
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患者さんが快適に過ごせるよう配慮した処置室。
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不調の原因が分からない人もいるので、症状を詳しく聞き取っている。

漢方専門医を目指し、勉強を続けていらっしゃるそうですね。

漢方診療も当院の特色です。内科疾患や呼吸器疾患に限らず、何らかの不調を訴えて受診する方が多いため、漢方薬を処方するケースも増えてきました。私は現在も、日本東洋医学会の研修施設になっている佐賀市の栗山医院で、漢方の勉強を続けており、特に自律神経失調症や神経症など、心の病気に近い方に、漢方は有効だと実感しています。今年は漢方専門医の取得を目標にしており、さらに充実させていきたいと考えています。

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月2回、漢方専門医のもとで学び、池田院長自身も専門医の取得を目指している。

建物のつくりは、漢方をしていることもあり、和の雰囲気にしました。待合室の吹き抜けは木を生かしており、開放的なつくりとなっています。また、自然が患者さんの目に入るようにするため、診察室の窓を大きくとり、プライバシーには配慮しつつ、庭の緑が患者さんからみえるようにしています。

今後の目標を聞かせてください。

まずは、内科疾患全般を幅広く診ていきたいですね。飽食の時代にあって生活習慣病の患者さんが増加していますので、食事運動療法の指導や適切な薬物療法の導入を行いたいです。また、予防医療への取り組みとして健診を充実させたいです。がん検診などについては当院でできないものもありますが、当院でできないものは積極的に他の医療機関や健診機関をすすめて、早期発見・早期治療につなげていけたらと考えています。先にも話しましたように、漢方診療にも取り組んでいますが、漢方診療では症状は同じであっても、その人の体質(証)に応じて処方が異なり、判断に迷うところが多々あります。研修研鑚を通して、診療技術を向上させていきたいです。

患者さんは年を取っていきます。リハビリ施設やデイサービス、ショートステイなどのサービスが必要なこともあるでしょう。ただ、島の働き手を考えると、現状で手を出すのは難しいと考えています。内科全般の診療と、呼吸器や漢方などの専門診療で、クリニック経営を軌道に乗せた上で、今後の展開を考えたいと思います。

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「学びたいと思えば、できないことはない」と語る池田秀樹院長。

また、五島市には福江、富江、三井楽、玉之浦などの地区がありますが、福江地区以外は、医療施設は多くありません。そのため今後、往診が必要となってくる可能性があります。現在は、漢方の勉強のため島外に行く機会が多く難しいのですが、漢方専門医を取得して一段落したら、往診についても検討したいと考えています。五島市の地域医療に貢献していきたいです。

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