開業事例

きむら内科クリニック

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きむら内科クリニック

開業タイプ 継承開業
科目 内科、循環器内科、リウマチ科、アレルギー科、神経内科
所在地 〒215-0023 神奈川県川崎市麻生区片平5-24-15
ガーデンテラス五月台1階
TEL TEL:044-981-6617
URL http://www.kimura-naika-clinic.jp/

インタビュー

開業のきっかけを教えてください。

北海道大学医学部を1993年に卒業してから約20年間は、慶應義塾大学病院やその関連病院に勤務してきました。循環器内科を専門とし、大学病院では外来医長、病棟責任者として、診療、研究、教育に従事していました。大学人として、研究や後輩の教育にまい進していくものと、当時は思っていました。とくに、2011年には専任講師になりましたので、周りからもそう見られていたと思います。

開業を考えるきっかけは、11年末、妻に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の疑いが起きたことでした。12年4月には確定診断が出ました。進行性の神経難病で、いずれ車いすの生活になる。娘がまだ幼いということもあり、それまでのように大学人として働いていくことは難しいと考えたのです。家族を大事にしたい、という思いから、頭に浮かんだのが開業でした。

きむら内科クリニックのイメージ
院長 木村 謙介 氏

大学人としての自分に未練がなかったかといえば、正直ありました。迷いもありました。しかし、一度決心してからは、それに向けて一直線という感じですね。性格的にもそうなのです。幸い、大学の研究室の教授をはじめ同僚たちも、理解して応援してくれました。このことも、大きな後押しになりました。

開業にあたって、苦労したことはありますか?

4月に開業を決め、オープンが11月。準備期間が短いでしょう?
実は、開業を急いだのです。妻も医師で、新しい診療所で、できるだけ長く一緒に診療をしたかったのです。
大学にいたころ、一度だけ「もしかしたら将来開業ということもあるかもしれない」と興味本位でセミナーに参加したことがありました。それが総合メディカルのもので、それしか知るすべもなく、まずは連絡をしました。そこで担当いただいた方の、誠実で熱意あふれる人柄に感服し、「この人に預けよう」とお願いしました。それが6月のことです。

私は兵庫県の生まれで、大学は北海道。この場所に地縁があったわけではありません。ただ、妻の「通勤」のこともあり、自宅のある小田急線の沿線で物件を探したのです。また、慶應義塾大学病院に通っている人が通える範囲で、病院との交通も勘案しました。時間を急いでいましたので、土地を取得して一からクリニックを建てる、というのは事実上不可能。継承という形で開業できるところも条件でした。
このように、条件を絞り込んでいったら「ここしかない」ということでこの場所に決めました。物件探しに何年もかけるといったお話を聞きますが、私の場合はわずか数か月。条件も厳しいなかで、探していただいた総合メディカルも大変だったと思います。

きむら内科クリニックのイメージ2
待合室の奥の壁面は、白壁を基本にグリーンとブルーがアクセントになっている。

もともとここは、2003年につくられた診療所でした。ただ、そのまま使うのではなく、私の思いや診療スタイルに合わせて内外装を全面的にやり直しました。まず、妻が診察するために、車いすで動けるスペースを各所に取りました。デザインはグリーンとブルーを基調に、心和む癒しの空間を意識しています。

開業時の「こだわり」はどこですか?

大学でも外来診療をしていましたが、大学病院はほとんど「3分診療」なんです。病態が落ち着いていることを確認して、少し話をして診察して「ハイ次の方」。こうした状況では、患者さんが背景に何を抱えているのか、病気のもとのところは何か、というところまでアプローチできませんでした。それについては当時から疑問を持っていたのです。

本来であれば、ここにきて、医者と話をして、そこで癒されたり、光が射す、というのが理想だと思います。そのためにも、患者さんの背景というものをしっかりと聞きたいのです。家族との関係や友人関係はどうか。対人関係のストレスや抱えている不安の原因などを知ると、その人の病気を生んだヒントのようなものが見えてきます。病気だけ診ていたのでは決して解決に至りません。

