開業事例

高杉こどもクリニック

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高杉こどもクリニック

開業タイプ 新装開業
科目 小児科、小児循環器内科
所在地 〒719-1125 岡山県総社市井手585-1
TEL TEL:0866-94-8839
URL http://www.takasugi-kodomo.com/

インタビュー

開業のきっかけを教えてください。

高校時代、人の人生に関わり何らかの影響を与えられる存在になりたいと思い、医師を目指しました。学生時代はどの科を選択するのか揺れることもありましたが、最終的には、赤ちゃんから思春期ごろまでの成長過程にある患者さんの人生に関われるということで、小児科を選びました。小児科医は、未来のある子どもの命に寄り添うため責任重大ですが、やりがいのある診療科だと感じています。

大学卒業後はさまざまな病院で修行し、小児循環器や新生児医療に興味を持つようになりました。大阪の国立循環器病研究センターで小児循環器分野の診療と技術を徹底して身につけたことがきっかけとなり、母校の大学病院では、小児循環器の専門家として、臨床のほか医学部の学生教育、研究活動にも力を注いできました。高度医療を提供できているという自信もありましたし、「子どもの命を救う」という充実感も感じていました。一方で、高度医療が救える患者さんは限られているし、それだけでは何か足りないものがあることを、さまざまな人との出会いの中で感じるようになっていました。

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院長 高杉 尚志 氏

そのような気持ちの中、2006年に岡山に本部を置く国際医療NGOアムダ代表の菅波茂先生とお会いする機会に恵まれ、短期間ながらネパールの小児医療に関わる経験をさせていただきました。
ネパールの子どもたちは、貧困だけれども笑顔が輝いていて、生きようとする力を感じました。子どもは未来そのものです。次の世界をつくっていくのは彼らですから、次世代にきちんとつなげる役割をしていきたいと願うようになり、開業を意識するようになったのです。一旦開業すれば、大学病院で行っていた医療はできなくなりますから、気持ちは揺れました。

しかし、菅波先生やNPO法人ネットワーク「地球村」の高木善之さんとお話するにつれ、一人でも多くの患者さんと関わりをもち、その子どもたちの生きる力を育むことで「社会を変える、未来を変える」ことができるのではないかと思い、2009年に開業を決めました。

開業を決めてからオープンまでの流れを教えてください。

私は長男ですから、実家近くに開業したいと考えました。家族の制約がなければ、本当はネパールなどアジアの医療後進地も選択肢に入れたいくらいでしたね。

高校卒業以来、地元を離れていましたし、当時は高知で勤務していましたから、実家近くで探すと言っても、なかなか情報も手に入りません。そのような中、総合メディカルの方と知り合いになり、開業地を探すところから手伝っていただくようになりました。たまたま、実家からほど近い場所に閉院したばかりのクリニックが見つかり、それを購入して改装し、2012年5月に開院しました。診察室の机やベッドは、そのまま使用しています。今あるものを有効に活かしていきたいという考えで準備を進めました。

開業にあたって困ったこと、悩んだことはありませんでしたか。

地元とはいえ高知にいながらの落下傘開業ですから、大変だと思えば、大変なことだらけだと思います。けれども、大変なことも楽しみながら取り組んでいたら、楽しくなってくると思います。私自身が楽しそうにしていたからか、良い人たちが集まってくれ、たくさん助けていただきました。人に恵まれた開業だったと思います。

看護師や事務スタッフはすべて、今回の採用で知り合った人たちですが、皆、私が目指したい医療に共感してくれました。「自然な育児」や「子どもの免疫力を重視した医療」など目指すものが近い人たちが集まったと思います。

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診察室ではクマのぬいぐるみがお出迎え

どのようなクリニックを目指していらっしゃいますか。

とても大きな夢ですが、10年後には小児医療、農業、国際医療貢献の3つの柱が充実したクリニックにしていきたいと思います。
私の両親は百姓をしています。そして私も幼いころから畑や田んぼに行き、野山でよく遊びました。発達障害の子どもを土にふれさせると症状が改善するという報告が多くあります。私自身が今、とても健康でいられるのも、土にふれ、そして両親の作る米や野菜を食べて、育ててもらったからではないかと思っています。

熊本の菊地養生園名誉園長の竹熊宜孝先生が実践してこられたように医療と農業・食は切り離せないと思います。子どもたちが健康で笑顔になれば、だれもが笑顔になります。医療提供と同様に農業や食による病気の予防にも取り組んでいきたいと思っています。

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緊急時にも対応できる体制の処置室

また、国際医療貢献にも取り組んでいけるクリニックにしていきたいとも思っています。地球上にある貧困や戦争などは私たちの生活と無縁のものではありません。私たちが原因になっていることもあるのです。そのことを忘れないよう、世界的な関わりをもって医療を提供していきたいと思います。

3本柱を1人で実現するのは、物理的には無理かもしれません。しかし、同じような志を持っている医師や医療スタッフは多くいると思います。1人でも多くの人が、当院の考え方に共鳴し一緒に活動してくれるようになるのではないかと信じています。

クリニックの特色を教えてください。

子どもの病気は、本人に原因がある場合のほか、家族の問題が症状になって表れる場合もあります。病気の背景を知るための時間はたっぷり取りたいと考えています。
また、当院の考え方は「Do No Harm」。余分なことをしない医療です。子どもたちの一般的な病気は、薬ではなく本人がもつ免疫力で治ります。ですから、薬に頼るのではなく、免疫力を引き出すような治療を心がけたいと思っています。

そのためには、医療者だけではなく、子どもの様子を観察し、見守る親の姿勢も必要になってきます。病気の知識を得ることで安心できることもあれば、“困った時には、いつでも相談できる先生がここにいる”と思ってもらえることで安心できることもあると思います。安心感を与え、子どもを見守れる環境づくりをすることが、私の役割の1つだと思っています。

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診察中の高杉院長

現在の患者数は1日平均約60人です。7割が総社市内からで、岡山市や倉敷市からの受診者も増えています。当初の計画より患者数は多く、順調な滑り出しではないかと思います。

今後の目標を教えて下さい。

目標に掲げた3本柱を充実させて行くことです。小児医療については、地域の子育て力向上のために、公民館や母親の会などでの出前講座も始めました。地元に根付くという意味でも、講座は大切な役割を果たすと思います。
また、地元のマラソン大会へも“チーム高杉”として仲間を募り、クリニックぐるみで参加しています。マラソン参加には、地元に溶け込むことと国際医療貢献の2つのメリットがあります。

背中にカバのイラストの入った揃いのTシャツを着て仲間たちと走ったところ、多くの声援をいただきました。また、クリニックは、ゴールの手前2キロ地点にあるので、駐車場に私設給水所を設けて、参加者を力づけました。
この時私はフルマラソンに挑戦し、「完走したら、募金のすべてをアジアの医療後進地に寄付する」目的で、インターネットから寄付を募りました。今はまだ、現地での医療提供はできる段階ではありませんが、日本にいながらでも、貢献できると実感しました。

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そうじゃ吉備路マラソンでの高杉院長

開業から1年足らずですが、3本柱の実現に向けて進み始めています。その中で、笑顔が輝いた健康な子どもたちが増え、安心して生活できる地域づくりをしていきたいと思っています。

そのためにも、まず今は、小児医療の部分を地域に確実に根付かせること。そして同時に、子育て支援にも取り組んでいきたいと思っています。

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