医療法人鵬志会 別府病院(福岡県)の医院開業事例


外観


内装

開業タイプ 継承開業
所在地 福岡県太宰府市
科目 内科、消化器内科、糖尿病内科、漢方内科、循環器内科、呼吸器内科、リハビリテーション科
病床数 60床
医療法人鵬志会 別府病院
〒818-0117 福岡県太宰府市宰府1-6-23
TEL:092-918-5055
http://houshikai.info
地域の要望にこたえ、地域の願いをかたちにしたい―。
地域医療に従事する開業医が病院を継承。
2016年5月、福岡県、西日本鉄道太宰府線の太宰府駅前に別府病院が開院した。
それまで木下病院として診療を展開していた地上5階、全60床の設備を経営譲渡のかたちで引き継いだものだ。
院長である別府鵬飛氏は久留米大学医学部卒業後、長く福岡県内で内科医療に取り組んできた生粋の臨床医だ。
地域の健康の増進と福祉の充実のため、地域に密着した医療を推進していこうと考えている。

在宅医療のニーズにこたえた結果、いざという時の入院先確保が課題に


理事長・院長 別府 鵬飛氏

別府内科クリニックとして多くの患者さんに親しまれていた別府氏の医療が、60床を持つ病院という形態に変化したいちばんの要因は、在宅医療だった。
「在宅で診る患者さんの数が400~500名というレベルに達すると、いざという時の入院先の確保が大きな懸案になってきました。増悪や急変があった際に都度受け入れ先探しをする負担を軽減するには、自院でベッドを持つのが有効な解決策だと考えるようになったのです」

奏功したのは、信頼できるコンサルティング会社の担当者がいたことだという。
「総合メディカルには、別府内科クリニックの開業の時からお世話になっていました。開業後も、日々の診療の中で生じた経営上の悩みの相談に乗ってもらい、ベッドを持ちたいという希望も伝えていました。すると、ある日、『こんな事案があるのですが』と情報提供していただけたのがこの物件でした」

木下病院の木下院長が引退と病院の経営譲渡を考えているという情報。タイミングとしては渡りに船とも言えたが、60床規模の施設を引き継ぐ事案は、即決できるようなものではない。
「リスクは小さくありませんから、もちろん躊躇もありました。確信をもって決断したわけではありません。大きかったのは妻(事務局長の別府まゆみ氏)の一言かもしれません。『だめだったら撤退するという選択もあるのだから、とにかくチャレンジしてみてはどうですか』という言葉で背中を押され、勇気を振りしぼって決めました」

取材時(2018年5月)は、継承開業して満2年の頃。振り返っての感想は―。
「患者さんと患者さんのご家族が、悪くなった時には慣れたところに入院できるという安心感を喜んでくださっているのがよくわかります。その点だけを見ても、ベッドを手に入れたのは成功と思いますし、正しい判断だったと感じています」


  • 広く明るい雰囲気の受付。

  • 開放的なリハビリテーション室。

  • 内科の別府氏のほか常勤4名、非常勤8名の医師が診療にあたっている。

医療が患者さん本位なのは当然。想定していなかったかたちになるのに、ストレスを感じることはない

別府鵬飛氏という人物には、「自然体」という言葉がよく似合う。
医師を志した際に、開業医を構想していたわけではない。
「臨床の現場に出てみると、外来が性に合っているとよくわかりました。患者さんとおしゃべりするのも、とても楽しい。卒後10年ほどで開業を決意したのは、いたって自然な成りゆきだったと思います」

開業にあたって、在宅医療への取り組みを決めていたわけではない。
「外来が好きで一般内科を主な標榜として診療を始めましたが、蓋を開けてみると訪問診療、在宅医療の要望がとても多かった。患者さんがそれを求めるなら、可能な限りおこたえしようと考えました。医療が患者さん本位であるのは当然ですから、事前に想定していなかったかたちになっていくことに特別なストレスはありませんでした」

理想をもつより、取り組んだことに真剣に向き合うことが大事

別府内科クリニックで在宅診療を始めたのは、在宅療養支援診療所という枠組みさえまだなかった時代だ。
「2006年に在宅療養支援診療所の制度ができました。地域医療という概念も、現在ほど多くの方が口にしてはいなかった。私自身もそういった仕組みや理念を深く考えたことはありませんでした。ただ一つ大切にしたのは、患者さんと真剣に向き合い、患者さんの声をよく聞くこと。その点を守りつづけた結果、現在の医療のかたちに行き着きました」