きむら内科クリニックのイメージ3
笑顔で「患者さんを元気にしたい」と語る。

それを見つけたら治療はかなりのところまでできています。薬は補助であり、心理的な原因を患者さんと共有し、克服する手助けをすることに主眼を置こうと思いました。これは私自身の医師や人としての経験、介護者・保育者などさまざまな立場で人を見てきた集大成であり、大学病院という科学至上主義のようなところで医師をやってきた割には、最後はここに至りました。
こうした診療方針での「こだわり」を支える環境がすなわち、この内装です。患者さんができるだけ落ち着いて癒され、なおかつ明るい気持ちになれるような空間を演出しています。
デザイン事務所の方には、私のイメージを写真や音楽で伝え、それを形にしてもらいました。留学していた米国サンディエゴの海と芝生の風景写真を見せ、マイルス・デイヴィスの「Blue In Green」という曲を聞いてもらいました。そのうえで内装を設計してもらったのです。

基調はブルーとグリーン。私自身海辺で育ち、サーフィンを趣味としていましたので、海のブルーに癒しを感じます。このブルーとグリーンを、ロゴマークにも使っています。まさに波と芝生ですね。
前庭の植栽や院内の鉢植えの植物は、地元の造園業者にお願いしています。こちらも大変気に入っています。ウェブサイトにも解説を載せています。

きむら内科クリニックの特徴はどこにありますか。

私の専門は循環器で、大学にいたころは出来上がった病気、発症してしまった心筋梗塞や心不全などを治療して、世の中に帰すことが役目だったわけです。しかしそれ以前に、そうならないよう未然に防ぐ、つまり予防にこそ価値があると考えています。

具体的には、高血圧や脂質異常症などの血管、とくに動脈硬化を早期に発見して、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの大きな病気にかからないよう努力しています。また、中高年の女性の受診が多いので、骨粗しょう症への対応に力を入れています。骨密度の測定をきちんと行い、積極的に介入してアドバイスなどを行っています。この地域で骨折がゼロになることを目標にしています。

きむら内科クリニックのイメージ4
心電計はもちろん、心臓超音波や脈波計などの機器も備える。

もう1つは、大学で研究してきたことを「翻訳」して一般診療に活かしていきたいという思いから、水素療法を実践しています。これは予約制の自費診療で行っています。

開業して何か変わりましたか。

大学にいたころは、循環器しか診ていませんでした。それ以外は他科に紹介することが当然ですから。でも、地域のクリニックではそうはいきません。先ほどの骨粗しょう症でもそうですが、専門以外の患者さんも多く来院されます。しかも、すぐに他科受診とはいきません。
私自身も、できるなら診てあげたいという思いはあります。ですから一所懸命勉強して、ある程度幅広い疾患に対応するようにしています。そこには、新たに何かを獲得する知的な「楽しさ」がありました。総合診療医まではいきませんが、自分の幅はかなり広がったと思います。

ただ、抱え込まないように気をつけてはいます。たとえば皮膚科に関しては、手におえないと思ったらすぐに、近隣で信頼している先生に紹介します。アトピーの患者さん、とくに若年の患者さんの初期治療などでは、専門医の診断や治療は、的確で効果も違います。皮膚科に限らず、患者さんにとってその方がいいと判断すれば、積極的に連携をとって紹介しています。

今後の目標を教えてください。

開業してほぼ1年、患者さんの数は、ありがたいことに増えてきています。しかも「ロコミ」で新規に来院される患者さんが多い。これはうれしいことです。クリニックをやっていくからには、発展していかなければならないと考えています。「飯が食えるからこの程度でいいや」にはなりたくありません。

その際に、自分がやっていることが他人の役に立っているか、あるいは世の中のためになっているかを考えなければならないと思います。発展していくのは、それを押さえながらでなければならないでしょう。その意味で、どのような形で広げていくのか、発展をめざすのかについては目下模索中です。来院いただいた患者さん一人ひとりに満足して帰っていただく、元気になって帰っていただくということを続けていくなかで、それは見えてくると信じています。

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