「理想の医療」という言葉について。
「それは、医師が考えることではないと思うのです。そんなものを振り回している暇があるなら、患者さんの求めを受け止める努力をすべきではないでしょうか。間違っても『医師にとっての理想』を患者さんに押し付けるようなことは、あってはならないでしょう。医療ニーズというのは患者さんが、たった今困っていることであり、求めているもの。しかも、時間の経過とともに刻一刻と変化もします。それにおこたえしつづけた先に像を結んだものが、結果的に『理想の医療』。私はそんな考え方をしています」

気負いなく、自然に―。別府氏の気概は、角張ることなく温かさを感じさせる。
「取り組む前にいろいろと考え込んでもしかたありませんよ。そんなことより、取り組んでみてわかった課題に真剣に向き合うのが大事。どんな仕事にも通じる普遍的な真理だと、私は思います」

仕事観について、持論を披露してくれた。
「今の若者たちは、仕事を選びすぎるように感じることがあります。仕事にはやってみないとわからないことが多いし、やってみるとわかる楽しさや意義もある。従事した仕事に、まずは一生懸命取り組んでみるということの大切さを、もう一度見つめ直していい時代ではないのでしょうか。私は、そんなことを感じています」

耳を傾け、言うことは言う。医師と患者の真剣勝負が信頼関係につながる

1994年、博士課程を修了後臨床の現場に出た。まだ、現在の初期臨床研修制度のなかった時代だが、入職した県立朝倉病院で幅広く内科を学ぶことができた。それが現在にいきているという。
「内科疾患ならなんでも診ましたし、骨髄穿刺なども普通に手がける日々でした。同院での4年間で、現在でいうところの総合内科医として、きわめて濃密な経験をさせていただきました。地域に出て、ゲートキーパーとして自信をもって活動できているのは、ひとえにあの4年間があったからだと思っています」

そんな臨床経験の中で、前述した「外来好き」の自覚も芽生えた。
「ちゃんと聞いて、言うべきことは言う。すると、患者さんもちゃんと反応してくださる。そんなやりとりそのものが、楽しくてしかたなかったですね」

もちろん、真剣勝負の側面もある。
「患者さんの訴えに耳を傾けるのは大切ですが、かといって唯々諾々と言いなりになればよいというものでもありません。必要であれば、少々強い言葉を使ってでも伝えなくてはならないことがある。そういったメリハリには、気をつけています」

結果、信頼関係が生まれる。勤務医として3か所の病院で働いたが、いずれの場合も時とともに外来患者は増えつづけたとのこと。
「ある時、長く診ていた慢性疾患の患者さんが『今日は、友だちを連れて来たよ』『じゃあ、あとはよろしく』と知人を置いて診察室を出て行きました。こんなこともあるのだと、感心するやら、驚きでした」

別府病院院長となった現在も、毎日午前と午後に外来を持ち、日平均100名ほどを診察しているという。
「夕方くらいになると疲れも出ますが、患者さんが来てくださるのでね。外来はやめる気にはなりません」

患者さんは、賢い。願いや望みは的確だから、それにこたえる努力に注力する


別府病院の従業員の皆さんと。

病院の今後の展望について。
「展開すべき医療は、クリニック時代と何も変わることはありません。ただ、経営に関しては、病院はクリニックの延長ではないと痛感しているところです。組織づくりについて、施設基準等の法令への対応について、悩み、学んでいる最中です」

医療の方針については、揺らぐことのない信念が確立している。
「無理な拡張や拡大は考えていません。繰り返しになりますが、患者さんの求めるものを感じ取り、真摯に提供していけばしかるべき成果が得られると信じています。私は、基本的に、患者さんは賢いものだと考えています。自分の命、人生についてのことですから、ご自身がもっとも真剣に考えていますし、何が必要かもわかります。加えて医療に関する情報も豊富な現在ですから、患者さんの願いや望みはとても的確です。
この点がほかの産業との決定的な違いでしょう。医療提供者は、患者さんが望むものを供給することに注力すべきで、間違ってもサプライヤーがニーズをつくり出すような考えはもつべきではないと考えます」

そのような信念から、今後開業を志す医師に向けてもエールを送る。
「患者さんのために一生懸命やると、やがて伝わる―勤務医でも得られる感触ですが、開業医となるとその感触は一回り大きなものとなります。
一般内科では、たいていの場合、患者さんのほうが医師より年上です。つまり、人生経験豊富な人物を相手にすることになり、医師は相応の評価基準に晒されます。厳しいハードルですが、逆に、まごころを込めて取り組めば、ちゃんと伝わりますし、大きく報われます。地域医療に従事してよかったという達成感は、そんなところから生まれるのだと思っています」

2016年には訪問看護ステーションを開設し、2018年5月には老人ホームの運営も開始した。地域の要望に的確にこたえ、年とともにかたちを充実させていく医療法人鵬志会の今後をさらに見つめていきたい。

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